私のフロドはサムに片思い

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「ギムリ、これが私の気持ちだ」
小さな包みを差し出したレゴラスに、ギムリは目を白黒させました。
「お前が?
私に??」
エルフがドワーフに贈り物をするなんて、聞いたことがありません。
「知らないのかい、ギムリ」
「な、何が!」
睨んだ彼に、レゴラスは囁きました。
「今日はね、好きな人に贈り物をする日なんだよ?」
「え、エルフの風習なんて知らんッ!」
そっぽを向いたギムリに、レゴラスは優しく口付けをしました。
「ハッピー、バレンタイン♪」
*
「ねぇねぇ!」
「ボロミアさん!」
食事の後、離れたところでパイプ草を蒸かしていたボロミアに
メリーとピピンが近寄ってきました。
「…どうした?
食事が、足りなかったのか?」
ポケットに隠してある林檎を取り出したボロミアに、二人は
『違うよ!』
と笑います。
けれど、林檎は好きなので受け取りました。
「…じゃぁ、何かあったのか?」
尋ねたボロミアに、二人はラッピングされた包みを差し出します。
「あのね」
「これ」
『チョコレート!!』
きらきらと目を輝かせた二人に、ボロミアはにっこりとしました。
「チョコレート?
どうして私に?」
二人が話し始めます。
「レゴラスがね、教えてくれたんだ」
「今日は、大切な人に有難うの気持ちを伝える日だって!」
…そうか、それで今朝は3人でこそこそしていたのか。
ボロミアは膝をぽんぽんと叩き、二人を座らせました。
「でも、お前たちはこのチョコレートも食べたいんだろう?」
メリーとピピンは上機嫌な声で答えました。
『ボロミアさん大好き!』
*
「…そんな風習があるのか?」
焚火に薪をくべるアラゴルンに、ボロミアはさっきの話をしました。
メリーもピピンも、すっかり寝こけてます。
今日の野営の番はアラゴルンとボロミアでした。
【バレンタイン】はエルフの風習であること。
【感謝】を伝える日であること。
「…エルロンドの館でもあったが…
私が知っているのと少々、違うようだな」
ふむ、アラゴルンは顎に手をやります。
「違う、と言うと…?」
ボロミアは暖を取るのに炎に手を翳しました。
「【愛】を伝える日だ」
彼がボロミアを覗き込みます。
近い距離に、彼は顔を背けました。
「愛?」
「好きだ、と伝えるのだよ」
アラゴルンは翳した手を握って続けます。
「君からは、私に無いのかな?」
「…エルフの風習なぞ…」
ちょっとの沈黙の後、彼はアラゴルンの額に短く唇を合わせました。
「…これで、十分だろ…!」
ボロミアからのキスに、彼は嬉しそうに頷きました。
「来月はホワイトデーと言って、お返しの日があるんだ。
…うんと、サービスさせて貰うよ」
「遠慮したい…」
肩を落としたボロミアに、はっはっは、とアラゴルンは笑いました。
二人に背中を向けて寝ていたフロドが、薄目を開けて隣のサムを見遣ります。
「私もいつか…サムと…!」
*FIN*