夏は過ぎてゆき

NARUTO/カカイル

今日のカカイルの食卓メニューは
・焼き秋刀魚
・茄子の味噌汁
・揚げ出し豆腐のきのこあん
・栗ご飯
・柿
です。話中に出てこないので此処に書いておく。

栗ご飯は混ぜご飯じゃないのでセーフです（何かへの言い訳）
「秋刀魚に茄子のお味噌汁、どっちもカカシさんの生まれた時期に美味しい物ですよね」

くたくたになった輪切り茄子を味噌汁から引き揚げながら口に運んだイルカに、向かいに座って焼いた秋刀魚の背骨を外していたカカシが「ん？」首を傾げる。

「茄子って、夏が旬なんじゃないです？」

丁寧に背骨を皿の端に除けたカカシは顔を上げた。

「『秋茄子は嫁に食わすな』って聞いたことありません？」

アカデミーの教師らしく、諺を用いたイルカに、カカシは大根おろしを秋刀魚に乗せながら頷く。

「美味しいから食べさせるな、って話でしたっけ」
「ほら、美味しいってことは旬じゃないですか」

笑ったイルカに「むぅ」子供のように顔を顰めてカカシは秋刀魚を口に運ぶ。美味し（おいし）、呟いたカカシに構わず、イルカは続けた。

「…カカシさんが言うのも一説にありますけどね、美味しい秋茄子は身体を冷やす効果があるから可愛い嫁さんに体調崩して欲しくない、って優しさが隠れてるんですよ」

今度はイルカがカカシと同じように秋刀魚をつつく。

「へぇ。怖い嫁姑の話じゃないんだ」

今度は味噌汁を啜ったカカシにイルカは笑った。

「そんな恐ろしい諺だったら俺も教えませんって」

つられてカカシも少しだけ笑うと、真面目な顔を作ってイルカは恋人を見つめる。

「……カカシさんがこうして旬の物を美味しいって思ってくれること、俺は凄く素敵だなぁって思います」
「そぉ？」

――一体、この中忍は何を言っているのやら。
黄金色の栗の載ったご飯茶碗を掴んだカカシはイルカの言葉を受け流す。

「きっと誕生日も近くて、ウキウキした気分の頃に食べたものだから“美味しい”って感じたんじゃないですか？
　子供なのに随分渋い物が好きだな、ってよく言われてましたよ」

形の良い口の中にどんどん消えていくご飯にイルカは目を細める。
出会ったばかりの頃は緊張感があり、食が細かったカカシだが今はこうして心を許して素顔を晒し、イルカの作った料理を文句も言わずに平らげる。最初はイルカの料理も下手くそで真っ黒こげの秋刀魚を作ったり、味の濃すぎる味噌汁なんかを拵えたりもしたがいつでもカカシは何も言わずに完食してくれた。

「ごちそうさまでした、美味しかったです」

空の皿が並んだ食卓に、丁寧にカカシは両手を合わせる。

「お粗末様でした」

イルカも空の皿に頭を下げると「お茶、淹れますね」そう食卓に手を掛ける。

「あ、片付けはオレが」

立ち上がろうとするイルカをカカシは制すると「お土産に貰った柿を食べましょう」そう告げて皿を重ねる。

――里の誉に皿洗いなんてさせるの、俺だけだよなァ。
なんてイルカは恋人の背中を見送り、土産だと置かれた風呂敷の包みを解くのだった。

＊おしまい＊