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Serena*Mのあたまのなかみ。
NARUTO/カカイル

友人とスーパーに買い物に行き、酒(ウイスキー)の棚の前でやっていた寸劇を具現化。
勿論、その日の買い物では茄子を買いました。


其れは、人の入りも多くなってきた夕方の木ノ葉のスーパーでの出来事。

【本日ポイント5倍!お客様感謝DAY!!】

貼られた棚の前で中忍――うみのイルカが難しい顔をして酒の棚の前に突っ立っていた。
傍らには彼よりも身長の高い上忍――はたけカカシが買い物かごを片手に、猫背に覗き込んでいる。

「ね、センセ! 好きなお酒買いましょうよ」

銀色の髪の毛を揺らしたカカシに、イルカは相変わらず難しい顔だ。

「いえ…今日はポイント5倍だし…給料も入ったばっかりだし……」

イルカの視線の先には、4L入ったペットボトルのウイスキーが並んでいる。カカシの舌にはあまり馴染みのない酒だったが、最近アカデミーの受付中忍の中で空前のウイスキブームらしく、普段は焼酎を買うイルカもこうしてウイスキーを嗜むようになったのだ。

――明日はカカシもイルカも休み。

久し振りに一緒に過ごせる休みにイルカはカカシを家へと誘ったのだった。

「折角一緒に呑むんだからさ、こっちでい~じゃない?」

棚の上に置かれた、桐箱に入ったウイスキーを手に取ったカカシに、イルカは大きく首を振る。
自分の見つめた酒の1/4も入っていないのに値札には0の1つ多い銘柄は給料日の中忍でも躊躇してしまう値段だった。あの銘柄なら以前、綱手に連れて行かれたバーで見たことがある。古いものだと50年前に製法されたものもあるらしく、有名な銘柄のようだった。流石に一介のスーパーにそんな嗜好品は置いていないものの、『25年』と書かれたラベルに“それなり”の良いものだとは伺える。

「い、いやいや…」

もう1度首を振ったイルカに、奥ゆかしいな、カカシは思う。

いつも彼に寄って来るくノ一は彼の肩書を知っているからか「あれ買って」「これご馳走してよ」要求をされることが多かった。
1匹狼なところもあったけれど、仲間内で波風は立てたくなかったし、金にも困っていなかったから彼はいつだって彼女たちの要求を呑んで来たのだ。

だけどどうだろう。
今、目の前にいる格下の中忍は奢られるのを拒否しているようにも見える。

「今日はオレがお呼ばれしてるんですからオレが出しますよ。
 ホラ、手土産ってやつです」

総菜の入った買い物かごに無造作に桐箱を突っ込んで踵を返した上忍のベストを、イルカは控えめに掴んだ。

「…? イルカせんせ?」

あまり家の外での接触を良しとしないイルカが、こうしてカカシを引き留めるのは珍しい。

――言い忘れていたが、ナルトを介して知り合った2人はついひと月くらい前から付き合い始めていた。
目上の者に対しても折れない心を持った強気なイルカに、カカシが惚れてしまったらしい。彼の熱意に根負けしたイルカがげっそりした顔をして『付き合います』言ったのはカカシにとって忘れられない、大切な日になった。

「…嫌、です」

俯いたイルカにカカシは首を傾げる。

「あ、コレ嫌でした?
 結構飲みやすいって言われてる銘柄なんですけど……じゃぁ、こっちのにしましょうか」

桐箱のウイスキーを棚に戻し、となりの布張りの箱を手に取ったカカシに

「そうじゃなくて」

もう1度、イルカは首を振る。

「…酒の……美味い酒の味を知ってしまったら今の安酒に戻れなくなるんで…
 俺の給料じゃこんな良い酒、買えませんし…」

絞り出すように呟いたイルカの言葉に、カカシは目を瞬かせる。

「……貴方は、上忍だし有名人で…俺と付き合う、なんて、その……遊び、かもしれないですけど……」

――写輪眼のカカシ、里1番の業師。

彼の隣に立つくノ一たちは常に美しくて強い。そんな彼女らとの浮名を流すカカシの噂は受付に入るイルカもよく耳にしていた。
だから不思議だったのだ。
平凡な中忍で、目立った功績も無い、しかも同性の自分に何故カカシが付き纏い、あまつさえ「付き合ってください」「好きなんです」そう頭を下げてこようとは。

「……ん?
 オレは本気だよイルカ先生。ずっとずっと美味しいお酒買ってあげるからね」

恋人の感情を汲み取ったカカシが目を細めて「先生、凄く可愛い」俯いたままのイルカに耳打ちする。

「…ッ! な、何言ってるんですか!!」

いつもの調子で背中を叩いたイルカに「やっぱ元気な先生が好き」カカシは背中の痛みを堪えながら思う。

「にしても先生、いったい」
「! すみませ…!!」

悪戯に笑ったカカシに、イルカが慌ててその背を擦る。
その背中の痛みが、朝まで続くことになったのは――また別の話。



ナルトが里を出て2年。
『便りが無いのは元気な証拠』なんて笑っているイルカだったが、その裏では彼の身を案じていた。

「あれぇ、先生~
 まだお酒あったぁ?」

こたつにぬくぬくと入り、上機嫌な声を出すカカシに「ちょっと今探してます~!」イルカも戸棚を開けながら返す。

ここ数週間、長期任務だと言って連絡1つ寄こさない恋人が『午後には帰ります』そう式を飛ばして来たのは朝の8時。
帰るなら自分の家に帰れよな、思うものの、久し振りの恋人との逢瀬に喜んでいたのも事実だ。教え子が巣立ち、また新しい毎日を過ごすものの、意外性№1だった教え子が身近に居ないのは少し寂しかった。そんな時に寄り添ってくれたカカシの存在に、イルカは救われていた部分もあると思う。相変わらず自分を慕う上忍にイルカは溜め息を吐くものの、決して“嫌い”ではなかった。
そんな恋人の帰還なのだ、アカデミー帰りに軽く買い物をしたイルカは、風呂を沸かしてカカシの帰還を待つ。

「ただいまぁ~」

血生臭い任務をこなしてきたであろうカカシなのに、恋人を目の前にしてその顔は優しく穏やかだった。

「ちょっと汚れてるから先にお風呂入っちゃうね」
「だと思ってもう沸かしてあります。洗濯物はそっちのカゴに入れててください。洗っちゃうんで」
「ん! ありがとーね」

なんて慣れた会話を交わしてから「おかえりなさい」ぎゅっと恋人を抱きしめる。
忍として、男として、守られるだけは性に合わないと思った日もあったが、こうして人を支えるのにイルカは喜びを見出していたし、カカシからも「大切な人が待ってると思うと今まで以上に里が大切に思える」なんて言われて悪い気はしなかった。

「お、あったあった」

戸棚に並んだ、有名な銘柄の酒に混じっていつか買いおきしたペットボトルのウイスキーも目に入る。
ウイスキーのブームは一過性のものだったが、イルカは癖のあるフレーバーが結構気に入ってたし、カカシも有名どころの蒸留所の銘柄を土産に買って来たりしたから少しだけ味に詳しくなってしまった。
半分くらいまで減ったウイスキーを飲んだ記憶はイルカにはない。

『ずっとずっと美味しいお酒買ってあげるからね』

カカシに言葉に偽りはなく、果物を使った珍しい酒、遠い里の米の酒――里の外に滅多に出ることの無いイルカだったが、カカシの土産で彼は色々な里を旅していた。

――とは言っても、上忍殿にこのウイスキーを出すのもなぁ。

イルカは小さく溜め息を吐いて隣の地酒を掴み取る。

「この前呑んだ残りのお酒ですけどいいですか」

お猪口代わりの湯飲みを置いたイルカに、つまみのスルメをストーブで炙りながらカカシは口を開く。

「いーよいーよ。ちょっと呑めればいいだけだし。
あ、そうだ、先生。
 今度どっか温泉行こーよ。確かここのお酒作ってるところ、温泉が出てたんだよ。
センセも温泉好きでしょ?」

色違いの湯飲みに酒を注ぎながらカカシは話す。
無防備に口布の取られた顔は整っていて、無言のイルカを見つめるとへにゃりと目元が緩んだ。

相変わらずこの人が自分に惚れ込んでいるのかは謎だったが、それでも想いは“本物”だとイルカはカカシを信じようと決めたのだ。

「良いですね、今なら雪見酒が出来るんじゃないですか」
「うんうん、良い温泉に美味しい料理にイルカ先生と――」

うっとりと続けたカカシに、イルカはぴしゃりと厳しい顔を向ける。

「…って何悪い顔してるんですか。
 いいですか、一口に湯治と言ってもマナーがありましてね……」

――イルカの酒は、もう、減らない。

*FIN*

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