ある日、テンプルの片隅で

いつものオリジナルっぽい幼オビの話。
さくらさんが描いてくれたねんねこオビが超絶可愛くってぶわ～～～～って書いただけの話。

その日は、どうしてテンプルに呼ばれたのかは分かりません。
ただ、長い長い廊下のソファで、ぽかぽかと日差しを浴びながら待っているのは酷な時間で、待たされるうちにうつらうつらとオビ＝ワンは船を漕ぎ始めたのでした。

「オビ？…寝てても良いよ」

まだ年若いマスターであるクワイ＝ガンが自分の膝をぽんと叩きます。

元はと言えば自分の不始末でテンプルにこうして呼び出されていて、ただ運が悪い事に他のトラブルも重なってしまってこうして待ちぼうけを食らわされてしまっているのですが、まだ幼いパダワンはその事を知りません。

「…だめ、です」

ふるふると頭を振り、ごしごしと目を擦ったオビ＝ワンでしたが睡魔に勝てないのは目に見えて分かりましたから、クワイ＝ガンは微笑むとそっとオビ＝ワンの肩を抱くとゆっくりと自身の膝に倒しました。

「昨日は遅くまで難しい勉強をしていたものな。
　まだ呼ばれる気配は無いから少しだけ休みなさい」

「でも…」

見上げた空色の瞳に、マスターは優しく頭を撫でます。

「いいかい、オビ。これはマスターからの命令だ」

“命令”と言われてしまっては、パダワンのオビ＝ワンに断ることは出来ません。

「はい」小さく言うと廊下に置いた足もソファに上げ、ゆっくりと瞳を閉じました。

暖かなマスターの体温と匂い。
それにゆったりと撫でられる心地よさにオビ＝ワンのすぅすぅと規則正しい寝息が直ぐに聞こえてきます。

安心しきって眠る弟子の顔に、ふっとクワイ＝ガンの頬も緩みます。
ぽかぽかと差し込む日差しが２人を包み込んでいました。

＊

「マスター・クワイ！遅くなりました」

パタパタと廊下を走ってくる人物がクワイ＝ガンに呼び掛けます。

『静かに』

クワイ＝ガンは顔を上げると人差し指を唇に充ててその人にウインクします。

彼の膝の上では、まだ幼いパダワンが天使のような顔で眠りこけているのでした。

『あと少しだけ。
　そうしたら、起こすから』

彼はフォースに乗せて伝えると、その人は子供好きなのも手伝って頷いてくれました。

「あちらの部屋に居りますから、必ず来て下さいね」

＊

もうすっかり日が傾いた頃になって、ぱちりとオビ＝ワンが目を覚ましました。

「…ますたー？」

眼前には俯いて意識を飛ばしている（瞑想ではないのはオビ＝ワンにも分かりました）クワイ＝ガンの顔があります。

「ん？起きたかな」

オビ＝ワンに気付いてクワイ＝ガンも瞳を開けます。

「マスター、ごめんなさい。
　ぼく、すっかり…」

慌てて衣を正したパダワンに、マスターは大丈夫だよ、首を振りました。

「さて、よだれを拭いたら行こうか」

「！！」

オビ＝ワンが口元を拭うと、カラカラとクワイ＝ガンは破顔したのでした。

＊

結局のところ、呼び出しに対しての報告では別件で忙しかったからなのか、オビ＝ワンが寝ていて時間も遅くなったからなのか大きなお咎めもなく、

「以後、気をつけるように」

と伝えられただけでした。
以前はみっちり2時間以上絞られた記憶のあるクワイ＝ガンは内心「ナイス、パダワン！」と喜んでおり、今度もオビ＝ワンとテンプルに来ようと算段したのは言うまでもありません。
けれど残念なことに、テンプルでのお昼寝の話はクワイ＝ガンの師匠…ドゥークー伯爵にも伝わってしまいましたから、

「今後、テンプルの呼び出しがある時はオビ＝ワンを預けるように」

と釘を刺されてしまったのは言うまでもありません。

「はぁ」

かつてのマスターの呼び出しに、クワイ＝ガンは大きく溜息を吐き、何も知らないオビ＝ワンだけがニコニコとそれを見つめていたのでした。


＊おしまい＊