Welcome my HERO

珍しくペコ視点。
もっとドロドロしてた筈なんだけど、爽やかになってしまった感。

スマイルからのヒーローの重圧に耐えられなくなったペコだけど、
別にヒーロー辞めたら人生楽しいじゃん？ってだけの話。
2行で終わる内容を長ったらしく書く。
お暇な人だけどうぞ…

子供ん頃は、目を閉じただけでヒーローになれた。
困った時に助けてくれるヒーローは世の中に居る。
必ず、ヒーローは助けてくれる。
そう信じて疑わなかった。

けど

いつの頃からだろう。
ヒーローだって独りの人間なんだと――気付いてしまった。




＊＊＊




最初は、ただのいじめられっ子を助けただけだった。
だって、オイラはヒーローだったから。

ヒーローは必ず来てくれることをそのいじめられっ子に教えて、
呪文を授ける。


ヒーロー見参
ヒーロー見参
ヒーロー見参

そうすりゃ、オイラがやってくる。


クールなそいつに、オイラはあだ名を付けてやった。

「なぁ、スマイル。
　お前、卓球って知ってるか？」




＊＊＊



高校生になったある時、スマイルからオイラは尋ねられた。


「ねぇペコ。
　ヒーローって信じる？」


スマイルはオイラがヒーローだと、昔から言っていた。
格好悪いオイラは見たくないってことも、言っていた。

きっと、これはオイラへの願望。
――ヒーローを信じるペコを、僕も信じるよ。

でも、最近のオイラは本当にカッコ悪い。
チャイナにはスコンクで負けたし、
タムラでもアクマとの試合も負け戦が多くなった。


なぁ、スマイル。
そんなオイラでもまだお前はヒーローだって言うんか？



だから、オイラ――



全ての気持ちに蓋をして、逃げ出した。



オイラはヒーローなんかじゃない。
スマイル、お前が助けてって言っても助けられんのよ。

ヒーローが強いなんて嘘だ。
負ければ悔しいし、涙だって出る。

でもヒーローは勝たなくちゃなんねぇ。
オイラ、勝つことすら出来ねぇんよ。


だから、そんな顔してオイラを探さないでくり。

オイラはもう、ヒーローじゃないんよ。



スマイルが嫌だって言った、格好悪いペコなんよ――




＊＊＊




アクマに怒鳴られた。

どうして俺じゃないんだって。
お前なんだって。
なんで努力した俺には才能が無くって、
お前や、スマイルにはあるんだって。


そうさな、アクマ。
お前が努力家だってオイラ知ってる。
あの海王でどんだけお前が辛い練習をしたのかも、風の噂で知った。


でもな、オイラ。
もう卓球は、ヒーローは…


「卓球、続けろよ」


オイラのタバコを奪って、アクマは踵を返す。



――あぁ、そうか。

オイラはヒーローを辞めたけど、卓球は辞めなくたって良かったんか。
馬鹿だなぁ、凄く。
うん、ほんっと、馬鹿だ。

どうして、
どうして、

スマイルにいい顔見せたかったんだろう。


オイラ、アイツに卓球教えたじゃんか。
ラケットの持ち方、ボールの投げ方、サーブの打ち方。


アイツ、オイラと卓球するの待ってんよ。




「月にタッチするなんてワケないよ」




そう、オイラはまだ跳べる！！！





＊＊＊




ヒーローを辞めたら、
あんなに息苦しかった世界がきらきらと輝くようになった。


オイラも、ただの人。


ヒーローなんてこの世に居ない。


でも、心の中にオイラのヒーローはいつでも待機してる。
きっと、スマイルのヒーローだって。



ヒーロー見参
ヒーロー見参
ヒーロー見参


そうすりゃ、オイラがやってくる。





ただいま。
これでも、スッ飛ばして来たんよ。




＊FIN＊