Serena*Mのあたまのなかみ。
呪術廻戦/さしす
同級生2人を見守る硝子ちゃんが好きです。
同級生2人を見守る硝子ちゃんが好きです。
「けっ、弱い犬ほどよく吼えるって言うしな」
「…ちょっと表に出ようか」
入学当初の険悪だった同級生2人は、半年もしないうちに“親友”の距離になった。
「おぇ゛~~~っ!」
「そんな風に言うものじゃないよ」
180cmを越える男2人がぴったりと寄り添っている姿に驚きもせず硝子はカチカチと手元の携帯電話を弄る。
『今度2人で遊園地に行こうよ』
メールの主は、友人の兄の友達…だかの人物。医学部に通っていて情報収集に良いと硝子は連絡先を交換することを了承したのだ。
都の隣の県にある有名なアミューズメントテーマパークへの誘いに、目の前でべったりといちゃつく級友を見て難しい顔を作る。
――顔が五条で、性格が夏油なら迷わず『いいよ』そう返事したのにな。
なんて。
口の端を少し上げた同級生に、男2人は
「えっなにしょーこちゃんご機嫌?」
「良いことあったの?」
なんて話題の中心を紅一点に移したのだった。
*
其れは、同級生2人が相変わらず0距離で付き合っている時の事だ。
「ねね!見て見て!!」
黒板に大きく“自習”と書かれた午後の授業時間、昼休みから背中を丸めて“何か”をしていた悟が硝子の机の前にしゃがんだ。
「ん、なんだ」
全く興味の無い日本史の教科書から顔を上げて硝子はサングラスの怪しい同級生を見つめる。
「彫ってもらった♡」
差し出したのは右手、薬指の部分が赤く蚯蚓に腫れていた。
「…怪我か? 3箱でいい」
反転術式を施そうと細い手を差し出した硝子に、悟は手を引っ込める。
「ちっげーし!」
そう立ち上がったところに、傑が教室の引き戸を開けた。
「何したんだ、夏油」
硝子が訝し気な視線を投げると、傑は目を細める。
「中学生の頃に流行らなかったかい?」
片手に握られたコンパスに、硝子は溜め息を吐いた。
――くっだらない。
心で呟いたつもりが、どうやら声に出ていたらしい。
「くだらなくねーし」
悟が赤い舌を出して反論する。
一種の自傷行為だと思うし、変な呪いの類だと硝子は思う。
針で皮膚を傷付けて指輪を作り、願を懸けるのだ。
「…で、何を祈ったんだ?」
教科書を閉じて嗤った硝子に、悟は嬉しそうに答える。
「ん、傑とずっと一緒に居られますようにって!」
「悟、ちゃんと硝子のこともお願いしただろう」
口を挟んだ傑に、硝子は小さく首を振る。
「…いいよ、お前ら2人の友情で」
関わりたくないし。
本心は“そう”だったが、暑苦しい同級生は敢えてその思いを無視したようだった。
「やだ~しょーこも一緒!」
「硝子、私たちが仲良しだからって拗ねないで♡」
傑と悟、2人から抱き着かれた硝子は難しい顔を作って低く唸る。
「離れろ、クズども」
*
子供の呪いを悟は気に入っているようだった。
傷付けた皮膚の跡が消えかかると、親友に頼んで刺して貰うのだろう。
青白い肌に沈む茶色い傷痕を見ながら硝子は思う。
――実は傑にも小指に同じ呪いが掛けられていた。
1度、酷い傷を負って運ばれた彼に反転術式を施そうとした硝に、意識も朦朧とした級友が手首を掴んで懇願する。
「左手の……傷だけは治さないで」
その時に初めて硝子も傑の呪いを知ったのだが、心優しい彼女は願い通りにその呪いだけは残して治療してやった。後に、彼女好みの煙草が10カートン差し入れられたのは2人だけの秘密だ。
「ねー硝子。
反転って全部治しちゃうモンなの?」
星漿体の一件から反転術式を会得した悟が相変わらず“自習”、書かれた黒板の教室で呟く。
普段は3人が揃う筈の教室に傑の姿はなく、悟もはしゃいだ様子もないから彼が学校に来ていないのは明白だった。
昨日から任務で東北に出張中なのだ。寒いから風邪引くなよ、片手を上げて見送った硝子に「悟にお土産買ってくるねって伝えといて」少し疲れた顔をしていたのが妙に引っかかる。
「…いや?
ひょい、の所を変えれば出来るよ」
人差し指で宙をくるくると回した硝子に「うーん」悟は頭を抱える。
無下限を自動で回し、同時に反転も回せる力量を持つ彼ではあったが、まだ会得したばかりの反転術式を細やかに使いこなすことは出来ていないようだった。
「どうしてもさぁ、治っちゃうんだよねぇ」
左手を翳して悟は唇を尖らせる。
呪いを始めた当初は右手に刻んだ刺し傷は、いつの間にか左手の薬指に変わっていた。
最近は悟も傑と一緒に行動することが少ないらしく、自分で呪いを継続しているらしい。「裁縫道具、持ってる?」悟が夜に硝子の部屋を訪れて、彼女は級友の行為を知った。
「ん~……まぁ、慣れだな」
硝子は渡された自学習用プリントに目を落とす。
「…死ぬ前に使いこなせよ」
嗤った硝子に、悟も人の悪い笑みを浮かべた。
「ま、最強だから余裕っしょ」
*
夏油傑が呪詛師となり、同級生3人は2人に減った。
減ったと言えば、1つ学年の下の後輩も命を落とした。
まだ10代で、友達と笑っているだけが世界の全てで問題ないのに。
肩を落とした後輩の背中を擦ることしか出来なくて、硝子は口の端を噛む。
“最強”と謳われる五条悟は増々力を増し、この世の理を覆せるほどの力を持つようになった。
「やっぱりただの“オマジナイ”だったかぁ」
彼の願いは刺し傷が癒えるとともに潰え、その指にくすんだ傷痕は見当たらない。
それでも時折、硝子の裁縫箱から縫い針が見当たらない事があったから――
「…クズが」
硝子は吐き捨てて、消毒液を裁縫箱の隣に置いておくのだった。
*FIN*
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