Serena*Mのあたまのなかみ。
僕のヒーローアカデミア/心尾+電気
平和アース/プロヒ設定/高校卒業後、別々の事務所に就職しつつも一緒に住んでいるふたり。
話の展開でセロ上匂わせ(?)
Twitterで呟いてたネタの具現化です。
1-Aメンバーはずっと仲良くしてて欲しい。
平和アース/プロヒ設定/高校卒業後、別々の事務所に就職しつつも一緒に住んでいるふたり。
話の展開でセロ上匂わせ(?)
Twitterで呟いてたネタの具現化です。
1-Aメンバーはずっと仲良くしてて欲しい。
「わぁ~~~ん! おじろぉ~~~~~!!!!!!」
電車の数も減った、日付も変わろうとする直前の時間帯。
玄関のドアで泣き喚く上鳴を迎え入れた尾白が暖かなリビングで箱のティッシュを差し出す。
隣のキッチンでは心操が洗い物を片付けながらそっと2人を覗き込んだ。
――話は、とても簡単だ。
明日は休みだからと事務作業に精を出して帰宅したのは尾白も心操も夕ご飯には遅すぎる時刻。年末の喧騒からか小さな小競り合いやパトロールの数も格段に多く、思うように時間が取れなくてこんな時間の帰宅になってしまった。
遅い時間ではあったけれど何も口にしないで1日を終えるのはつまらなさ過ぎると、冷蔵庫の中途半端に余った食材を適当に煮込んで味付けしただけの鍋を平らげ、明日はどう過ごそうか、なんて見つめ合ったところで尾白のスマートフォンが震えたのだ。人当たりは良い方だし、何よりも嫌われることの少ない尾白だ。こうして連絡を寄越す友人も多かったし、卒業して3年経っても雄英のクラスチャットはいつでも活発な情報交換の場所だった。
『DEN-PI:
セロと喧嘩した 泊めて!!!!!!!』
『はんた:
上鳴が出てったからそっちに行くと思う。
悪いけど1晩泊めてやってくれ。明日迎えに行く』
スマートフォンを見つめたまま小さく苦笑した恋人に心操は首を傾げる。
「…どした?」
「ん。上鳴が瀬呂と喧嘩したみたいでさ。こっち来るって」
――つい先月、上鳴が引越しをして瀬呂と一緒に暮らし始めた。
前までは隣町に住んでいたのでよく顔を合わせて夕食を摂っていたが(と、言うか上鳴が勝手に上がり込んでいた)、瀬呂の住む町は少し離れていたから「なかなかこうして飯食うことも減るな」なんて好きなものを作って送り出した記憶がある。
食卓テーブルの食器を重ねながら置いたスマートフォンを眺める尾白に心操は小さく顔を曇らせる。明日は休みだ。お互い仕事は不定期だったし、“休み”とは言っても緊急出動要請もある。久しぶりに重なった休日の夜、恋人と暖かい夜を過ごそうと心操はこっそり画策していたのだ。
「でも、瀬呂ン所からウチまで結構あるでしょ。
何で来るの?」
壁に掛けた時計を見上げて心操は呟く。
あの上鳴のことだ、『迎えに来て』と言ってもおかしくはない。それに、心優しい恋人はコートを着こんで言われるまま迎えに行くだろう。
「…わかんない。でも、流石に“泊めて”って言ってきてるから自分で来ると思うよ」
尾白の答えに「そう?」スポンジを泡立てながら心操は返す。
「子供じゃないんだし」笑った尾白が重ねた食器をキッチンカウンターに置くと、インターホンが鳴って――話は冒頭に戻る。
「わぁぁん」
ぼろぼろと大粒の涙を零して泣きじゃくる上鳴に尾白は「落ち着いて」そう、温かいお茶を差し出す。
上鳴が外廊下に置いたままの折畳みの自転車を玄関内に押し込んで、心操がリビングに戻ると相変わらず上鳴は子供のように泣いたまま、困り顔の恋人が背中を擦っている所だった。
「…っく、ひっく」
やっと嗚咽が収まってきたところで、出されたお茶に上鳴が口を付ける。
「ぁっつ!」
驚いて目を見開いたクラスメイトに「熱かった? 冷たい方がいい?」恋人が心配そうに覗き込んで心操が目を細める。
――別にそこまで優しくしなくたっていいじゃん。
心操だって、一緒に住む尾白と喧嘩の1つや2つはある。
けれどお互い冷静なところがあったので非があれば素直に謝ったし、悪いと思ったことは頭を下げてきた。意地を張りたい事もあったが、そんなつまらないプライドの為に恋人と過ごす時間を削られる方が非合理的だ。なので、喧嘩して家を飛び出した上鳴の気持ちは心操には分かりかねていたのだった(泊めてやってくれ、と連絡を寄越した瀬呂の気持ちは分かる。自分だって尾白が家を飛び出したら信頼の置ける緑谷や蛙吹あたりに「何も言わずに引き留めてくれ」なんて言うだろう)。
尾白の言葉に上鳴が「お゙がじだべ゙だい゙」鼻水を垂らしながら顔を上げる。
「おかし?」
上鳴の言葉に尾白がキッチンカウンターに立った心操を覗き見る。
恋人の意図を察した心操は小さく首を振った。
真面目な尾白とストイックな心操。
そんな2人が暮らす家に“娯楽”はあまりに少ない。
強いて言えば室内で出来る筋トレグッズはあったが、其れを“娯楽”と言って良い物か。プロテインドリンクのフレーバーだけは豊富に揃っていたから、2人にとっては筋力トレーニングは趣味の範疇に入るらしかった。
勿論、そんな家だ。
上鳴いうおやつ――甘味なんて常備されていない。
甘い物が欲しければココア味のプロテインドリンクをちょっと飲めば欲は満たされる、それが大きな理由だ(事務所で土産物のクッキーなんかを持って帰ることもあったが、滅多にない)。
「お菓子、ないの?」
びっくりしたように瞬きした上鳴の目には、もう涙の跡は無くて。泣き止んだクラスメイトに少しだけ尾白は胸を撫で下ろす。
――確かに、上鳴がこの家に来るときはコンビニでおやつを自分で調達していた筈だ。
新製品のスナック菓子、子供向けの妙に長い紐のようなグミ、大袋のパイ菓子……
『食べていいよ』言われて幾つか口にした事はあったが、その殆どを平らげて上鳴は帰っていくのが常だった。
「…食べたい?
いいよ、買ってきてあげる」
尾白は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべるとぽんぽんと上鳴の頭を撫でる。
「ほら、鼻噛んで。
イケメンヒーロ、チャージズマの顔が台無しだよ」
テーブルに置いたティッシュを何枚か引き抜いて上鳴の手に握らせると、「ちょっと待てってね」そうソファから立ち上がった。
「…ごめん、心操」
リビングから玄関へすり抜けざま、キッチンで水仕事をしていた心操に尾白は耳打ちする。そんな彼に心操は頭を振った。
「いいよ、尾白が悪いワケじゃないし」
ついでに食べたいアイス買ってきなよ。あんまり甘いモンなんてこの家に置かないしさ。たまには」
恋人からの返答に、尾白も安堵した表情を浮かべる。
「心操は欲しいもの、ある?」
「…特には」
「ん、分かった。じゃぁちょっと行ってくる」
コンビニへ行った尾白を見送って、相変わらずソファに座ったままの客人に心操は声を掛けた。
「…お茶、冷めただろ。
コーヒー淹れるけど、飲むか?」
「のむ」
心操の言葉に素直に上鳴は応じる。
近くに住んでいた頃からよく彼はこうして顔を出していたから、ミルクたっぷりのカフェオレを作ってローテーブルに置いてやる。帰ってきた尾白はきっと上鳴の隣に座るだろうから、離れたダイニングテーブルの椅子を引いて心操は座り、淹れたばかりのブラックコーヒーを啜った。
「…やさし~ね、尾白も心操も」
普段はどちらが使っているのだろう、黒地に英文字のプリントされたカップに口を付けて上鳴は呟く。
「そう? 普通じゃない?」
返した心操に上鳴は小さく笑った。
「心操もさ、尾白と喧嘩とかすんの? 想像出来ないんだけど」
「…するさ、多少は」
「へー意外! 尾白が『出て行く!』とか言ったことないの。それか心操が出てったりとか」
「…無い、な」
「…だよな~…知ってた」
「まぁお互い生きてきた環境も違うし、個性も違うし。
色々意見の相違とかはあるけど、そこまで感情的にはならないかな」
「は~おっとなぁ…」
「…同い年だろ」
「知ってる。
はん…瀬呂も同じ年なのにさぁ、あんなに落ち着いちゃって」
恋人の名前を言い直した上鳴に心操は目を細めると続ける。
「…明日迎えに来たらちゃんと謝れよ。
だいたいお前が悪いんだろ」
喧嘩の理由も訊かれなかった上鳴は何処か2人に安心していたのかもしれない。心操のから恋人の名前が出て、カフェオレを吹き出しそうになるのを必死に堪えて飲み込んだ。
「え、明日、瀬呂来るの!? ってかオレ来たの知ってた??」
――尾白に限ってわざわざ範太に連絡するとも思えないし。
目を白黒させた上鳴に心操は恋人の身の潔白を証明する。
「尾白に連絡あったよ。上鳴が行くから話聞いてやって欲しいって。
…ちゃんと分かってんじゃん、アンタのことさ」
「~~~!」
腑に落ちない顔を作って上鳴は心操を見つめる。
「もーオレばっかり子供なの!? そうなの!? はっきり言って???」
相変わらずの調子に戻った上鳴に心操は面倒そうな表情を作って、お手上げと言った風に頭を振った。
――早く帰って来てくれ、そんな恋人への願いが通じたのか鍵を開ける音が耳に届く。
「ただいまー。
上鳴、何が良いか分からなくてさ、適当に…」
直後、リビングのドアが開いて尾白が顔を出す。白いビニール袋をローテーブルに置くと、コートを置きにまた彼は姿を消した。
「尾白、ありがとな!」
パタンと閉められたドアに上鳴は言ってビニール袋からがさごそと菓子類を取り出す。
うすしお味のチップスにチョコの掛かったプレッツェル、BBQ味のスコーンと小さなチョコレートの詰め合わせのパックは、どれも通年商品の誰もが口にしたことのある一般的なものばかりで上鳴は破顔した。
「セレクトが“THE☆尾白”って感じ!」
腹を抱えて笑う上鳴に心操は眉を寄せる。
――人の恋人に悪口言うくらい元気になったんなら帰れっつーの。
整った顔立ちからの隠さない不機嫌オーラにも上鳴は怯まず、「ほぇ~やっぱイケメンって怖い顔しててもイケメンだなぁ」なんてポテトチップスの封を開けた。
「あ、アイスあんじゃん~!
ポテチとアイスってさぁ、最高だよねぇ」
袋の底に仕舞われたちょっと高級なカップアイスを取り出した上鳴から心操はアイスを奪うと
「これはオレが頼んだの。オレの」
そう表情を変えないまま続ける。
「えー、でもバニラだよ? それって尾白っぽいじゃん。
しんそ~はさぁ、こう――」
答えた上鳴の言葉は身なりを正した尾白の登場に掻き消された。
「そ。
それは俺んの。明日のおやつ」
「えー食べちゃダメ?」
「ダーメ」
「可愛くお願いしても?」
「可愛い友達なら夜中に泣きながら家に押しかけません」
「ちぇ~」
唇を尖らせた上鳴に尾白は言うと、心操からアイスを受け取って冷蔵庫に仕舞いに行く。
またがさがさとビニール袋を漁っていた上鳴だったが、袋の底の部分に猫の描かれたグミのパッケージを見つけて「…ラブラブじゃん」つまらなさそうに呟いた。
*
唇に充電コードを咥えたまま事切れた上鳴に上掛け布団を尾白が掛ける。
「はは、凄い。寝てても充電って出来るんだな」
握ったスマートフォンから光る充電中のランプに彼は微笑うとそっと外して枕元に置いてやった。
少しでもゆっくり寝れたら、とローテーブルも移動させて自由に寝返りを打てるようにしたリビングの電気を消すと、換気扇の下で一服していた心操に寄り掛かる。
「…ごめん、心操。明日休みなのに」
「別にいいよ。どうせ家の事してたら1日なんてあっという間でしょ」
――お互い休みも不定期で忙しい毎日だ。
久し振りの休み、ゆっくり寝て過ごすのも悪くなかったが、どうしても家の用事を片付けたりその辺を走り込んだりと“休む”のも真面目な2人だった。久しぶりに一緒に買い物もして、美味い店で昼飯なんかも食べて。特別な事をしなくたって、2人で出掛けるだけで随分と心の疲労は回復するものだ。
「…そうじゃなくて…その…」
言葉を濁した尾白に、心操はその意図を察する。
ダブルサイズのベッドは用意されていたものの、普段は2人が身体を休めるだけの存在で“恋人”らしい事に使われるのは月に1度あるかないか。勿論、男の生理現象として互いに処理することはあったけれど、愛を育む行為はうら若きヒーローにしては少し淡泊な方だった。
――明日は休み。
心操が想っていたのと同じように尾白も考えていたのだ。
「…尾白の所為じゃないって。
物事にはタイミングってものがあるだろ? 今日はちょっとソレがずれちゃっただけ」
自分にも言い聞かせるように心操は呟いて恋人の金の髪を撫でると、そのまま項まで手のひらを滑らせる。
「ん」撫でられた項にぴくりと尾白は甘い声を出すと、そのまま心操を見上げる。
切れ長の瞳が潤んでいて、それだけでも充分な“ご褒美”に思えた。
「ちょっと遅い時間…だけどさ。
風呂、…一緒に……」
恥じらう恋人から紡がれた言葉に、一瞬、心操の呼吸が止まる。
――滅多に甘えてくれない恋人の、精一杯のワガママ。
心を落ち着けるようにふーっと紫煙を吐き出すと心操は煙草を灰皿に押し付けた。
「…だったら、お風呂沸かしながら一緒に入ろうよ。
その方が時短で合理的だ」
恋人の言葉に尾白が目を見開く。
頬を紅潮させて見上げた顔が愛おしくて、思わずそのまま心操は恋人を抱き寄せて口付けた。
――前言撤回。
普段は『1人で入れるだろ』なんて冷たい恋人がちょっとだけ甘えてくれるのなら。
急な来客も、悪態をつくヒーローも――悪くない。
*おしまい*
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