Summer of the horror

お題『器用なのに言えない私と、不器用だから気付かない貴方』。
この二人の友達以上恋人未満（主にスマイルの思い込み）が一番自然体で好きだなぁ、

その日は暑かったから、エアコンを付けた快適な室内でちょっとだけ夏休みの課題を片付けて、それから午後はタムラに行こうか、それともホラー映画でも借りようかなんて話していた。
結局のところ、レンタルショップに行くのも億劫な30度の気温の表示を見て、ちょっと興味があって録画した先週の「SADAKO」なる映画を見ることになった。

何となく、ホラー映画だから照明を落として、ペコの隣に腰を下ろす。
敢えて低めの設定にしたエアコンからは冷たい風が吹き、それがサーキュレーターに撹拌されてホラーを観るには良い塩梅の寒さだった。
怖い映画を観るときに、何故か必要なのは背中を覆うための大きな毛布で（だって暗い背後からナニかが来ると思わないか？）、一枚ペコに渡したら独りで其れを頭から被ってしまって。
本当は一緒に被って、驚くついでに手なんか握れたら、それで最高だったんだけど。そんな感情を押し殺して、仕方なくスマイルは少しだけ寒さに震えながらビデオの再生ボタンを押した。

画面から出てくるSADAKO.
そろそろ、一緒の毛布に入っても良い頃かな？
来週からSADAKO3が始まるから、そうしたら一緒に映画館に行こうね。

体育座りで膝を抱えて。
毛布をすっぽり被って怖さに震えるペコと、ただ寒さに震えるスマイル。


――ただ一言『入れて』が言えなくて。


TVからは、髪を振り乱したSADAKOが此方に向かってきた。
来る、きっと来る――
あの有名なフレーズを歌いながら。


＊FIN＊