Hydrangea macrophylla

病みスマイル。
きっと誰もが一度は考えるネタ。
死ネタ

ペコ。
君が知らない幾つかの真実がある。
それは君に絶対知られてはいけないし、永遠に僕だけの秘密だ。

君が好きだと言った隣のクラスの女の子、選択科目で同じクラスだったから、隣に座って少しだけ少しだけ優しく接した。
彼女は僕が好きだと言ったので、丁重にお断りした。
――例　その壱。

君を好きだと言ったクラスメイトは、いつも君と一緒に居る事を望んだから、相談に乗るフリをして君に架空の彼女を創り上げた。彼女は勝手に失望して、君の元を去ってったよ。哀れだね。
――例　その弐。

その参はごく最近の話だ。
園芸部に所属している1年生と仲良くなった。
彼女は毎日早い時間から、花壇の手入れをしていたから。
毎朝声を掛けて、少しずつ、少しずつ距離を詰めた。


「月本先輩は、花が好きなんですか？」

「…そうだね。
　草木は手を掛ければ掛けるほど、見事な花を咲かせてくれるし気持ちに応えてくれるからね」


いつの間にか、僕は嘘を吐くのが上手くなった。
少しずつ少しずつ。
花壇の手入れを独りで出来るようになったのが、最近。


「明日は僕が植え替えをしておくよ。
　毎日大変だろう？」


彼女は頬を赤らめて、深くお辞儀をした。







ねぇ、ペコ。
紫陽花の花の色の理由って知ってる？
土の酸性度によって花の色が変わるのは知ってるよね。一般に「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」になると言われているけど、学校の花壇だとどんな色になるんだろう？

君の紫陽花は、どんな色？






「わぁ、紫陽花！
　大変だったんじゃないですか？」

園芸部の彼女は嬉しそうに紫陽花を覗きこんだ。

「何色の花が咲くんでしょうね」

「…これからのお楽しみかな」

僕はスコップを地中深く突き刺して答える。

夜明け前からの植え替え作業は骨が折れたけど、
これからずっと君と一緒だと思うと胸が躍る。
ねぇ、これからは僕がずっと君のお世話をするからね。



僕だけの、ペコ――



＊FIN＊


※Hydrangea macrophylla＝紫陽花の学名