コガラシ1ゴウ×ナベノキセツ

単に私がおでん食べたいのとポンポン帽子のペコを書きたかっただけ。

高校三年になって、僕らはクラスが別になった。
僕は国立大学を目指す補講も多いコースで、ペコは就職組のクラス。
就職体験もあるらしいけれど、ペコはその全てを卓球の練習に当てているのだと云う。
昔と違って真面目に部活に出る彼と、放課後も補講の僕では随分と会えない時間も多くなった。
（と、云っても朝は一緒に登校してるし、部活も同じなんだけれど）
其れは、ペコも同じだったのか夏休みが明けて部活を引退してから（僕は、ね。ペコはまだ小泉先生の特効練習を受けてるから）毎週金曜日、僕の家に泊まるのがお決まりになっていた。

昨日のニュースで関東にも木枯らし1号が吹いたと伝えていた。
今日は、やけに風が冷たい。
隣を歩くペコも、白のロングマフラーをぐるぐる巻きにして、更にポンポンの付いた帽子も被っていた。
ペコのお母さんはとても器用な人で、子供たちのマフラーや帽子、簡単なミトンなんかはさっと編める人で、このマフラーと帽子もお母さんの手作りなのだとペコは笑っていた。
大きなポンポンをぎゅっと掴んでちょっと引っ張るのが最近の僕のお気に入りだ。

「そんなに気に入ったんならかぁちゃんに頼んで作って貰おうか？」

ペコは云うけど、僕には去年貰ったこのマフラーで充分。
編んだのはお母さんだけど、毛糸を選んでくれたのがペコだって聞いてから手放せなくなった。

「ううん、それはペコは被ってるから可愛いんだよ。気にしないで」

「男に可愛いってあるかっちゅーの」

んべっと赤い舌を出してペコ。
吐く息がとても白い。
今日の体育は室内競技だといいな、僕は心底思った。

「…今晩はおでんにしようか」

「いいねぇ、おでん」

鼻を赤くしたペコが微笑う。

「コンビニ？」

「いや、ちょっと時間掛かるけどちゃんとスーパーに行って材料買おう。
　餅巾も沢山入れようか」

餅巾着がペコが好きなのは知ってたから、僕その言葉を強調する。

「うおーー！
　〆はうどんなっ！うどん！」

嬉しくなって駆け出す彼を、早足で追いかける。

「待って、ペコ」

校門が見えるまで、あと少し。
やっぱり僕は君を追いかけるのが好きみたいだ。


＊FIN＊