Enjoy breakfasT

バットマンシリーズ/ジェイディク

いつもの俺アース。
単に“恋人に朝ご飯を作るディック”が浮かんだだけなので特にヤマもオチもないやつ。

コンロの上でしっかり熱を通されたフライパンに手を遣って、立ち上がるその熱気を確認する。
隣に置いた濡れ布巾にフライパンを置くとじゅわっと水分の飛ぶ音がした。

再びコンロにフライパンを置くと、今度は弱火に調節して、大きなスプーンで掬ったバターを1盛、ぽんと落とす。
バターが溶けて大きな泡が立ってきたのを確認して、ディックは背後の冷蔵庫を開ける。

よく冷えたボウルを持って振り向くと、さっき大きな泡だったバターは小さな泡へと変化していて、
ボウルを傍らに置いてくるりとフライパンを回してバターを全体に馴染ませる。
寝かせた生地をおたま一杯分だけゆっくりとフライパンに落とすと、綺麗な円が真っ黒なフライパンに広がって、
まるで闇夜を照らすバットシグナルのようだと笑う。

生地の端に細かい泡が出来てきて、フライパンを揺すると静かに動くタイミングでパンケーキをひっくり返す。
見事に均等な黄金色に色付いた其れを完璧だと自画自賛して、ディックはキッチンタイマーをセットした。

きっかり2分で鳴った其れに、もう一度パンケーキをひっくり返して焼き色を確認する。
表面と同じく、綺麗な黄金色に焼けた其れに満足そうに頷いて、彼は真っ白な皿にパンケーキを盛り付ける。
既に盛られた緑のサラダ、ピンク色のベーコン。――それに、今盛られた黄金色のパンケーキ。
やっぱり多めのバターをぽんと落として、たっぷりとはちみつを垂らして。
この前一緒に出かけた先の、マーケットで買った銀のトレイにパンケーキとフレッシュジュースを置いてディックは寝室のドアを開ける。

「Good morning,Jason！」

白いシーツに包まったままの彼は上機嫌な恋人の声に面倒そうに目を開ける。
ゆっくりと起き上がった恋人に、彼はとびっきりの笑顔を向けた。

「Bon-appetit☆（召し上がれ）」

――それは、どっちの意味だ？
寝起きの不機嫌な顔のまま、差し出された朝食プレートと、恋人を交互に見遣ったジェイソンにディックは耳打ちした。

「As you like it！（お好きなように）」


＊END＊