拗らせてDo not leave

バットマンシリーズ/ディック＆ティム

ダサタイトルを付けたけどクラブル要素0
いつもの通り、俺アース。

バットマンを拗らせた男・ティムと
クラブル固定派ルーサー君（BvSイメージ）がサイト運営してて、
お互いの素性を知らないまま仲が良かったら面白いよなぁと思っただけの勢いだけの話。

ティムはダイナミックデュオが好きだ。

特にバットマンのサイドキック…ロビンであるディックと単独で探しきり、彼にまた「ロビンになってバットマンを支えてよ！」と迫ったこともある。
彼がダイナミックデュオを調べ尽くすのはもはやライフワークであり、生き甲斐でもあった。
今やウェインの息子として父顔負けのメカニックの知識を遺憾なく発揮し、ディックの活躍を自身の運営するサイト上に発表する。

路地裏でひったくり犯を捕まえたこと、公園の木から下りられなくなった子猫を救い出したこと…

自身のばら撒いた高性能なドローンからの映像と各所に設置したカメラからティムは常に“格好良い”ナイトウィングを撮影してはにんまりと見つめる。

「…楽しい？」

大きなモニター4枚に囲まれて、さっき強盗犯を捕まえたニュースを速報としてSMSに書き込むティムに、背後のソファに座ったディックがアイスクリームを食べながら訊ねる。

「楽しいよ！」

ティムは即答する。
バットマンの活躍をデイリープラネットが書き立てるのなら、僕はナイトウィングを応援したい！と彼は心から思っていたし、活躍を伝えることは使命だとすら考えていた。

「ほら、見てよこの横顔。
　と……っても綺麗…」

何処かの防犯カメラからハッキングした映像なのだろうか。
つい一昨日くらいにATM強盗を捕まえたときの小競り合いの映像を見つめながらうっとりと呟く。

「…その横顔ならここにあるけど？」

ひょいっとティムの隣に顔を突き出したディックに、真っ赤になってティムは顔を覆う。

「やめて、ディック！心臓が持たない！！」

――隣にディックが居るだけで、良い匂いだってするのに！こんな近い距離で見つめられたら死んじゃう！！！

彼が頭を振ると、「へんなの」ディックは笑ってまた後ろのソファに座り込んだ。

「あっ、そういえばさ…最近面白いサイトを見つけたんだけど」

ソファに無造作に置かれた最新型のタブレットを扱ってディックがスプーンを咥える。

「父さ…バットマンのことに異常に詳しいサイト」

しゅっと液晶を滑らせ、該当のサイトをモニターの1つに転送させる。

黒を基調としたそれはグレーのバットシグナルが点滅しており、ゴッサムのバットマンを応援する個人的なファンメイドサイトで、時々オレンジが効果的に使われている洗練されたデザインが、青を基調としたポップなティムのサイトとは対照的だった。

「あ、知ってる。
　この人凄い性能の良いカメラ使って撮影してるし父さんに聞くより早く活躍についてサイトに上げてくれるんだよねー。
　警察とか繋がりのある人なのかなぁ」

「…はは、まさか」

ティムの言葉に、警官として日々働くディックは乾いた声を漏らす。

「ここの管理人さん…LLって名前だけど、凄く父さんのFANみたいでね。
　何度かチャットで話した事あるけど凄く気持ちの良い人だったよ」

ティムはモニターでそのサイトをくまなくチェックしながら続ける。

そのサイトの管理人は激しくジョーカーを嫌っており、偏った愛ながらバットマンとスーパーマンを非常に推している人物のようだった。

「…この人の場合、犯罪的な面でジョーカーが嫌いと言うよりも恋愛面的な思考でスーパーマンを推してるみたいだけど」

手に持ったタブレットに指を滑らせながらディックが呟く。

「うん。
　でもバットマンへの愛は本物だし、僕も彼と色々と情報交換してるからね…
　ほんと楽しくて一晩中語っちゃう時もあるんだ…」

――バットマンを語りだしたら止まらないティムと張り合える知識量なんだな、ディックはピンク色のストロベリーアイスを掬いながら考える。

「あ」

ティムが別のモニターにポップアップした文字に反応する。

「？」

ディックが顔を上げるとティムは物凄い勢いでキーボードを叩き始めた。

「LLからメッセージが届いたよ。
　ワォ！今日のデイリープラネットの式典に行ってるクラークとの写真だ」

ぶつぶつと続けるティムに「geek…」そう囁く。

ヒーローとして活躍する以上、FANがつく。中にはこんな風にマニアックなFANも居るのだと思う。
目の前で弟の狂行を見ている分、ディックはこういった過激なFANには妙に寛容だった。

ディックはティムとLLと一体どんなマニアックな話をしているのだろうと想像する。
80代の暇な老人？
それともハイティーンの可愛い女の子？
…それとも、我が家のようなお金持ち？

今度はその“LL”なる人物について聞いてみようと彼は思う。

と、その時具合よくポケットに入れたスマートフォンが震えたので画面を開く。
メールには父と式典に参加しているクラークからで、珍しく父と取った写真が添付されていた。

『To:Dick
　Text：
　何故かブルースとの写真を撮って貰ったから送るよ。君達以外に送れる人がいなくてね…』

添付された写真は社交的な微笑みを浮かべる父の姿と、少しだけぎこちない笑顔を貼り付けたクラークの姿が映る。

「ティム、クラークから父さんの写真が来たよ」

ディックが顔を上げるとティムも頷く。
モニターの1つに自分にも届いた写真を見て、彼は首を傾げた。

「ん～～～？
　さっきLLのサイトにあった写真を近いアングルだな…シャンデリアの位置からすると……
　関係者なのかな…？いやいや、でも今リアルタイムに僕とチャットしてるし…うーーん…」

頭を捻るティムに、「付いていけないや」とディックが部屋を後にする。

彼は廊下を歩きながら、素早くクラークに返信する。

『To: Clark
　Text:良い写真だね。撮影者さんの腕が良かったのかな？』

手持ち無沙汰なのだろうか、クラークからの返信は思いのほか早かった。

『To:Dick
　Text：レックスコープのCEOだよ。今ブルースと難しい話してる…』

大企業・レックスコープの名前はディックでも知っている。
式典を通じて、金持ちは金持ち同士のネットワークを構築していくのだろう。

ディックの抜けた部屋では、サイトの更新作業をしながらティムがLLとバットマン談義に花を咲かせていたのだった。

――LLの正体は、未だ謎のままである。


＊FIN＊