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Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマンシリーズ/ジェイディク

“その翼で君が飛んでしまうような気がして”
…ってシリアスめの話を考えた筈なのにオチがアレなのは見切り発車で書くからです(通常運行)

相変わらずの俺アース。
増えろジェイディク(必死)


その翼を持って、手の届かない何処かへ行ってしまうのではないかと
時々無性に心配になる――


今日は朝からの晴天で、こんな日は洗濯日和だとディックはバスタオルやシーツを抱えて地下のランドリールームと屋上の物干しを何度も往復していた。
ジェイソンは別に乾燥機で乾かせば良いだろうと思っているのだが、どうやら恋人は違うようで『だってお日様で干すとふかふかで気持ち良いでしょ?』と季節の良い今、こうして部屋中の洗濯に精を出すのだ。

昨夜も遅くまで起きていたから、まだゆっくりと惰眠を貪りたいもののくるくるとよく動く恋人に促され、結局、こうして物干しの手伝いをジェイソンはさせられてるのだった。

ぽかぽかと降り注ぐ陽の光に、5月のそよ風が気持ちよく頬を撫でる。
それでもやっぱり睡魔には勝てなくて、彼は今日何度目かの欠伸をディックに見つからないようにこっそりと噛み殺した。

「ほら、ジェイ!ちゃんと持って!!」

物干し竿の向こうから寝ぼけ眼のジェイソンにディックが叫ぶ。
いつもは物腰の柔らかいディックが珍しく厳しいのには理由がある。
サーカス暮らしの彼にとって、天気の良い日の大掃除と洗濯は懐かしい思い出で、あまり接点のない団員とお喋り出来たり、新しい衣装をじっくり見れる機会だったり、ふわふわのリネンで包まって遊んだりと話題に尽きることがなかった。けれど公演の時間は決まっていたから、皆手際良く洗濯物を片付けていたのだと言う。――だから、自分もそうありたいと。忘れないでいたいと。
いつかの夜に小さく話してくれたから、それからジェイソンは文句も言わず彼の洗濯奉行に付き合うようになったのだった。

「ちゃんと押さえてるよ」

大きなクリーム色のシーツをはためく風に押さえ込んでジェイソンは返す。
優しい小花模様の散ったその柄は全くジェイソンの趣味ではなかったが、手触りが凄く良いの!とディックが無理矢理に持ち込んだものだった。
もうすっかりくたびれた其れに、ぼんやりと新しいのを買わなきゃなぁと思う。

と、その時だ。

急な突風にきちんと留められていなかった下着が宙を舞う。

「――あっ!」

青空に浮かぶ、薄い桃色。

其れを追いかけてディックが駆け出す。
――彼が着ているのはジェイソンの着古した黒いTシャツで。
しゅっと伸びた背筋にプリントされた翼模様が妙に浮き出て見えて、手を伸ばそうと伸びたところを、ジェイソンは思わず後ろから抱き留めた。

「!?
 ジェイ?!」

ディックが振り向いて眉を寄せると、彼の伸ばした指先を掠めるように下着は階下へと落ちていってしまった。

「…もう!あれ、お気に入りだったのに」

女の子に最近人気の下着専門店の新作だったんだよ?まだ1回しか使ってないじゃない…
しかめっ面を作るディックに構わず、ジェイソンは強く抱きしめる。

「…?どうしたの…?」

ぎゅっと抱いたまま、首筋に頭を埋める恋人にディックは優しく背中を撫でた。

「お前が飛んでいってしまいそうな気がして」

――その名前に“翼”があるから。いつか何処かへ本当に飛んでいってしまうのではないかと。

くぐもった声で伝えると、ディックは陽気に笑った。

「何処にも行かないよ、ジェイソン。
 僕が飛べるのは、君の前でだけ」

告げて、今度は恋人の短く刈り揃えられた後頭部を撫でる。こつんと頭を合わせると、妙な安堵感が広がった。

「…ね、洗濯が終わったら久しぶりに公園でデートしようか。
 芝生の上で食べるサンドイッチは美味しいと思うよ。
 それか映画に行っても良いかな。この前公開したアクション映画、ジェイ、好きなシリーズでしょ?」

ディックの言葉に、ジェイソンの頭が動く。
彼は相変わらず恋人に頭を押し付けたまま呟いた。

「…それと、新しいシーツも買う」

ジェイソンの答えに、ディックの声が弾む。

「それに、新しいベビードールも!
 ジェイの好きなやつ選んで欲しいな☆」

ディックの返しに、ジェイソンが顔を上げる。
先ほどまでの弱気は何処へやら、眉を寄せた不機嫌な顔にディックは満面の笑みを浮かべた。

「…選ばねぇぞ」

そっぽを向いたジェイソンに絡もうとして、ディックがはっとした顔を作る。

「あっ、洗濯!途中だったよ!」

ぱたぱたとはためくシーツに駆け寄るディックを見送って、ジェイソンがゆっくりと片側を押さえる。

「ちゃんと留めてよーー!」

向こう側で大きく叫ぶ恋人に、やっぱりジェイソンは欠伸を噛み殺しながら頷いた。

――どんな下着を選んでやれば恋人は恥ずかしがるのだろうか。

なんて不埒な妄想は、透き通るような青空に溶けていった。

*FIN*

10本書いたらアンソロジー…(パタリ)

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