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Serena*Mのあたまのなかみ。
僕のヒーローアカデミア/心尾

冬のヒロスだったらキスマーク付けてもバレないよな~って思ったのが話の始まり。夏のヒロスはえっちっち(?)
男子高校生らしく、部屋での勉強デートも良いなぁって思います(小並感)



『ちょっと世界史で聞きたいところがあるんだけど』

そう尾白から連絡があったのは1時間前。
ちょうど夕食を済ませて風呂から上がったばかりの心操は『いいよ』2つ返事で恋人を部屋に招き入れた。

室内の温度が完璧に制御されたハイツアライアンスは木枯らしが吹く季節でも常夏のように温かい。厚着の苦手な尾白はまだ夏といっても問題無いようなハーフパンツとTシャツの姿で現れ、心操を驚かせた。

「珍しいじゃん、尾白が来るなんて」
「…たまには一緒に勉強したって悪くないだろ」

俯いた尾白の耳が赤く染まっていて、心操は嬉しさを噛み殺す。
“付き合ってる”とは言っても、好きだと告げるのはいつも心操の方だったから彼も少しばかり不安になるのだ。——好きなのは、自分だけなんじゃないか、と。そっと手を繋げるのも、肩を抱き寄せるのも、口付けるのも。

「いいよ、入って。
 オレもそんなに世界史得意ってワケじゃないけど…一緒に勉強した方が覚えそうだし」

外開きのドアを支えて心操は尾白を部屋へと通す。
小さなローテーブルに積み重ねた教科書、それに2つ並んだグラスに「ありがとう」尾白は笑顔を作った。

「へー、もうヒーロー科はここまで進んでるんだ?」

尾白の真っ白な教科書を眺めながら心操は呟く。
3色のボールペンで見やすく書かれた心操のノートを、尾白は必死に書き写しているところだった。

「進んでるって言っても、課外授業で潰れるからさっさと読んでるだけだよ。プリント渡されて、勝手に勉強しろ~って感じでさ」

透明なファイルに挟まれたプリントを心操の方に差し出して、尾白はまたノートに視線を落とす。
心操のノートを「見やすい!」尾白は褒めたが、要点だけを纏めた簡素なプリントには尾白の文字がびっしりと書かれており、彼だってきちんと“学ぼう”としているのがよく分かった。

「…でもさ、尾白」
「なに?」

真っ白な尾白の教科書、自分の教科書と見比べつつ重要な単語に赤いマーカーを引いていた心操は口を開く。

「このプリントとかもさ…尾白もちゃんと勉強してんじゃん?
 わざわざ時間作ってオレの部屋に来てまで、一緒に勉強する意味……ある?」

実際、別にオレ、何も教えてないよね?続けた心操に尾白の走らせているペンが止まる。

「……何かさ、言いたくて来たんでしょ」

――ビンゴ。
固まったままの恋人を心操が覗き込むと、みるみるうちに尾白の顔が赤くなった。

「おーじろ♡ …どした?」

もう一度猫なで声で心操が尋ねると、居心地が悪そうに尾白は視線を逸らす。ついでに唇がツンと上を向いて、少し不機嫌になっているのが分かった。
心操は小さく溜息を吐くと今度はそっと恋人の頭を撫でる。

「…べんきょ…」

視線を外したまま言いかけた尾白の唇に人差し指を充て、ゆっくりと心操は続けた。

「…尾白、オレだってエスパーじゃないんだからさ。ちゃんと言ってくれないと分からないよ」

真剣な眼差しに顔を赤らめた尾白が俯く。

「……猿夫。ちゃんと言って」

真面目な恋人の声音に、尾白も観念したように肩を落とすと重い口を開いた。

「今日、さ。昼休みに心操…見かけて」

――其れは、今日の昼休みの話。
恋人を見かけた尾白が「心操!」そう声を掛けようとして、それは出来ないと挙げた手と尻尾を下げたのは人気の少ない校舎の裏。近くに自販機があるから人の姿があるものの、渡り廊下の陰になるその場所は人の往来から外れる場所でもあった。

長身な心操に対峙するのは頭2つ分は小さいスカートの女生徒。

恋愛に疎い尾白とは言え、その場所に呼び出される意味は理解していた。

「あー…見られてた?」
「…移動教室の帰りだったし、自販機に寄りたかったから…」

語尾を濁した尾白に心操は頬を撫でる。

「大丈夫、ちゃんと断ったよ」

――心操が嘘を吐かないことを尾白は知っている。

自分自身にストイックに、恋人である自分へも正直に。

安心させるように柔らかく微笑んだ心操に尾白は潤んだ瞳を向けた。

「…心操のことは信じてる。
 けど……だけど………」

はっきりと“付き合っています”なんて言えない関係なのは百も承知だった。それでも“友達”以上の関係になりたい。そう思って尾白だって心操に心を開いているのだ。――今だって、無意味だと思いながらも『勉強しよう』なんて誘って。

「…不安?」
「……人使は…誰にだって優しいし、普通科の星、って有名だし…格好良いし…」

ヒーローを目指す者として驚くほどの弱気な言葉に自分自身に腹が立つ。けれど、ヒーローを目指す者の前に、心操の前では尾白は唯の恋する高校生だった。
不安げに涙に濡れた双眸に見上げられて「あー…」今度照れたのは心操の方だった。

「尾白……それ、反則」

心操は頭を掻くと考え込むように唇を真一文字に結ぶ。

「…?」
「尾白、さ。もうスーツは冬仕様になった?」
「ん…? あぁ。流石に寒くなったから今はインナーも着てるよ」

慣れ親しんだ武術の道着を基調にした尾白のヒーロースーツは冬仕様になると胴着の下に防寒用のインナーを着用する。道着と同じように防刃や防炎の性能も持たせてあり、更に汗の水分に反応して発熱する素材でもあったから見た目よりずっと暖かいのだと教えてくれた。

「——なら」

尾白の言葉を聞いて心操は恋人を抱き寄せる。

「!?」

驚いた恋人に構わず、無防備に開いたTシャツの隙間の首筋に顔を埋めると音を立てて強く吸い付く。
意図的に鬱血させるその行為の意味は、唯の独占欲、それだけだった。

「ちょ、しんそ…!」

逃げるように尾白は身体を捻る。単純に力だけで言えば尾白の方に分があったので、最悪は力ずくで脱出すれば良いと思っていたが、殊の外あっさりと心操は唇を離した。

――白い肌に赤い吸い痕が浮かび上がる。

心操を睨んだまま微動だにしない尾白に心操は人の悪い笑みを浮かべた。

「…スーツ着てたら、見えないでしょ」
「それは平気だけど…ってそうじゃなくて!」
「…オレだってさ、不安なんだよ」

尾白だって優しいし、格好良いじゃん。
続けた心操に尾白は少し目を見開いたが、直ぐに眉を寄せて不機嫌な顔を作った。

「…でも、こーゆーのって俺がお前にするんじゃないの?
 話の流れ的に」

呆れて首を振った尾白だったが、怒ってはいないようだった。

「じゃぁ、尾白も…する?」

部屋着の襟元を引っ張った心操に尾白はまた首を振る。

「…いや。心操がこれだけ俺の事が好きって分かったから…充分かな」

独占欲の花を隠すように首筋に手を置いた尾白に「猿夫」心操がそっと顔を寄せる。ぎこちなく尾白が瞳を伏せようとして――

「!!!
 心操!時間!!!」

視線の先、勉強机に置かれた時計を指差す。
心操が振り向いて時刻を確認すると、長針は門限まであと5分の文字を指していた。

「ぅわ!」

弾かれるように心操も身体を離すとテーブルの上に広げたノートを搔き集める。

「尾白、明日世界史は!?」
「ない!」
「だったら教室に持ってく!
 とにかく今は帰れ!!」

厳重なセキュリティを誇るハイツアライアンスだ、門限を過ぎると途端に機械警備が動きだす。出入口は全て閉鎖されるし、共用施設の明かりも落とされる。雄英の学生とは言え、流石に機械警備を作動させたら反省文と罰掃除にはなるだろう。しかも、尾白の担任はあの“除籍”で有名なイレイザーヘッドこと相澤先生だ。危険な橋を渡るにはまだ早い。

「悪い、心操!
 部屋帰ったら連絡する!」

尾白も察したように片手を上げるとスニーカーを引っ掛けて部屋を飛び出していく。
門限まであと4分。じっとスマートフォンの時計を見つめて、こんなに1分が長いのかと心操は恋人からの着信を待った。時刻が11時になるのと同時に『ただいま!』恋人からの連絡が入って胸を撫で下ろす。
部屋の片付けもそこそこに、心操はベッドに転がってスマートフォンへ『おやすみ』言葉を打ち込んだ。

――良かった。

見慣れた天井を見上げて心操は一息つく。
それから、テーブルに散らばった勉強道具を見遣ると代わりにノートを纏めておくか、起き上がって使い慣れたペンを取った。勉強机に移動するのも面倒だったのでそのままずるりとベッドとローテーブルの隙間に身体を落とし、尾白のノートを引き寄せる。几帳面に並んだ恋人の筆跡を愛おしそうに見つめて、丁寧にノートの続きを書き写すのだった。自分のノートにはない、猫や猿の落書きなんかも交えながら。



翌日の男子更衣室。
目ざとく同級生のキスマークを見つけた峰田と上鳴が「彼女!?」ぐいぐいと尾白に迫る。

「蚊だよ、蚊」

今日の最高気温は10度にならないと言うのに苦しい言い訳をして尾白は話を無視する。
そんな彼が、教科書を返しに来た心操を1週間無視したとか、しなかったとか――

*おしまい*

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