Enjoy motorcyclE

バットマンシリーズ/ジェイディク

推しの日常をずっと見ていたい芸人です。

チュッパチャップスをジェイは5秒でカチ割り、ディックが30分以上掛けて舐め上げるだろうなぁ…って思ったのを書き付けただけ。

ジェイソンのバイクのガソリンを入れる間、手持ち無沙汰だったディックが併設された売店を覗く。
小さな店舗には所狭しと軽食やスナック菓子が並べられていて、子供の頃からの変わらない定番ばかりのラインナップに少しだけ笑ってしまう。
と、レジ横に並んだポップキャンディに目を惹かれる。変わらないデザインに懐かしさを覚えて、思わずレジに差し出した。

＊

「ジェイ、これ」

愛車に給油が終わったのか、スタンドの日陰で地図を睨めっこする恋人に、ディックは買ったばかりのポップキャンディを渡す。

「…随分懐かしいの買ったな」

恋人は素直に受け取って包み紙を無造作に剥がす。
棒が付いたまるいキャンディの謳い文句は【これ1本で20分★甘い世界へご招待】で、随分と舐めきるのに苦労するものだった。

「なんかね、懐かしくなっちゃって。気付いたら買っちゃってた」

ディックも苦笑して棒付きの其れを口に含む。
頬の丸い膨らみに意味もなくジェイソンはドキリとすると、其れを隠すように放ったキャンディを噛み砕いた。

「え！？
　もう！？」

ジェイソンのあまりの早さにディックの瞳が見開く。

「ぁ？邪魔だろ」

棒だけになったキャンディをダストボックスに投げ込んで、彼は赤いヘルメットを取り出す。

「…舐め終わりそうか？」

彼からは小気味良くキャンディの砕ける音がしていた。

「ううん」

ディックは首を振る。

――だって、僕が舐めると30分は掛かるもの。

ディックの答えにジェイソンは小さく舌打ちすると、彼のポップキャンディを取り上げる。
それから、さっき自身のを噛み砕いたようにさっさとキャンディと棒とを分離させた。

「…また、向こうで買ってやるから」

投げた棒が綺麗な弧を描いてダストボックスに落ちる。
先ほど取り出したヘルメットを被ると、彼は恋人に彼用の青と黒のヘルメットを手渡した。

ディックが大きなバイクに跨って、恋人にぴったりと寄り添って腰に手を回す。

「ね、ジェイ」

ぶぉんと音を立てた低音のエンジン音にかき消されないように大きめの声で、彼は話しかける。

「間接キス！」

振り向いた恋人の、視線は冷たくて

『アホか』

声にならない答えが、排気音に混ざって溶けていった。


＊FIN＊