Serena*Mのあたまのなかみ。
BvS/クラブル
久し振りのクラブル。
2人が付き合っていることを知っているロイスのアースです。
久し振りのクラブル。
2人が付き合っていることを知っているロイスのアースです。
華やかなパーティにしては珍しくプレスの腕章を着けたまま会場の隅で談笑するクラークとロイスの姿を見つけると、相手の話もそこそこにブルースは彼らに挨拶するよう片手を上げた。
始めに気付いたのはロイスの方で、手に持ったシャンパングラスを掲げたまま傍らの後輩記者を突く。
ピンチョスを頬張っていたクラークはブルースの存在に目を見開くと、慌ててオリーブを飲み下すようにシャンパンを煽った。
「こんにちは、ウェインさん。
貴殿がこんな内輪のパーティに来てるだなんて以外だわ」
今宵開かれたのは、ゴッサムに根付く本屋の20周年記念の小さなパーティだった。
街の名士として彼が招かれたとしても何の疑問もない。ただ、これがデイリープラネットも名を連ねるTV放送局の100周年記念の式典ならまだしも、ある夫婦が始めた小さな本屋(と、言ってもゴッサムには10店舗はあるチェーン店なのだが)のお祝いに彼のような大企業の顔が顔を出すのが珍しいと感じたのだ。彼の代理として別の者が参列したってなんら違和感がない。来賓の挨拶にだってウェイン産業の名は呼ばれなかった筈だ。
「……君たちこそ。
もっと大掛かりな政治のパーティに行くものとばかり」
ロイスの言葉にブルースがクラークの持った皿のピンチョスをつまみながら返す。
「あぁ、これ?」
ロイスは腕に着けた腕章を見せながらシャンパンに口を付ける。
「同僚がこの創業者さんとコラムを書いていてね。
賑やかしに私たちも呼ばれたの。だから、仕事と言うより普通にお祝いに来た感じかも」
「あぁ…あの街角コラムか。
懐かしい街の記憶が語られていて私も好きだよ」
「有難う、同僚に伝えておくわ」
微笑んだロイスに、クラークが割って入る。
「…僕らはそんな理由だけど、ブルース、君は」
「あぁ、私も似たようなものだ。
代理の者が出席する予定だったんだが、私の予定が変わってね。ちょうど空いた時間だったし、こうして顔を覗かせたくらいさ」
1000万には届きそうな高級な腕時計を見遣ってブルースは答える。
「でも、君たちが居てくれて良かった。
プライベートだと断っても『一言!』とメモを片手に迫られてばかりでね。こうしていれば『取材を受けている』と寄ってこないだろう?」
「…あら、じゃぁデイリープラネット独占でインタビューを組んじゃおうかしら?」
「ははは、最近読んだ本の話なら出来そうだ。
もちろん、お求めはこちらの本屋で!ってね」
茶目っ気たっぷりに笑ったブルースに、クラークは「これがあのしかめっ面のバットマンなんだよなぁ」なんて感心する。
「…どうしたの、クラーク? 少し酔っちゃった?」
街の名士を目の前にして微動だにしない後輩に、ロイスは首を傾げる。
「あ、いや! 別に、そんなんじゃなくて…」
大袈裟に首を振ったクラークに、彼がつけたのであろう、爽やかな香水の香りが辺りに漂った。
グレープフルーツにも似た香りは軽く、まだ都会に慣れていない少年を彷彿とさせる。未だ少年のような純粋さを持つクラークに良く合う香りだったが、もうすっかりと都会生活に慣れた青年にしては安っぽい香りにも思えた。
「…パーティだと貴方、いつもこの香りよね。お気に入り?」
先程のブルースと同じく、クラークの取ったピンチョスをつまんでロイスは尋ねる。
「えっと、その…これは。
そ、そんなに変な臭いかな!?」
手首の匂いを嗅ぐクラークに、ブルースは首を振る。
「そんな事は無い。君に良く似合っている。
ただ、彼女の言いたいことは…」
「普段着けてるコロンと違うじゃない? だからちょっと気になっただけよ」
続けたロイスにクラークは頭を掻いた。
「…お気に入り、と云うか…思い出、と云うか」
「思い出?」
首を傾げたロイスとブルースの2人に、クラークは続ける。
「ハイスクールの時のプロムでさ。
その時の彼女からプレゼントされて… なかなか自分で“似合う”ってコロンも分からないし。
パーティになると思い出してついこれにしちゃうんだ…」
照れ隠しのように「へへへ…」笑うクラークに「まさに青春の思い出ね」ロイスは目を細め、自分の知らない恋人を垣間見たブルースは口を真一文字に結ぶ。
「ブルース?」
一瞬だけ見せた恋人の表情に目ざとく気付いたクラークは眉を寄せる。
「…何でもない」
恋人の言葉にゴッサムの名士としての柔らかい微笑みを向けたブルースに、それ以上クラークは追及せず「ねぇ子牛のローストは食べた?とっても美味しかったよ」なんて話題を変えたのだった。
*
鮮やかなイブニングドレスの花が舞う、政治家のパーティ会場で隣に並んだ同僚のコロンの香りが以前のものと違っているのにロイスは気が付いた。
「…コロン、変えた?」
つま先立ちになってこっそりと耳打ちするロイスに、視線だけは壇上を向けたままクラークが頷く。
「うん。ブルースがね、『君に似合いそうだから』ってくれたんだ。
ちょうど前の香水を切らせた所だったし、有難く使わせてもらってるところ」
ふうん、ロイスは言うと居住まいを正してゴッサムの未来について語る政治家の話を簡潔に書き留める。
鼻に届く香りは少し重さのあるムスクで、ほんのりと漂う柑橘系の香りが“彼”らしさを強調している。控えめだけど、記憶に残る洗練された香りはまさに恋人からのセレクトそのもと言った風で、普段の彼がどんな目で恋人を見ているのかが分かる――事情を知るロイスにとっては少し恥ずかしくなるような香りだった。
あんなに落ち着き払ったウェインさんでも、やっぱり恋人のことになると“嫉妬”するのね。
なんて彼女は重いウールのコートを羽織った名士を思い出して、そして自分だけの秘密ににっこりと微笑を零す。
傍らのクラークは急に笑ったロイスの意図を掴めず「え、似合わないかな!?後で訊いてみよう…」なんて内心ドキドキするのだった。
*おしまい*
始めに気付いたのはロイスの方で、手に持ったシャンパングラスを掲げたまま傍らの後輩記者を突く。
ピンチョスを頬張っていたクラークはブルースの存在に目を見開くと、慌ててオリーブを飲み下すようにシャンパンを煽った。
「こんにちは、ウェインさん。
貴殿がこんな内輪のパーティに来てるだなんて以外だわ」
今宵開かれたのは、ゴッサムに根付く本屋の20周年記念の小さなパーティだった。
街の名士として彼が招かれたとしても何の疑問もない。ただ、これがデイリープラネットも名を連ねるTV放送局の100周年記念の式典ならまだしも、ある夫婦が始めた小さな本屋(と、言ってもゴッサムには10店舗はあるチェーン店なのだが)のお祝いに彼のような大企業の顔が顔を出すのが珍しいと感じたのだ。彼の代理として別の者が参列したってなんら違和感がない。来賓の挨拶にだってウェイン産業の名は呼ばれなかった筈だ。
「……君たちこそ。
もっと大掛かりな政治のパーティに行くものとばかり」
ロイスの言葉にブルースがクラークの持った皿のピンチョスをつまみながら返す。
「あぁ、これ?」
ロイスは腕に着けた腕章を見せながらシャンパンに口を付ける。
「同僚がこの創業者さんとコラムを書いていてね。
賑やかしに私たちも呼ばれたの。だから、仕事と言うより普通にお祝いに来た感じかも」
「あぁ…あの街角コラムか。
懐かしい街の記憶が語られていて私も好きだよ」
「有難う、同僚に伝えておくわ」
微笑んだロイスに、クラークが割って入る。
「…僕らはそんな理由だけど、ブルース、君は」
「あぁ、私も似たようなものだ。
代理の者が出席する予定だったんだが、私の予定が変わってね。ちょうど空いた時間だったし、こうして顔を覗かせたくらいさ」
1000万には届きそうな高級な腕時計を見遣ってブルースは答える。
「でも、君たちが居てくれて良かった。
プライベートだと断っても『一言!』とメモを片手に迫られてばかりでね。こうしていれば『取材を受けている』と寄ってこないだろう?」
「…あら、じゃぁデイリープラネット独占でインタビューを組んじゃおうかしら?」
「ははは、最近読んだ本の話なら出来そうだ。
もちろん、お求めはこちらの本屋で!ってね」
茶目っ気たっぷりに笑ったブルースに、クラークは「これがあのしかめっ面のバットマンなんだよなぁ」なんて感心する。
「…どうしたの、クラーク? 少し酔っちゃった?」
街の名士を目の前にして微動だにしない後輩に、ロイスは首を傾げる。
「あ、いや! 別に、そんなんじゃなくて…」
大袈裟に首を振ったクラークに、彼がつけたのであろう、爽やかな香水の香りが辺りに漂った。
グレープフルーツにも似た香りは軽く、まだ都会に慣れていない少年を彷彿とさせる。未だ少年のような純粋さを持つクラークに良く合う香りだったが、もうすっかりと都会生活に慣れた青年にしては安っぽい香りにも思えた。
「…パーティだと貴方、いつもこの香りよね。お気に入り?」
先程のブルースと同じく、クラークの取ったピンチョスをつまんでロイスは尋ねる。
「えっと、その…これは。
そ、そんなに変な臭いかな!?」
手首の匂いを嗅ぐクラークに、ブルースは首を振る。
「そんな事は無い。君に良く似合っている。
ただ、彼女の言いたいことは…」
「普段着けてるコロンと違うじゃない? だからちょっと気になっただけよ」
続けたロイスにクラークは頭を掻いた。
「…お気に入り、と云うか…思い出、と云うか」
「思い出?」
首を傾げたロイスとブルースの2人に、クラークは続ける。
「ハイスクールの時のプロムでさ。
その時の彼女からプレゼントされて… なかなか自分で“似合う”ってコロンも分からないし。
パーティになると思い出してついこれにしちゃうんだ…」
照れ隠しのように「へへへ…」笑うクラークに「まさに青春の思い出ね」ロイスは目を細め、自分の知らない恋人を垣間見たブルースは口を真一文字に結ぶ。
「ブルース?」
一瞬だけ見せた恋人の表情に目ざとく気付いたクラークは眉を寄せる。
「…何でもない」
恋人の言葉にゴッサムの名士としての柔らかい微笑みを向けたブルースに、それ以上クラークは追及せず「ねぇ子牛のローストは食べた?とっても美味しかったよ」なんて話題を変えたのだった。
*
鮮やかなイブニングドレスの花が舞う、政治家のパーティ会場で隣に並んだ同僚のコロンの香りが以前のものと違っているのにロイスは気が付いた。
「…コロン、変えた?」
つま先立ちになってこっそりと耳打ちするロイスに、視線だけは壇上を向けたままクラークが頷く。
「うん。ブルースがね、『君に似合いそうだから』ってくれたんだ。
ちょうど前の香水を切らせた所だったし、有難く使わせてもらってるところ」
ふうん、ロイスは言うと居住まいを正してゴッサムの未来について語る政治家の話を簡潔に書き留める。
鼻に届く香りは少し重さのあるムスクで、ほんのりと漂う柑橘系の香りが“彼”らしさを強調している。控えめだけど、記憶に残る洗練された香りはまさに恋人からのセレクトそのもと言った風で、普段の彼がどんな目で恋人を見ているのかが分かる――事情を知るロイスにとっては少し恥ずかしくなるような香りだった。
あんなに落ち着き払ったウェインさんでも、やっぱり恋人のことになると“嫉妬”するのね。
なんて彼女は重いウールのコートを羽織った名士を思い出して、そして自分だけの秘密ににっこりと微笑を零す。
傍らのクラークは急に笑ったロイスの意図を掴めず「え、似合わないかな!?後で訊いてみよう…」なんて内心ドキドキするのだった。
*おしまい*
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