ブカツ×カルピス

変態スマイル。
妙に爽やかだけど、それはIWGP読んでるから！（活字読むと文章引きずられるタイプ）

今年の夏、ペコのマイブームは原液のカルピスだ。
毎日1本、まるで麦茶のようにコンデンスミルクを吸うペコに興味本位で言ったのだ。

「…夏だし、カルピスの方が爽やかじゃない？」


次の日から、彼はカルピスを飲むようになった。
コンビニで売ってるペットボトルじゃない、紙のパックの原液カルピスを。

「うん、やっぱ爽やかでエエねカルピス」

卓球雑誌をペラペラめくってペコ。
先月だか、先々月だかのそれは片瀬高校の特集記事が載っていた刊だった。

「原液だよ、それ」

ラバーの張替えをしながら僕。

「コンデンスミルクより爽やかなんよ？」

「…その違いは分かりたくないな」


その時だった。

「Mr.ツキモト！Mr.ホシノ！
　真面目に練習しなサーイ！」

そう云ってコーチが姿を現す。

彼の姿に驚いたのか、ペコが盛大に咽せた。
…さっき、口に含んだカルピスの原液を撒き散らしながら。

「大丈夫？」

僕は慌てて彼の背中をとんとんと叩く。
暫く、彼は辛そうに何度も咳き込んだがやっと一息ついたようだった。

「…っ、スマイルぅ～～…」



咳き込み過ぎて涙目になった瞳。目じりはうっすら赤い。
長い睫は濡れて、上目遣いに見たそれはとてもとても…扇情的だった。
…オマケに、口の周りには薄白い液体。

「！！」

僕だって、健全な男子高校生だ。
それが何か、を諒解する。

僕は頭の中で何度も√計算式を繰り返しながら平静を保った。


「うぅ…ベタベタする…」

云いながらも、口の周りのカルピスを舐め取るペコ。

それは、僕がドキドキするのには十分過ぎた。
何も云わず、首根っこを掴んで、そのまま引っ張って。


「痛い痛い！スマイル、もうちょっと優しく…」

後ろでじたばたしている気がするが、気にしてはいられない。


僕のヒーローはどうして、こんなに天然なのだろう。
ねぇ、誰にもそんな姿を見せないで。
あぁ、僕がカルピスなんで言わなければ良かった。

しょぼくれて体育座りをするペコの隣で、
腹いせにウェアをざぶざぶ洗った。


「ねぇ、ペコ。
　やっぱり夏はラムネじゃない？」

――君のあの姿は、不健全過ぎるよ。
少なくとも、僕にとっては

ね。


＊FIN＊