Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ブルディク
ネタを思い浮かべながら、攻の爪って性癖なのか…?と自分の扉を開いてしまった作品。
タイトルは難しい言葉を使いたかった欲。
ついでに言うと私のブルディクって大体子供時代の話をして大人に繋げてるな…(気付きたくなかった気付き)
ネタを思い浮かべながら、攻の爪って性癖なのか…?と自分の扉を開いてしまった作品。
タイトルは難しい言葉を使いたかった欲。
ついでに言うと私のブルディクって大体子供時代の話をして大人に繋げてるな…(気付きたくなかった気付き)
眠る前のひと時、ディックとブルースは本を読むのを日課としていた。
ディックは最近お気に入りの子供向けの冒険小説を(ブルースも子供の頃に読んだらしい、面白いとお薦めしてくれた1冊だ)、傍らのブルースは難しそうな探偵小説を読んでいた。
主人公を乗せた潜水艦が新しい島に到着したのと同時にディックの小さな口から欠伸が漏れる。ちょうど区切りも良かったから、ディックは小鳥の描かれた栞を挟んでゆっくりと本を閉じた。隣のブルースはディックには気付かない様子で、じっと本を見つめている。細かく上下に揺れる瞳の動きに、彼が小説の世界に没頭していることはディックでも理解出来る。サイドテーブルに置かれたランプの淡いオレンジの光に照らされながら、真剣な表情でページを捲るブルースの所作を、ディックはぼんやりと見ていた。
――と、ディックはあることに気が付いて、読みかけの本を枕の横へ置くと、じっと自分の指先を見つめる。
隣のディックの不自然な動きに、ブルースが素早く探偵の世界からこの世界に意識を戻したようだった。
「…? どうした、ディック。今日の読書は終わりかな?」
疲れた目を労わるように目頭をぎゅっと押さえてブルースが微笑む。現実の世界でも名探偵なバットマンは、本の世界でも難解な事件を解決するのが好きなようだった。彼も区切りの良いところまで来たのだろう、本から伸びた栞紐を挟んで本を閉じる。
「…ううん」
ディックは首を振ると、ブルースの手を引き寄せた。
「?」
首を傾げたブルースに、ディックはまだ細い指でゆっくりと大人の手をなぞる。
「ブルースの爪、綺麗だなぁって」
指先からほんの少しだけ出るように整えられた丸い爪はささくれ1つなくて、ディックは自身の爪と見比べる。
つやつやと仕上げられた健康的な桃色の爪にディックは小さく溜め息を吐いた。
「僕のと全然違うや」
ブルースの分厚い手のひらを押し返して、もう1度ディックは自分の手を見つめる。
風呂上がりだから酷く汚れた場所は無かったものの、小指の先には夕方アルフレッドと一緒に土いじりした名残なのか爪の間が茶色くなっていた。中途半端に伸びた爪は不揃いで、中指はこの前、学校でドッチボールして折れたから右側の部分が欠けていた。
「きちんと手入れしてるからな」
ディックの心を見透かしたのか、ブルースが自分の指先を見つめながら呟く。
「どうして?」
見上げたディックにブルースは口の端を上げた。
「…大人の身嗜みだよ」
「みだしなみ??」
ブルースの言葉を繰り返したディックに、ブルースはゆっくりと頷く。
「大人になれば分かることだ」
含みを込めた言葉にディックが唇を尖らせる。
「もう! そうやって僕を子供扱いして」
まさしく“子供”そのものの反応にブルースは困ったような表情を作ると、優しくディックの頭を撫でた。
「…愛する人を傷つけない為さ」
ブルースは続ける。
「……この前行った、孤児院の赤ちゃんのことを覚えているか?」
ハロウィンを迎える前、色とりどりのお菓子を持って訪問した孤児院の中に、まだ小さな赤ちゃんが居たのをディックは思い出す。
ふくふくとした頬に、まだ甘いミルクの香りがして『沢山食べて大きくなってね』そう小さな額にキスしたのだった。
「うん。覚えてるよ。小さくてあったかくて…守ってあげなきゃ!って」
父に似た眼差しで頷くディックに、ブルースも温かい気持ちになって続ける。
「あの子がミトンを嵌めていたのは?」
「…ミトン?」
ディックがいくら頭を捻ってもあの小さな赤ちゃんに手袋を嵌められているのを思い出せなくて。申し訳なさそうに頭を振った。
「……ごめんなさい、覚えてないや…」
「いや、悪いことじゃないから謝らなくていい」
ブルースは慰めて話の意図を説明する。
「赤ちゃんの肌はまだ繊細で柔らかくて、自分の爪でもひっかき傷を作ってしまうんだ。
だから、孤児院では怪我を防ぐためにもあぁしてミトンを嵌めておく」
「へぇ…」
頷いたディックに、更にブルースは続けた。
「そうして怪我をしても危ないから、ちゃんと爪切りして手入れしような?」
ディックの欠けた爪をちょんと突いてブルースは話を終わらせる。
「…はぁい」
見て欲しくない所を突かれてディックが居心地も悪く返事をする。
それから、素早くケットに潜り込むと
「早く寝ようよ?」
そう、ブルースのパジャマを引っ張って急かした。
「船長の冒険はどこまで進んだんだ?」
枕の隣に置かれたディックの本を、自分の本と重ねてサイドテーブルに置きながらブルースは尋ねる。
「新しい島に着いたところ。
ずっと海の話が続いていたから明日も読むのが楽しみ。
ブルースの方は?」
「今やっと黒幕と最初の事件が繋がったところだよ。
私も明日は一気に展開が進みそうだな」
言いながらサイドランプの明かりを消すと、寝室に暗闇が広がった。
――拡がるのは、深海の暗黒なのか、夜の街の暗がりなのか。
「おやすみ」
ディックが言うと、「おやすみ」低いブルースの声が闇から聞こえた。
*
薄明かりの付いた寝室は夜更けで、冷たい静寂に満たされていた。
シャワーを浴びたばかりのブルースが大きなベッドに近づくと、其処には子供の頃のようにディックが大の字で寝転んでいる。
「…遅かったね」
ディックが顔を上げると、「先に寝てて構わなかったんだが」ブルースもシーツの隙間に身体を滑り込ませる。
ディックの体温にほんのり温かい其処に、そのまま睡魔に誘われそうになったがディックの“夜”はこれからのようだった。
子供の頃のように父の手を引き寄せて、指を絡める。
相変わらず整えられた爪の形にディックはそっと漏らした。
「いつでもブルースの爪は綺麗だね…
何処かで手入れしてるの?」
――ブルースについてなら、誰よりもよく知っている筈なのに。
否定されるのを分かって質問を投げかけてしまう。
「…いや?」
ブルースも慣れたもので、ディックにされるがまま、手のひらを弄られていた。
「大人の身嗜みってやつ?」
まだ自分が幼かった頃、そう教えられた言葉を思い出してディックは尋ねる。
ブルースは「よく覚えてるな」少しだけ驚いた風に言って、身体を起こした。
暗闇に衣擦れの音だけが響き、ぴったりと寄り添っていた2人の間に新しい熱情が生まれる。
「…愛する人を傷つけない、ためでしょ?」
至近距離で見つめるブルースの夜空のような瞳に、ディックが妖しく微笑む。
普段はぴったりと上げた前髪が落ちていて、ダブロイド誌で見かける“ブルース・ウェイン”よりも若く見えた。
「…覚えてるよ」
続けた言葉は、かつて父だった人物からの口付けに掻き消される。
――大人になれば、分かる。
そう告げた恋人の真意をディックは諒解していた。
だって、ディックの爪も彼の人のように美しく整えられていたのだから――
*FIN*
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