Whimsical romance

お題『うすっぺらい愛の言葉なんていらないの』

「ねぇ、ペコ」

薄く開けた窓から、冷たい朝の風が吹きレースのカーテンを揺らす。片足だけ立てて、ぼんやりとその揺れる様を見ながらスマイルは呟いた。
コップの氷はとうの昔に溶け、水滴がびっしりと張り付いている。ペコは其れを無造作に掴むと、喉を潤した。
食べかけのお菓子に手を伸ばそうとして、それが空だったのに気付いて、止める。

「なンだ、スマイル」

掠れた声で、ペコ。
まだ少し汗ばんだ身体からは艶っぽい色が抜け切れていなかった。

「僕が、君を好きだと云ったら」

ぐしゃぐしゃになったシーツを手繰り寄せると、ペコも其れに合わせて此方へと肢体を投げ出す。
あられもないペコの姿に、なんだか恥ずかしくなって、
スマイルは引き寄せたシーツをそっと彼に戻した。

「…今更」

ペコが意地悪く微笑い、シーツを蹴飛ばす。そしてそのままスマイルに枝垂れかかった。

自分より高い、ペコの体温。
汗ばんで密着した素肌。
耳に掛かるその吐息。

「でも、僕は――」

スマイルの言いかけた言葉は、ペコからのキスで塞がれた。


「そんな言葉なんて、要らない」

態度で示してくれろ――

そう、早朝なのも手伝って妙に活気のある中心を握りこまれて、
今日が木曜で、英単語の小テストなのも忘れてペコにしがみ着いた。


僕は君が好きだ。
世界中の誰よりも。


でも、その言葉を彼は嫌うから、
スマイルはペコの髪を梳いて、そっと抱きしめた。


それから、愛を確かめ合ったのは若さ故。
朝練を自主的に休んで、なんとか小テストの時間には間に合って。

「今日が体育だったら、オイラ死んでたな」

休み時間、そうおどけて腰を擦ったペコに、耳元で囁いた。


「朝練行かなかったから、きっと部活はシゴかれるよ」


耳まで真っ赤になったペコを、ひらりと交わして廊下を急ぐ。
次の英語は移動教室。恋に関する単語でも引いて時間を潰そうか。


＊FIN＊

いつでもヤマなしイミなしオチなし。