久しぶりの更新がピンポン(笑)
アニメ始まって、なんか再熱。
ペコの口調が難しい。リカイフノウ。
スマイルがペコに甘い話。
僕らの住む、小さな町でも夏祭りがある。
御神輿を担ぐことは無かったけど、神社には出店が並び、寂れた境内がまるで都会のネオンように光り輝く。
子供の頃、親から貰った500円をどう使おうかと悩んだものだけど、高校生になった今はそんな事に悩む筈も…いや、変わらなかった。
目の前で綿菓子を選ぶ友人の顔は真剣そのものだ。
「なァ、おっちゃん。
この袋のわたあめ、ちょ~~~~~っと少なくない?」
「中身は変わらんよ。皆同じ量だ」
5分くらい前から、ずっと彼は此処に座り込んだまま、手際良く創られる綿飴を見つめ続けている。
「え~~
そんな風には見えないんだけどなぁ~~~~?」
「…さっきから作り方を見てるだろ。
ほら、商売の邪魔だ。行った行った!!」
心底煩わしそうに、手を振る店主。
持った割り箸と、作りかけの綿飴がふわふわと揺れた。
「ペコ、わたあめ食べるの?」
「うん、食べたいんよ。
でも…」
「その両手に持ってるりんご飴とチョコバナナ、食べてからだって遅くないんじゃない?」
「おいらもそれ、思ってたんよ。
おっちゃん、また来るかんな!」
来なくていい、そんな顔をした主人を尻目に境内に続く参道を歩く。
「さっきから、そんなに甘いもの食べて気持ち悪くならないの?」
「晩ご飯抜いてきたかんな!」
笑顔で振り向く友人は子供の頃から全く変わらず、なんとなく安堵した。
お祭りに騒ぐ参道とは逆に、境内は相変わらず静まったままで、
けれど吊るされた提灯が今日が特別な日だと教えてくれた。
「座って食べようよ、ペコ。
そのうち落とすよ」
何度も友人が地面に食べ物を落とすのを目撃している僕は、軒下へと誘う。
「アリになんかやんねーかんな!」
彼も素直に賛同し、隣に腰掛けた。
高台になっている此処は、見晴らしがいい。
きらきら光る参道とは別に、いつものネオンの町も見えた。
と……
「うぇぇぇぇぇぇぇおにいちゃぁぁぁぁぁぁん…
おにいちゃーーーーーーーーん!!!!!!」
奥から、兄を呼びながら泣く子供がひょっこりと出てきた。
年の頃は幼稚園くらいだろうか。
兄と遊んだ名残なのか、頭にはヒーローのお面(朝にやってるあのバッタのやつ)と、手には水ヨーヨーがぶら下がっていた。
「迷子かい?
お兄ちゃんとはぐれちゃった?」
僕が尋ねても、少年は泣くばかりで、
友人は足をぶらぶらさせてチョコバナナに噛り付くだけだ。
困ったなぁ。
小さくため息を吐いたのが少年に伝わってしまったのだろうか。
「おにぃちゃぁぁぁぁん!」
一際大きく少年が泣いたところで、
「ヒーロー!見参!!!!!」
ペコが鳥居の下であのポーズを決めていた。
「おにぃ…」
少年が、友人の剣幕に驚く。
あまりに驚いたようで、大粒の涙は止まってしまったようだ。
「ほい、これ」
友人は少年の目の前に、さっき買ったいちご飴(りんご飴と一緒に買ってたらしい)を差し出した。
「腹が減ってたら、にーちゃん探せないもんよ!」
びっくりして、僕を見上げる少年に僕は頷いた。
「ほら、ヒーローがくれるって。
君はさっきまでヒーローだったんだろう?」
お面を指差すと、少年は何かを思い出したように大きく頷いた。
少年がいちご飴を受け取った時だった。
「あっマコト!!
お前、何処行ってたんだよ!!!!
探したんだぞ!!!!!!」
境内を駆け上がってくる足音と、声。
「おにぃちゃん!!!!!!」
【マコト】と呼ばれた少年は駆け出し、そして兄に小突かれていた。
少年の名前が【マコト】で、僕の名前も【誠】だ。
子供の頃、泣いてた自分にさっきのマコトが重なる。
「…ペコはさ、凄いね」
「ん?何がさ??」
食べかけだったりんご飴を小さく齧りながら、友人は首を傾げる。
「泣いてたあのコ、僕は泣き止ませることは出来なかった」
「ンなこと…
あれはいちご飴の力。
甘いものは正義なんよ」
そんな事、無いと思うよ。
暗くて、怖くて寂しくて。
そこに差し込んだ、一筋の光。
僕のヒーロー。
「スマイルーおいらのいちご飴が無くなっちまった~~
いちご飴買ってくれろ~~」
大げさに騒ぐ友人を見ると、自己責任でしょ、とは言えず僕は続ける。
「いいよ、いちご飴買ってあげる。
その代わり、僕に1口ちょうだい」
「むーーーーー」
悩む顔を作って、にかっと彼は笑った。
「1口だけだかんな!」
あとちょっとだけな!大口禁止だかんな!!
わぁわぁと、彼は続ける。
さっきまで齧っていたりんご飴は、既に割り箸のみになっていた。
いちご飴1つ200円。
それで、この笑顔が買えるのなら安いと思う。
そんな、お祭りの話。
*FIN*