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単に血液型な話。
B型って「Bでしょ？」って言われると喜ぶけどスマイルはどうなんだろうね？

A型は几帳面。
O型はおおらか。
B型はわが道を行くタイプで、
AB型は芸術家肌。

複雑な感情を持つ人間を、たった4つの種類で分別するなんて大雑把過ぎるだろう、とスマイルは思う。
これなら、まだ12種類のタイプに分けられる星座の方が幾分かマシだってもんだ。

何故か年末になると、こう云った血液型や星座、果ては風水や六星占術の特集が矢鱈と多い。
来るべき新年に備え、何かを備えるのだろうか。占いなんて当たるも八卦、当たらないのも八卦、そう考えているスマイルには首を傾げるばかりだったし、朝の占いに一喜一憂するクラスの女子の気持ちも理解不能だった。

「何悩んでんだ？」

と、其処へペコが声を掛ける。
此処は学校近くにあるコンビニで、今日は新作のお菓子が発売する日だとペコに連れられて来たのだった。
そう云ったものに全く興味が無いスマイルはペコがお菓子を選ぶ間、雑誌を立ち読むのがいつものことで今日もそうやって時間を潰していたのだった。

「…血液型で人は分類出来ないよね、って話」

読んでいた雑誌の表紙を見せて、スマイル。
それから、もうお菓子は決まったのと尋ねた。

「オイラ、占いとかケッコー、好きよ？」

ペコは答える。

「…そう」

スマイルは短く答えて、雑誌を棚に戻す。
ペコの持つ鮮やかなオレンジのカゴを見ると、そこには色とりどりのお菓子のパッケージが無造作に投げ込まれていた。



「スマイルは、信じてないんか？」

「…あんまり。
　B型ってあんまり良く書かれてないし。あんなの、うそっぱちだよ」

お会計を済ませてコンビニを出ると、早速ペコがポテトチップスの風を開ける。袋に書かれているのは【カラムーチョ　わさビーフコラボレーションペッパー味】。

ペコは其れを一枚口に放り込むと、スマイルに差し出す。チャレンジ精神を欠いた彼は、小さく首を振った。

「ペコはO型、って感じがするよね」

スマイルは胸ポケットからミンティアを取り出すと3粒まとめて口に入れる。すぅっと、冷たいミントの味が広がった。

「誰とでも仲良くなれるし、大らかだし…」

続けた言葉は、ペコによって遮られる。

「でも、オイラから見ればスマイルだってB型だなぁって思う時あるんよ？」

そう急に言われて、どきりと心臓が高鳴る。

「…そ、うかな。例えば？」

ペコはポテトチップスをばりばりと口に運びながら続ける。

「古典のノートも化学も、英語も。すげぇキッチリしてるじゃんね？」

「…それって、A型じゃないの」

――几帳面。心の中で続ける。

「モノは云いようでショ。
　それをB型のコダワリだって言えば」

ペコは早くも【カラムーチョ　わさビーフコラボレーションペッパー味】を完食してしまったらしい。食べ終わった袋くしゃくしゃと丸めて、外に置かれたゴミ箱へと捨てた。そして、またビニール袋をあさるとお気に入りのフーセンガムを取り出した。

「やっぱフーセンガムはマルカワさね」

1箱分を纏めて口に入れると、綺麗な風船を直ぐに作る。パチンと小気味良く鳴らすのが、最近のペコのお気に入りだ。

「知ってるかスマイル？
　O型とB型って相性良いんだぜ？」

子供の頃から変わらない笑顔で言われて、スマイルは静かにそう、囁いた。

急に木枯らしが吹いて、ペコの持ったビニール袋ががさがさ鳴る。

「…帰るか」

ただ立っているだけで、体温が随分奪われる季節になってきた。身体が冷えてきたのも分かったので、帰ろうかとスマイルも返した。


いつもの三叉路で別れて、スマイルは独り、思案する。
――そうだね、モノは考えよう。
ペコとの相性が良いのなら、この血液型だって悪くない――

あまり好きではないこの血液型も、ちょっとだけ好きになれた気がした。



＊FIN＊