ヒーロー候補生 体育の時間

僕のヒーローアカデミア/セロ上

リップクリーム×セロ上
浮かんだのでさくっと

「…っテ」

木枯らしの吹く秋の校庭。
個性訓練でも何でもない“唯の”体育の授業、持久力を鍛えろと1時間マラソンの説明を受けていた時だった。
集められた生徒の一番後ろ、瀬呂の傍らで体育座りをしていた上鳴が身を縮める。

「どしたん？」

瀬呂が横目で尋ねると上鳴は「唇切れたぁ」ぺろりと裂けた唇を舐めた。

「リップは」
「持ってない。教室」

彼の問いに「いってぇ～」上鳴は言いながら眉を寄せる。
当たり前だ、今は体育の時間でジャージに着替えているし、身の回りの小物は持っていなかった。

「しゃ～ね～なぁ」

瀬呂は言うとインナーのポケットに忍ばせたリップクリームを取り出す。

「おっ☆」

貸してくれると目を輝かせた上鳴に瀬呂は片側の口角だけ上げるとぐりぐりとリップクリームを自分の唇に塗りたくる。

「？」

上鳴が不思議そうに首を傾げると、そのまま首元を強引に寄せて口付ける。
厚く塗ったクリームを刷り込むように強く唇を押し付けると、それで瀬呂は満足したようだった。

「！！！！！！！！！」

顔を離された上鳴が大きく目を見開いて瀬呂を睨みつける。

「…だって、欲しかったんでしょ？」

相変わらず余裕の表情で目を細めた瀬呂に、上鳴は「イーーーー！！！！！」思い切り顰め面をして抗議する。

丁度、「説明は以上だ、後は各々周回してくれ」相澤の声にクラスメイト達が立ち上がった。
前の集団に続くようにトラックに出た瀬呂は、隣を走る上鳴に

「んじゃ、使った分のリップは部屋に帰ってから返却してよ♡」

なんて言ってペースを上げる。
投げられた言葉に「セロぉぉぉぉぉぉ！」パチパチと上鳴は放電しながら恋人を追いかけたのだった。

＊おしまい＊