Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ジェイディク
フォロワーさんからの提供ネタを書き起こしてみました。
短編でちょこちょこ続けられたら良いなぁ。
フォロワーさんからの提供ネタを書き起こしてみました。
短編でちょこちょこ続けられたら良いなぁ。
ぼくは小さなぬいぐるみ。
とあるお店のレジ前でずっと誰かの『おともだち』になれることをずっと待ってるんだ。
きっとぼくを選んでくれるのは小さな女の子で、
カゴに入れられてお散歩したり、一緒のベッドで眠ったり、ぎゅっと抱っこしてもらったり。
とっても仲良しになれると思う。
早く誰かのおともだちになりたいな。
*
「ねぇ、犬、飼おうよ」
それはいつものディックの気まぐれな一言だった。
付けっぱなしのテレビはケーブルテレビの無料放送期間中で愛くるしい子猫がじゃれあう姿が映し出されているペットチャンネルだった。
「此処はペット禁止だ」
――アパートの契約なんて覚えてなかったから当てずっぽうだけれど、隣に座るジェイソンはそう否定する。
唯でさえ手の掛かる雌犬のような恋人がいるのだ、これ以上生物を養うだなんて――あり得ない。
「んじゃぁ、猫」
即座に返したディックに、ジェイソンも素早くNOを突きつける。
「却下だ」
「飼いたい~飼いたい~~~」
まるで幼児のようにじたばたとソファを揺するディックに、ジェイソンは盛大に溜息を吐く。
「屋敷の方で飼えばいいだろう。
あっちなら庭も広いし、ダミアンが散歩してくれる」
そう提案するも、ディックの頬はぷくっと膨れたままで、
「飼いたい!」
そうジェイソンに懇願するのだった。
――面倒くせぇ。
その後、要らぬ一言を発して相変わらずの口論になってしまったのは想像に容易い。
「ジェイのばかばか!はげ!!」
半泣きで子供のような罵声を浴びせるディックに、とうとうジェイソンは「……頭冷やしてくる」そう小銭だけ掴むとアパートを飛び出した。
「ジェイなんてだいっきらい!」
ドアを閉めるの同時に投げられたのであろう“何か”が小気味良い良い金属音を響かせたから、幾ら可愛い顔をしてたって恋人は悪漢と戦うナイトウィングなんだな、と自然と背筋が伸びたのだった。
*
いつの時間も人もまばらな近所の個人店でバイク雑誌を立ち読みしていたジェイソンだったが、「店じまいするよ」そう店主に促されて読みかけの雑誌を棚へと戻す。
煙草の1つでも買って帰ろうかとレジへ行くと、小さな子供向けの商品なのだろう、手のひら程の大きさのぬいぐるみが乱雑に置かれているのが目に入った。
時々顔を覗かせる店ではあったが、その存在に気が付いたのは初めてで、昔から置かれている商品なのか、最近置かれたばかりなのか、彼には分からなかった。そんなジェイソンの鋭い視線に気が付いたのか店主が笑う。
「この辺に置いておくと親と買い物に来た女の子がねだってくれるからね。
売れたら儲けモンさ」
店主はジェイソンの愛用の煙草をカウンターから取り出す。
煙草とガムを買うのがいつもの彼の買い物だったから、今日もきっとそうなのだろうと店主は思っていた。
ジェイソンは詰まれたぬいぐるみの中に“犬”があるのを確認する。
茶色でちょっとタレ目のその犬は赤いフェルトの舌を出していてちょっとトボけた顔をしていた。
「ん」
追加で差し出した其れに店主は少し驚いたが「13ドル」そうレジを鳴らした。
*
「ただいま」
アパートのドアを開けると足元に転がっているのはソファに置いてるクッションだった。
ふわりと綿の詰められた其れを物凄い勢いで投げてきたんだな、出掛けの金属音を思い出してジェイソンは首を竦める。
クッションを拾って埃を払うと、ソファで膝を抱えたままのディックの隣にそっと戻した。
「…おかえり」
彼は帰ってきた恋人を見上げる。
「まだ怒ってんのか」
ジェイソンは呟く。
「…別に」
また口を尖らせた恋人に、ジェイソンは持ち帰った小さなぬいぐるみをディックの膝に置いた。
「??」
トボけた顔の茶色いその物体にディックが首を傾げる。
「犬」
頭上から降り注ぐ短い声に、その意味を察してディックは笑みを浮かべた。
「いぬ!!」
「…見りゃ分かるだろ」
冷蔵庫からジュースを取り出したジェイソンがディックの隣に腰掛ける。
「この子、名前は?」
くたくたした素材のぬいぐるみをくにくにと弄りながらディックは尋ねる。
「知らん」
やっぱりぶっきらぼうなジェイソンに、ディックは「うーん」小さなぬいぐるみと額と額を合わせながら悩んでいるようだった。
「…ジャック!」
急に顔を上げたディックにジェイソンが眉を顰める。
「JasonとDickだから、Jack!」
満面の笑みを浮かべてぬいぐるみと一緒に顔をこちらに向けたディックに「安直だな」そう苦笑した。
「でも、悪くないでしょ??」
顔の隣にジャックを並べて、ぬいぐるみを頷かせる。
それを見てジェイソンは
「そうか、よろしくな、ジャック」
ジャックのふわふわの頭をちょんと突いて、それからディックの額にそっとキスをした。
そうして、そっと囁く。
「…機嫌、直ったか」
「…うん。
ありがとう、ジェイソン」
ほんのり上気した潤んだ瞳がジェイソンを見据えて、今度はディックから恋人に唇を合わせる。
腕を回すと、握ったジャックのぬいぐるみがジェイソンの背中を滑り落ちて行った。
*
ぼくの名前はジャック。
小さなぬいぐるみ。
どうやらぼくの『おともだち』はこの大きなお兄さん2人みたいだ。
これから、仲良くできるといいな。
*おしまい*
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