Happy Halloween

先日のコレでハロウィンアッセンボー☆

※駒ちゃん2歳くらいの設定で、まだ雛ちゃんはいないよ！

14時間前　バッキー＆スティーブ家

「ロビン、寝る時間だよ」

バッキーがリビングのソファでうつらうつらと船を漕いでいたロビンを抱き上げると、ロビンは小さな腕を伸ばしてバッキーにぎゅっとしがみ付く。
スティーブはキッチンで洗い物をしていたから、手を離せそうになかった。
よろしく、と彼の青い瞳が告げている。

眠たそうに目を擦ったロビンの頭にちゅっとキスをして、バッキーは寝室のドアを開ける。
洗い立てのふんわりした上掛けの中に息子を滑り込ませてゆっくりと背中を叩く。義手の作動する音が響いたが、ロビンは気にしていないようだった。

「あしたは はろうぃん？」

母譲りの空色のガラス玉のような瞳を向けられてバッキーはふっと微笑む。

「そうだよ。だから早くおやすみ…」

もう一度何度か優しく背中を叩くと、安心したのかロビンはすぐにすぅすぅと規則正しい寝息を立てたので、バッキーはそっとロビンの頭を撫でると部屋を後にした。
明日はハロウィンパーティ。これから部屋の片付けと飾りつけをしないとならない。さて、今夜は眠れるかな？と彼は欠伸を噛み殺した。


12時間前　スタークタワー

「ワンダ、これはどうするのですか
　砂糖はさっき使いましたが…」

アイシング用の粉砂糖のボウルを持って首を傾げるヴィジョンに、ワンダは説明する。

「これはアイシング用よ。
　今焼いてるクッキーが焼けたら飾りつけするの。
　ピエトロ、貴方も手伝ってね」

大きすぎるソファで寝そべったままポテトチップスを齧る兄にワンダは続ける。

「へい、へい」

片手を上げてピエトロは反応する。やる気の無い答えだったから、戦力には期待しないでおこうとワンダは心に誓った。

オーブンからは甘くて美味しそうな匂いがする。

「上手に出来ると良いですね」

ぐるぐる回るターンテーブルを見ながら呟いたヴィジョンに、ワンダは「私が作ったんだから当たり前よ」そうウインクした。


10時間前　バッキー＆スティーブ家

リビングの飾りつけが終わって、スティーブとバッキーはやっと座ってゆっくりとコーヒーを飲んでいた。いつもは殺風景な部屋が、今はきらきらとガーラントや蜘蛛の糸で飾られている。本物の蜘蛛坊やからの『糸、使います？』の申し出は丁寧に断ったのをスティーブは思い出して笑った。

明日はアベンジャーズの皆を招いてのハロウィンパーティーだ。
隣に住むサム一家と単純なイベントとして楽しむつもりが、いつの間にか大規模な話として広まってしまった。都合のつくメンバーは皆、此処に来てみたいらしい。
子育てでずっとシールドに顔を出していなかったから、実はひっそりとスティーブは皆に会えることを楽しみにしていた。それに、息子のロビンを紹介出来ることも。

「嬉しそうだな」

いつも以上にニコニコとしたスティーブに、バッキーが尋ねる。

「みんなに会えるからね」

笑顔を作ったスティーブの顔がキラキラして綺麗で、思わず彼は唇を寄せた。

「…もう！」

相変わらずこういった事には奥手で顔を赤らめたスティーブに、バッキーは悪い悪いとまた、額にキスをする。

「…ばか」

三度目の正直をしたら、今度は鳩尾に一発叩き込まれた。


6時間前　？？？

「ほら、ロキ！ミットガルドに行くぞ！」

人が気持ちよく寝ていると言うのに、繊細さの欠片も無い兄がロキの事を揺り起こす。

「…勝手に行けば良いだろう」

ソーの恋人はミットガルドの人間だ。だからよくこの兄はこっそりとミットガルドに降り立っている。
――人の睡眠を邪魔しないでくれ。やっと1時間くらい前に眠りについたというのに。
寝起きのロキは不機嫌にソーを睨み返す。

彼の視線を物ともせず、ソーは笑顔で答えた。

「キャプテンの息子のお披露目なんだ、お前だって行くだろう？」

「…兄上、なんでそう云った大切なことは事前に教えないんだ」

ロキの声は低く、重い。
人間が“科学”のチカラで子供を作ったと、命を生み出したと、何かの折にバナーが教えてくれたのを、ずっとロキは覚えていた。
面白そうだからと興味を持っていたのは確かだから、ロキは一瞬で支度を終えたのだった。

「さぁ、参ろうか」


4時間前　バッキー＆スティーブ家

「おはよう、可愛い駒鳥ちゃん」

子供部屋のカーテンを開けると暖かい光が部屋一杯に降り注ぐ。

「…ん…？」

眩しさに起きたロビンを、スティーブはゆっくりと抱き上げた。

「まま！」

ふくよかなスティーブの大胸筋に顔を埋めてロビンはご機嫌だ。

「元気に朝ご飯を食べる子はどこかな～？」

抱いた身体を揺らすと、ロビンは嬉しそうに手を挙げる。

「はーーい！」


2時間前　サム家

「あぁ、ピーター！ラザニアよりグラタンの方が喜ばれたかしら？」

取り出したばかりのキャセロールに手際良くアルミホイルを被せるメイにピーターは首を振る。

「メイおばさんのラザニアは絶品だよ。みんな喜んでくれるって！」

隣でインゲンのサラダを作っていたサムも口を揃える。

「あぁ、メイの料理は世界一だよ。だから自信持って」

今朝から彼女はずっとこの調子だ。
――教会の集まりのポットラックなら彼女だってここまで緊張しない。単にお隣さんとのポットラックパーティでも緊張はしなかっただろう（お隣さんにはよく料理のおすそ分けをしているし）。
けれど、今日は違う。
あのアベンジャーズメンバーが集まるというのだ。そんな有名な人にこんか家庭料理を振舞ってよいものかと彼女は悩む。普段頼まないちょっと高級なピザのデリバリーにしようか、それとも良いワインを持っていった方がいいのか…
彼女は“アベンジャーズ”のメンバーでもあるサムにパーティが決まってからずっと相談していた。
そして結局、彼女の心が休まるなら…と料理が得意なサムも一品持ち寄ることにし、ずっとピーターも“メイおばさんの料理はロビンも大好きなんだよ”と説き続けたのだった。

「冷めないうちに早く行こうか。手伝えることがあれば手伝いたいしな」

サラダを皿に盛りつけながらサムが言ったので、小さな子供の大変さがよく分かっているメイは頷き、時間より早く一家は出発することに決めたのだった。


10/31　12：00

玄関のチャイムが鳴ると、そこにはワンダとピエトロ、そしてヴィジョンが大きなリボンを巻いた箱を抱えて立っていた。

「Trick or Treat！」

ピエトロがお決まりの台詞を言う。
今日はこの言葉がないと面白くない日なのだ。

「遠いところまでわざわざありがとう」

出迎えたスティーブが笑顔を向ける。新しい客人に人見知りしたロビンが足元にぴったりと張り付いていた。

まるでバッキーを小さくしたような可愛い姿に、ワンダはしゃがんでにっこりと笑顔を作る。

「あなたがロビンくん？
　私はワンダよ。一緒に遊びましょう」

こっくりと頷いたロビンに「かわいい！」ワンダがぎゅっと抱きしめる。

「さ、中に入って。
　みんなも待ってるよ」

促されてリビングに入ると、都合のついたアベンジャーズメンバーが待ち構えていた。
部屋中のオレンジと紫に彩られた装飾を、あのキャプテンアメリカとウィンターソルジャーが施したのかと思うと笑いを堪えきれない。

真ん中に置かれたダイニングテーブルには持ち寄った料理が所狭しと並べられていて、今ワンダたちが持ち寄ったクッキーもバッキーが並べていた。

「じゃぁ、みんな揃ったかな？」

スティーブが真ん中に立って見回すと、思い思いにお喋りに興じていたメンバーが彼に注目する。

隣に住むサムとピーター、そしてメイ。
はるばるやってきたのは雷神ソーと弟のロキ。
エージェント・ロマノフとその隣にはスコットと娘のキャシー。

ワンダはピエトロからジンジャエールを渡されると、皆がカボチャ模様の子供らしい紙コップを掲げた。

――言われたくたって、言うべき言葉は分かっている。

『Avengers Assemble！』

＊おしまい＊

私が楽しいだけ。