星のよる、月のあさ Ⅱ

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Ⅱ.
それから半月程経った頃だろうか。
珍しくコーチの小泉が持病である腰痛が悪化したと、その日の部活は一人でこなすメニューばかりだった。
普段よりも早い時間に全てのメニューを終え、コーチに報告すると今日はこのまま帰って良いと云う。まだ練習を続けたい月本だったが、コーチの云うことに逆らう気も無かったので大人しく部活を切り上げる事にした。大人しく部活を切り上げると言っても、時計の針は19時近くを指していて、既にキャプテンら卓球部員の姿は無い。

「さようなら、先生」

「Good bye,Mr月本」

そう体育館で頭を下げ、校門へ続く道を一人歩く。
秋も深まるこの季節、既に空は濃い青で気の早い一番星が瞬いていた。

校門の前に、暗い空と不釣り合いな赤い帽子を見つけて、思わず立ち止まる。
その人物は月本に気づいたらしく、凭れかかっていた上体を起こすと片手を上げた。

「メッス」

そのまま素通りしようとして、左手を掴まれる。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ！
　何か反応ないの？」

「…久しぶり？」

掴まれた手を振りほどいて、月本は眼鏡を掛け直す。

「うーん、まぁ、久しぶり、ではあるケド…」

人差し指でキャップのつばを上げて、月本を覗き込むように星野は尋ねた。

「これから、暇か？ちょっと付き合ってくれろ」

――暇じゃないど、云いかけた言葉は星野に制服を引っ張られて闇に溶けた。