喜怒哀楽と君との関係について

ネタをパクる最低なわたくし。
いいえ、リスペクトと云うのです。
（ネタ提供：トモしゃん）

「へっ、バッカでーーい」

お昼休み、ぱらぱらと漫画を捲りながらペコが笑う。
それはさっき僕が貸した週刊少年誌の単行本で、
妙に長いタイトルと銀髪の万屋が活躍する話だった。

僕はペコに勧められて買ったものの、そんなに面白いと思ったワケじゃなかったから、

「それ、あげる」

と授業のノートを纏める作業に入った。

ペコはひーひーと笑い転げていた。

＊

たかが練習試合、誰もがそう思うだろう。
非公式な試合ではあったけれど、とある卓球の名門校の選手と打ち合う機会に恵まれたペコは意気揚々と参上し、
そして惨敗した。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん！」

体育館の裏で、ペコは大泣きで。
声を聞いた学校の選手が心配して覗きに来るくらいだった。

特製のスポーツドリンクを飲みながら、ペコは鼻声だ。

「次は、絶対――」

「うん、大丈夫。
　ペコなら勝てるよ」

そう、背中を撫でたらまた泣かれた。

＊

見知らぬ誰かに意地悪をされるのは割と普通なのは僕だけなのだろうか？
今日も急に振りだした雨に置き傘を持ち出されたところだった。

はぁ、小さくため息を吐いてスニーカーの紐を結び直す。

「ったくよー、ひでーな」

ペコが手際よく折りたたみ傘を組み立てて誰かへの悪態をぶつぶつと吐く。
そうして、

「帰るべ」

傘を差し出した。

＊

「ねぇ、ペコ」

雨降りの帰り道、小さな傘に肩を寄せ合って僕は尋ねる。

「ペコはどうして、そんなに笑ったり泣いたり忙しいの？」

其れは本当に素朴な疑問で、深い意味は無かった。

はたとペコが立ち止まって考え込む。
ざぁざぁと雨の音だけが響いた。

少し、寒いな。
身震いしたところで、俯いたペコが顔を上げた。


「きっと。

　きっとスマイルが笑わない分、おいらが笑って
　怒らない分、おいらが怒ってんよ。

　それで、ちょうどだと思わん？」


何が【それでちょうどいい】のか僕には理解出来なかったけれど、
僕の感情をペコが代弁してくれるのなら、
それでいいかなと思ったのも事実だったから

「そうかもね」

僕は返して早く帰ろうとペコを急かした。


――君が僕を代弁してくれるのなら

いつか、君からその感情を取り戻そうか――


そんな、高校一年の春の話。

＊FIN＊