残映

呪術廻戦/夏油＆ミミナナ

ママ（？）してる時の夏油さんとミミナナちゃんの幻覚。
お猿の集う学校には行かせたくないけど、義務教育だし“学校”と言う場所を嫌いになれない夏油さんは通わせてるんじゃないかなぁって思って（中学年くらいまではミミナナちゃんも元気に学校通ってると思う。大きくなってからは自分の意思で行かなくなりそう）

ママ夏油、和食が似合うんだよな…本人血の滴るレアステーキとか食べるけど。
豆腐のハンバーグと茄子の煮びたし、トマトのサラダと旬の夏野菜をふんだんに使ったメニューです。近所の八百屋さんでいっぱいトマトはオマケして貰った。

強く西日の入る午後、狭い2DKのアパートのキッチンに立つ夏油の影が長く伸びる。
換気扇を最大に回して窓を全開にしていても、滴る汗は止まらない。じゅうじゅうと油の爆ぜる音を聞き流しつつ、「そろそろエアコンの掃除をして試運転しておくか…」なんて溜め息を吐いた、その時――

「ただいまぁ～！」
「ただいま帰りました」

玄関から元気な声が聞こえる。

「おかえり、美々子、菜々子」

夏油が顔を上げる。

「わぁ、夏油さま良い匂い」
「お腹空いたー！　今日のご飯はなぁに？」

腰元にくっ付いた女児2人に「ほらほら、危ないよ」夏油は言って出来上がった料理を皿に取り分ける。

「今日はね、豆腐のハンバーグと茄子の煮びたし。トマトのサラダもあるよ」

旬の野菜を並べた献立に「ふぅん」菜々子が口を尖らせる。いつもなら「〇〇、大好き！」なんて続けるから少しだけ夏油は首を傾げた。
そんな養父の顔に、聡い美々子が反応する。

「菜々子はあんまり茄子が好きじゃないの。
　美々子はこの前給食で出た茄子のそぼろあんが好き」

その言葉に「あぁ」夏油は苦笑して膝を折ると、菜々子に視線を合わせた。

「…1つだけ食べてごらん」

俯いたままの女児にかつて共に過ごした大きな子供の記憶が脳裏を過る。

任務の終えた地方都市、補助監督の迎えを待つ間に入った小さな中華屋の思い出だった。

『なに、それ』
「ん？　麻婆茄子だよ。知らない？」
『…いや、別に知ってっけど』

麻婆豆腐の亜流だろ。辛いから好きじゃねーんだよ。
そう続けながら天津飯を掻き込む怪しげなサングラスの男は夏油の同級生で親友で。

食堂で出される茄子の漬物もパスタに添えられた茄子も最後まで残っているのは夏油も気付いていたから、彼も辛い茄子と白米を頬張りながら笑ってやった。

「悟、茄子嫌いだもんね？」
『は？　ちげーし。食えるし』

そう啖呵を切って夏油の皿から茄子を奪った五条は、案の定盛大に咽て。

『辛いのは嫌いなんだよ』

涙目でまだ強がる親友を思いっきり笑ってやったっけ――

「――さま？　夏油さま？」

柔らかく微笑んだまま動きを止めた夏油に、傍らの美々子が心配そうに声を掛ける。

「…あぁ、ごめんね。少しぼーっとしてた」
「夏油さま、こんな暑い中でお料理なさってたんだもの。
　今度から美々子もお手伝いします！」
「菜々子も！」

元気よく迫った2人に夏油は困ったように眉を寄せると「美々子と菜々子はちゃんと勉強して外で遊ぶのが仕事だよ」なんて言って立ち上がる。
簡素な蛇口を回して濡らした布巾を作るとまだ夏油の傍から動かない2人に振り向いた。

「さ、もう直ぐご飯の時間だからちゃんと手を洗っておいで。それから、テーブルの準備して欲しいな」

差し出された“お手伝い”に「「はぁい！」」美々子と菜々子は元気よく答え、脱衣所にある手洗い場に走る。

2人を見送ってシンクに置いたフライパンを洗いながら、私が辛い料理を食べれるようになるまでまだ先だな、なんて夏油は独り、嗤うのだった。

＊END＊