Serena*Mのあたまのなかみ。
TENET/主ニル
ニールの独白2篇。
前回の主人公側と対になるタイトル(?)にしたかったので。
初めて会った時からなつき度MAXのニールってば、過去(未来)の主人公を何があったんだろう…と想ぞ…妄想を掻き立てられる!
ニールの一人称が『僕』でお送り致しますので、大丈夫だよ!って方はお楽しみください。
ニールの独白2篇。
前回の主人公側と対になるタイトル(?)にしたかったので。
初めて会った時からなつき度MAXのニールってば、過去(未来)の主人公を何があったんだろう…と想ぞ…妄想を掻き立てられる!
ニールの一人称が『僕』でお送り致しますので、大丈夫だよ!って方はお楽しみください。
ウォッカ・トニック
“組織”に属した時、その頂点であるボスは厳しい人なのだろうと思っていた。
誰よりも勝る頭脳、優れた運動神経。
先を読む力を研ぎ澄ませ、未来と過去の事象を修正して回る――
『初めまして、ニール』
聞いた容貌よりも若く見えるその顔に、穏やかな笑みを浮かべて彼は手を差し伸べる。
目尻に刻まれた皴は重ねた彼の年齢を表していて、やっぱり自分とは遠い存在なんだろうなと何処かで悟っていた。
「えっと…貴方が、その――」
まるで子供のようにどぎまぎする自分に、彼は組織の暗号を告げ、呼応するように答える。
あぁ、本当に。
ボスと横並びでこうして座って今後の作戦を聴くだなんて馬鹿げてる!
いつものように電子の回文で良いじゃないか。解くのだって楽しいし、なによりこんなに緊張しない。
そんな僕を見透かしたように、彼は僕の緊張を解いてくれた。
「…ダイエット・コークを」
自分の前に置かれたのはカクテルのキール。
赤ワインほどくどさが無いし、軽いナッツだけでも飲み下せるお酒だった。
こんな格式の高いバーで何を頼んで良いかわからなくて、咄嗟に頭に浮かんだカクテルをオーダーしたんだ。
「ダイエット・コーク?」
酒に強そうな壮齢な男性が頼む可愛らしい飲み物に、思わず僕は破顔する。
「好きなんだ」
穏やかに告げたボスに、
「覚えておくよ」
そう返して、すっかりとお茶目な彼の事が好きになってしまった。
「ニール、君のオーダーは」
「…良いお酒が思いつかなくて、キールを」
「酒は強いのか?」
「どうだろう…? 普段はウォッカを飲むことが多いかな」
「なら、今日だって頼めば良かったのに」
「作戦を聞くのに、へべれけの酔っ払いは勘弁願いたいなって」
「…それなら、今度会う時はその“お気に入りのウォッカ”で会おう」
――また“次”がある。だからこの作戦では死ねない。
彼の役に立つことが、最大の使命なのだから。
僕は頷いて、伝えられる暗号のコードを必死に脳内に焼き付けた。
暁に沈む
その目を見たのは、2度目だった――
*
その人は、他の人と少し“違って”いた。
僕の出生と生い立ちは、よくある可哀相な話の1つではあったけれど、ちょっとだけ珍しかったので人は僕を畏れるようにただ傍観するのを好んだ。
行動しようとすれば制限され、家に閉じこもろうと思えば外へ連れ出される。
まるで何かに見張られているような毎日に嫌気が射して、僕は人に心を開くことを躊躇っていた。
仲良くなった隣の席の子は、急な家庭の事情で遠くの街に引っ越し、
教室で騒いだスポーツクラブのメンバーは、気付けば別のチームに所属する。
そんな僕に、“彼”はやすやすと近付いた。
始めは勿論、警戒していた。
だって彼は組織の人間だし、上官でもあるから。
“知り合い”以上の情は抱いても無意味だと、今までの経験で知っていた。
初めて会った時、お茶目に僕の緊張を解そうとしてくれた優しいボスは、驚いたことにそのまま僕に手を差し伸べ続けてくれた。
時には“父”のように厳しく叱咤し、時には“親友”のように悪巧みを実行する。
夜中のプールに飛び込む面白さも、暴漢から身を護る為のナイフ術も。
『CIAのエージェントだったんだ。知らないことは何もない』
口数は少なかったけれど、飾らない彼の言葉は僕に真っ直ぐに響いて、
その感情が“恋”だと気付いた時には、もう既に彼の手中にハマっていたのだと思う。
彼の唇に犯され、全身を蕩かされ、切ない肉体の疼きを満たす行為に、時々彼は遠い目をする。
其れが吐精の延長戦なのか、それとも別の“何か”であるのを知るには僕はまだ若かった。
『無知は武器になる』
彼はせがむ僕をそう宥めて、いつも話をはぐらかすから。
いつしか僕も「だったらずっと貴方の傍に居させて」と、若いフリをしてやり過ごした。
ある日、難しい顔をしてモニター画面を睨んでいた彼が、僕に厳しい目を向けた。
「――君に、新しい作戦を頼みたい」
*
其れは、過去に“行って”まだCIAエージェントの彼を救う物語だった。
初めて聞く話だ、過去に未来の僕が彼と会っていただなんて。
「どうする? 僕が“未来の恋人です”なんて現れたら」
「無知は最大の武器だ。そんな話を到底信じられないだろう」
「…大丈夫、そんなことはしないから。
だって、僕だって無知の武器はある。お互い平等に行こうよ」
笑った僕を、彼は遠い目をして微笑んだ。
「…行っておいで」
*
“彼を護る”
その作戦は危ない所だらけだったけれど、成功した。
お互いが逆転した世界を彷徨い、そうして“過去”の彼と作戦が成功したことを喜ぶ。
これからの人生の為に巡行を選ぶ彼に、僕は手を振った。
『未来で会おう』
言おうとして、その瞳に気付いてしまった。
――あぁ、この目だ。
この意志を僕は知っている――
「美しい友情の始まりに。
そして終わりに」
僕が組織に在籍する理由はたった1つ。
――彼の役に立つことが、最大の使命なのだから。
*FIN*
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