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20になる前の冬。

「マー君、急にどうしたの～～」

二人で住み始めたアパートはまだ雑然としていて、それでも部屋の隅にツリーが飾ってあったり、玄関にオーナメントがぶら下がっているのを見ると自分一人の生活じゃないんだな、と心の奥が妙にこそばゆかった。

今日は久しぶりに休みが取れたから、少しは【恋人】らしいデートをしようとムー子を誘ったらこの答えだ。
――コイツにはロマンチックの欠片すら無ェのか？
心の奥底で悪態を吐きながらも、それでも嬉しそうに巻髪を作るムー子をつい、可愛いと思ってしまう。
よく見れば、今日着たワンピースだって去年のクリスマスにアクマがプレゼントした物だった。

「デート♪デート♪♪」

彼の思いを知ってか知らずか、ムー子は上機嫌に化粧を始める。
まだ少し掛かるなと、アクマは手元のスマホに指を走らせた。

検索ワードは【イルミネーション　江ノ島】

きっと、シーキャンドルしか出ないだろうなと予想もしながらも、近場の美味しそうなイタリアンをチェックし、そのまま予約を入れる。今の時代はこうしてネット予約が出来るから便利になったものだ。予約完了のメールが即座に折り返されて、アクマは思う。
ムー子がマスカラとにらめっこしているのを確認すると、押入れに隠した小さな箱をポケットに仕舞った。

女性の指輪なんて買うのは初めてだったから、喜んで貰えるだろうか。

一人、アクマは頭を掻く。

「お待たせぇ～～」

急に後ろから抱きつかれて、つい、大声を出してしまった。

「怒んないでよぉ…」

悲しそうに顔を伏せるムー子の頭をぽんと撫でて続ける。

「…怒っちゃいねェよ。ちょっと驚いただけだ」

さっきのプレゼント、見られてはいないだろうか。
背筋をヒヤリとしたものが流れる。
けれど、ムー子はそれに気付いていないようだった。

「ホント？」

そう、無邪気に微笑みかける。

「おぅ。
　今日はお前観たいって言ってた映画でも行くか」

恋愛映画なんて興味も無かったけれど、嬉しそうな彼女の顔が見れるなら、それで充分だ。

「うん！嬉しい！」

――なぁ、ムー子。ずっと一緒に居ような。

見上げた彼女の頬をそっと撫でて、ニヤリとアクマが笑った。


天皇誕生日？
祝日だから祝ってやらぁ！


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