Serena*Mのあたまのなかみ。
大人スマイルは良く笑うので色々と楽で良いです。
あとアクマは良いお父さんだと思う(口は悪いけど)
あとアクマは良いお父さんだと思う(口は悪いけど)
その日、スマイルはアクマから「今日は餃子を作るから手伝え」と連絡があったのでいそいそと部屋の片づけを終わらせ、駅前の美味しいと噂のシュークリームを10個ほど買い込んでアクマのアパートのチャイムを鳴らしたのだった。
鍵を開けたと同時に飛び出す子供たちをアクマが首根っこを掴んで押さえるのを見てスマイルが苦笑する。
奥のキッチンに居るムー子に見えるようにお土産を掲げながらスマイルは挨拶した。
「おじゃましますー」
アクマに促され、リビングまで行くとスマイルは熱烈な歓迎を受ける。
「今日のおやつはなにー?」
「ねぇ新しい玩具買って貰ったんだ、遊ぼう」
「見てみて、これ、あたしが描いたの~!」
矢継ぎ早にお喋りをされて、アクマが短く溜息を吐く。
「オレの時はこんなに歓迎されねーのにな」
「…きっと、コレの所為だと思うよ?」
スマイルは高く掲げたシュークリームを指差して、アクマへと渡す。
それから、子供たちと同じ視線まで屈むとにっこりと笑って続けた。
「今日のおやつは駅前のシュークリーム。ちゃんと晩ご飯を食べてからじゃないと食べちゃダメだよ。
それから玩具で遊ぶのは餃子を作ってからだ。
ん、この絵よく描けてる。お父さんそっくりだね」
それぞれのあたまを撫でてやると、三人三様ににいっと母親似の笑顔を作る。
立ち上がってから、その母であるムー子に尋ねた。
「僕、何を手伝えば良いですか?」
*
キッチンではムー子がせっせと白菜やらにらを切り、その隣で一番下の子供をあやしながらアクマがひたすらにひき肉を捏ねている。
スマイルは三人の子供たちと一緒に、出来上がったタネを皮に包む作業をしていた。
ほんの30秒程で美しい襞の餃子を作るスマイルの手元に子供たちの視線は釘付けで、真似をしようと四苦八苦している。そんないびづな餃子を手直ししながら、スマイルはぼんやりと昔もこうして餃子を作ったことを思い出した。
それは、まだランドセルを背負っていた頃の話だ。
いつものように、ペコと遊んでいると今日は早く家に帰らなくちゃいけないとペコが言う。
「どうして?」
尋ねると、今日は餃子の日だから手伝わなくちゃいけねーんだ、とペコは神妙な顔で頷く。
スマイルは餃子と言えばラーメン屋で食べるものしか知らなかったから、きょとんとした顔を返してしまった。
そしたら、だ。ペコが「よし、今日はスマイルもおいらん家で餃子食べてくべ!な!かぁちゃんのうめーんだぞ!」そう言って腕を引っ張る。
今日も実の母は遅くなると分かっていたから、素直にスマイルはペコの家にお邪魔する事になり、
小さなペコの妹や弟たちに囲まれながら餃子作りを手伝ったのだ。
ペコのお母さんが山盛りに作ってくれたタネを、せっせと二人で餃子の形にして、弟たちの餃子の形も直していく。
大皿にいくら餃子を並べてもタネは全然減らなくて、けれど笑いながら作業するのは凄く楽しくて、
途中、帰ってきたペコのお父さんが凄い速さで、とっても綺麗に餃子を作るのが格好良く見えて。
ホットプレートいっぱいに並べた餃子の、その蓋を取った瞬間の水蒸気の熱さとその匂いはスマイルにとって一番大好きな思い出になったのだった。
「な、スマイル!
おいらのかぁちゃんの餃子は日本一だろ?!」
そう言ってご飯とかき込むペコの笑顔も眩しくて、スマイルはただうん、頷く事しか出来なかった。
「おースマイル、手が止まってんぞ」
急にアクマから声を掛けられて、思考が現実に引き戻される。
やっと少なくなったタネのボウルに、また大量のタネを足されて彼は苦笑した。
「まだ作るの?」
「おう、これで終わりだからオレも作るぞ」
隣に腰を下ろし、アクマが餃子を作り始める。
彼の作る餃子は、スマイルや子供たちが作った餃子より一回りも二回りも大きく、目に見えてタネが減っていった。
なんだか、その様が在りし日のペコの父を彷彿とさせる。
じっと見つめるスマイルの視線に気付いたのか、アクマは厭そうに手を振った。
「オレなんか見るよりさっさと餃子作りを終わらせてくれ。
終わらないと飯食えないからよ」
うん。
スマイルは頷き、また作業を進める。
「…そぉいやよ、なんでお前って餃子好きなんだ?」
アクマが手と止めずに呟く。
背中の息子は小さく寝息を立てていた。上の子供たちは作業に飽きたのか、お腹が空いたのかキッチンに立つ母に纏わりついている。家中に、中華スープの良い匂いが充満していた。
「…子供の頃ね、手伝ったんだ。
凄く楽しくてさ、それから好きになった」
「…ペコん家か。オレも手伝わされたな。暫く餃子食いたくねぇって思ったんだけどよ」
アクマがあの頃の様に人の悪い顔で笑う。
「でもよ、やっぱ家族と作ると楽しいもんな」
その『家族』の中に自分をカウントして貰えること、それがどんなに嬉しいことかスマイルは伝えたくなったが、後々どやされそうなので黙っておくことにした。
そして、やっとの思いで全ての作業を終えて、ホットプレートに餃子を並べる。今も昔も、餃子の焼き方は変わってなかった。
ガラスの蓋を開けたときのあの匂い、喚声。
「ほらーちゃんと手ェ洗って~~」
母に促されて手を洗って。
最後に回しいれるごま油に、パチパチを爆ぜる音。
今日は大人だから、黄金色のビールをグラスに注いで
「「「「いただきます」」」」
食卓は急に、騒がしくなる。
「ねぇ、アクマ。
今日はありがとう」
グラスを合わせると、彼も頷いた。
「おう、また手伝いに来いよ」
餃子が好きなのは、きっと家族になれるからだと。
スマイルはビールを飲み干した。
*FIN*
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