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Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ジェイディク

単花占いするディックと、
「嫌い」の言葉に重ねて「好き」って言うジェイが浮かんだので書き殴っただけ。




実家であるウェインの屋敷に顔を出した帰り道。
地下鉄に繋がる大通りに人だかり見つけてディックがジェイソンの服を引っ張る。

「あれ、なんだろ?」

指差したディックに、ジェイソンは面倒そうに息を吐く。

「新しく出来た店か…若い奴らに人気の店なんじゃねぇの」

チラリと花模様のあしらわれた看板を見遣って、ジェイソンは其れがこの前ラジオで流れていた新しく出来たコーヒーショップであることに気付いた。
ハワイから進出してきたコナコーヒーの専門店で、トロピカルなサイドメニュー(女の子の飛びつきそうな甘いパンケーキ!)が人気なのだとアナウンサーが説明してたことを思い出す。

「…確か、ハワイ系列のコーヒー店」

ぼそりと呟いた言葉に新しい物好きのディックの瞳が輝く。

「行こう行こう!気になる!」

腕を掴んで駆け出した恋人に半ば引きずられるように、渋い顔でジェイソンは店内に入って行ったのだった。



ハワイらしい装飾の施された店内はSNSでも注目されている店なのもあって混雑しており、どうやら満席のようだった。
わざわざ待ってまで飲む必要は無いとパンケーキを羨ましそうに見つめるディックを説き伏せ、基本のコナコーヒーとパッションフルーツのグレーズドの掛かったドーナツをテイクアウトする。
少し歩いてセントラルの公園で食べても良かったし、そのまま帰ってから食べても悪くないだろうとの選択だった。

「どうする?」

テイクアウトしたコーヒーに口を付けながら隣の恋人を見下ろすと、恋人は

「セントラルの公園でコーヒーブレイクにしよ」

そう、腕に絡みつく。

「…零したら危ないだろ」

急に抱きつかれそうになって身体を反らしたジェイソンが小さく言うと、ふふっ、ディックは少しだけ笑ったのだった。



公園のベンチで買ってきたばかりの甘いドーナツとコーヒーを二人でシェアしつつ、のんびりと人の往来を見つめる。

まだ夕方には早い時間ではあったが、夏の終わりの風は気持ちよく、犬の散歩やジョギング、それに自分達と同じように会話を楽しむカップルでそれなりに盛況な場所のようだった。

コナコーヒーはさっぱりと上品な味で本場のものと変わらない美味しさを感じたが、ドーナツの方はグレーズドが甘すぎてディックの好みじゃなかったのか、早々にジェイソンに押し付けられてしまった。

「パンケーキなら美味しかったのかなぁ」

溜息混じりにディックは呟く。

人が注目する程、美味いと思える味ではなかったので次の来店はないな、とジェイソンは最後のドーナツをコーヒーで流し込んだ。

ジェイソンから空のコーヒーカップを受け取って、また袋に戻そうとしたディックが「あ」小さく声を漏らす。

「…どうした?」

紙袋を見つめたディックにジェイソンは尋ねる。

「ハワイだから…かな?」

がさがさと紙袋に手を入れたディックが“何か”を取り出す。

それはすっかり萎れてしまっていたが、ハワイでよく見かける『ブーゲンビリア』のピンクの花だった。

「最初に気付かなかったのかよ」

呆れたように眉を顰めたジェイソンに、ちょっとディックは不満げだ。

「下に落ちちゃってたんだと思うよ?」

お花に悪い事しちゃったな、彼は続ける。

「…でも、どうせ…捨てるだろ」

言い放ったジェイソンに、そうだけど、ディックは溜息を吐く。

茎を持ってくるくると回した鮮やかなピンクの花に、彼は何かを思いついたようだった。

「すき」

「きらい」

言いながら花弁をはらはらと落とす。

――5、6枚折り重なった其れを言葉と共に千切る遊びを、誰しもが子供の頃経験した筈だ。

ブーゲンビリアの花弁は多くなかったから、直ぐに最後の一枚になる。

「きら――」

言いかけたディックの言葉を遮って、ジェイソンは最後の一枚を千切った。

「好き」

驚いた顔でディックがジェイソンを振り向く。

「まぁ、別に占いで本人の気持ちが左右されるなんて思ってないけどな」

花弁を投げやって、ジェイソンは立ち上がる。

「ほら、帰るぞ」

公園は夕暮れが迫っていて、随分と影が長くなっていた。
少し前まであれだけ人の往来があったと言うのに、今やジョギングする何人かが横切るだけだ。

ディックに振り向いて、彼は腕を差し出す。
こうして腕を絡めて歩くのが恋人は大好きなのを知っていたから、占いの言葉もあってジェイソンは少し優しく扱った。

「大好き!」

弾んだ声でディックが言って、ジェイソンの腕に飛びつく。

「帰るぞ」

低く呟くと「うん」ぎゅっとディックは恋人の腕に絡みついた。


――花占い、なんて占いにも入らないのかもしれないけど。
どうかずっと、ジェイソンと僕が“好き”で居られますように。


2人の長い影が、公園のアスファルトに濃い影を作っていた。


*FIN*

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