Oh Juliet！

NARTO/カカイル

付き合い始めたばかりのぽわぽわな恋人のカカイル。
この後紅にバレてアスマと2人掛かりで揶揄われる。
浮足立ったカカシ先生は勿論受付でお土産を渡してめちゃくちゃイルカ先生に怒られます。
「何やってるんですか！」って。
色ボケしたっていいじゃないの、ねぇ。ってのがカカシさんの答えです。

「あら、戻ったの？」

木ノ葉の里、アカデミーに続く通りでヒナタ、サクラと連れ立って歩いていた紅が珍しくフード付きのマントを被ったカカシを呼び止める。

「先生、おかえりなさい！」
「カカシ先生、こんにちは」

真面目に上官の帰還を喜ぶサクラと律義に頭を下げたヒタナに「こんにーちは」なんて目を細めたカカシは一昨日からの単独任務で、ナルトら7班の面倒は紅やアスマたちが見ていた。
今此処に居る紅も、先ほどまで自分の担当下忍3人とナルトたちを引き攣れて草むしりをしていたのだ。折角の機会だし親睦を深めましょう、と引っ込み思案なヒナタを連れ出す口実を紅は見付けサクラと一緒に近くの甘味屋に行く途中だった。

「ん、さっき戻ったトコ。これから報告書出しに行くヨ」

そう片手を上げたカカシの、もう片方の手に上等な酒の瓶が揺れていたから目敏く紅は言葉を発する。

「お土産？」
「そ～だね」

任務に行った所で、土産1つ買わない男だと紅は知っている（アスマはよく珍しい酒や美味い肴を持ってくる。いつだって強いのは女の方なのだ）。下忍たちの面倒を見ていた自分たちへの御礼なのか、それとも――懇意の相手でも出来たのか。

「先生、明日からは私たちの担当？」

紅の思案に気付かず、サクラは担当上忍に尋ねる。
ガイの指導は熱く（熱く？）、アスマの指導も的確で良かったし（問題なのは一緒に任務する相手だ）、紅は知りたい幻術の事を細やかに教えてくれた。どの担当上忍も素晴らしい指導者ではあったが、矢張りカカシが1番安心するのだろう。顔を合わせば文句ばかりのサクラだったが、この時は少しだけ素直だった。

「その予定よ。
　これから報告書出して、明日の任務貰ってくるから…ま、10時に門のトコで大丈夫でしょ」

相変わらずののんびりとした口調でカカシは言うと、じゃ、紅たちに背を向ける。

隠すように酒の瓶をマントの中に忍ばせたのを見ると、どうやら其れは紅に渡す土産では無さそうだ。

「今日の受付はイルカよ。
　また喧嘩しないようにね」

――以前、カカシとイルカが派手に口論したとサクラから聞いていたから紅は釘を刺す。

「んっ！」

カカシは答えると、地面を蹴って姿を眩ました。ふわりと上がった砂埃にサクラとヒナタが顔を顰める。

「さ、気を取り直してあんみつ食べにいきましょ」

同期の消えた空を眺めながら、紅はヒナタとサクラに微笑んだ。

＊

――土産、なんて初めて買った。

慣れた里の屋根を伝いながらカカシは考える。
意中の人はどんな土産を喜んでくれるだろう、そう帰り道に小さな店を覗いたのは初めての経験だった。

変わったな、なんて柄にもなくカカシは思うと歩調を早める。

受付の交代時間まであと10分。
どうか、恋人の居る時間に間に合いますように！

＊おしまい＊