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Serena*Mのあたまのなかみ。
MCU/バキステ

天使(バッキー)が天使(スティーブ)を娶ったってどんな同人誌よ?
とM!YAさんにLINEしたら、
“天使バッキーが神々を誘惑して戦争を起こしてしまい、責任を取って人間界に降り立ち、それを追いかけてスティーブも人間界に降り立ったんだよ”ってネタが返されたので軽率に纏めた話。

会話文だけひたすら続く、雰囲気文章。





広い前庭の芝生の手入れをしながら、ふと今朝の夢を思い出してスティーブは足を止める。

「どうした?」

玄関脇の花壇、パンジーの手入れをしていたバッキーが見上げる。

「…ん、ちょっと夢を思い出して」

芝刈り機の電源を落として、スティーブがバッキーの隣に腰掛ける。
時間はお昼になる少し前で、太陽が高く2人の影は小さかった。

バッキーも小さく土を払うと積み上げた花壇のレンガに座り直した。

「夢?」

傍らのミネラルウォーターで喉を潤して彼は首を傾げる。
そのまま隣のスティーブに差し出すと、彼も素直に受け取って喉を潤した。

「ちょっと面白い夢でね…」

スティーブは語りだす。

「君と僕は“天使”で天界に住んでるんだ」

「…天使?
 最近の影響か?」

――彼が最近天使をモチーフにした絵画を製作しているのを知っていたから、きっとその関連で見た夢なのだろうと思う。夢は脳の記憶の整理なのを承知していたから、不思議と信じてしまった。

「…そうかもね」

ふふっと、スティーブは笑みを零す。
陽光に金髪がキラキラと揺れた。

「それでね、君は凄く悪い天使で」

「悪い?
 悪者だったら天使じゃないだろう」

割り込んだバッキーに、スティーブは肩で小突く。

「もう、ちゃんと続きも聞いて。

バッキーはね、凄く魅力的な天使で…僕らの創造主である神々を誘惑しちゃうんだ。
 神だって言っても“感情”はあるから、君を巡って小競り合いが起きて…
 そして、君は責任を取って人間世界に落とされてしまうんだ。
 僕はそれを必死に追いかけて行ってね…
『お前まで堕天する必要はない!』って君は言うんだけど…」

「…ずっと一緒、か」

「そう。
 僕はそう言って君と人間界に落とされる。
 …って、ただそれだけの夢だったんだけど」

スティーブは呟くと、小さく伸びをする。

「もうすぐお昼だし」

そう立ち上がろうとしたら、バッキーに片腕を掴まれた。

「…俺も、面白い夢なら見たぞ」

――恋人が悪夢にうなされること、それはスティーブもよく知っていたから彼の言葉にスティーブは驚きに目を丸くした。

「夢?
 怖い夢じゃなく?」

尋ねたスティーブに、バッキーは首を縦に振る。

「地獄の夢だが怖くはないな」

彼は続ける。

「俺の舞台は地獄だ。
 真っ赤な焼け野原に、焦げ付く臭い。
 どうやら俺は“死神”らしくてな。人の命を狩る事を命じられていた」

「バッキーが死神かぁ。
 今度のハロウィンにいいかもね?」

笑ったスティーブを、バッキーが制す。

「茶化すなよ。だったらお前にも天使の格好させるぞ??

 …それで、だ。
 今度の人間はコイツだ、と俺は命じられてその人間の命を奪いに赴く。
 …ベッドに寝てるのがな、お前だったんだ、もやし野郎」

「…僕?」

スティーブが自身を指差す。

「 死期が近い人間ってのは死神が見えるらしんだが、みんな畏れ戦くんだ。けれど、お前は違った。
『これで、母さんに楽させてあげられる』って笑うんだ」

「ははっ…あの頃の僕ならそう思ってても可笑しくないかもね。
 熱なんてしょっちゅう出してたし、いつ死んでもおかしくないって思ってたから…」

彼の青い瞳は超人血清を打たれた今でもあの頃のままで、遠い眼差しは当時を思い出しているようだった。

「俺は禁忌を犯してお前に命を与えてしまう。
 …勿論、死してなお、永遠の地獄行きだ。俺の命を与えられたお前は死期が遠くなっても俺の事が見えていて…別れの時、言うんだ」

『ずっと一緒だ』

バッキーの言葉に、スティーブの声が重なる。

「…夢の中でも、俺はお前が大好きだったよ」

彼はスティーブを覗き込む。
視線が合わさると、その近い距離に少しだけ恥ずかしくなってスティーブは顔をくしゃりとさせた。

「僕だって」

――なんせ、堕天した君を追いかけたんだから。

そう心の内に付け加える。

「じゃぁ、僕たち両想いってことだね」

嬉しそうに頭を寄せたスティーブの肩をぐっと引き寄せる。

「…きっと前世で引き離されたから、今こうして“一緒”にいるんだな」

耳元で囁くと、ぴくんとスティーブの身体が跳ねる。
少しだけ体温が高く感じたのは気温が高くなったからではないだろう。

欲の色を秘めたバッキーの視線と、熱を帯びたスティーブの視線が重なる。
ゆっくりと唇が寄った、その刹那――

「おーーい、じーさんら!
 昼メシが出来たぞ~~」

開け放ったリビングの窓からサムの威勢の良い声が聴こえる。
慌てて身体を離すと、スティーブが叫び返した。

「ありがとう、サム!
 片付けたら行くよ!!」

急ぎ足で放りっぱなしの芝刈り機に駆け寄って、邪魔にならない庭の隅へと其れを追いやる。
バッキーも途中だった植え替え用の園芸用シャベルを花壇の端に寄せると大きく伸びをして立ち上がった。

すっかり頭上に来た太陽が足元にだけ影を落とす。

其れは、本当に唯の夢だったのか
はたまた前世の記憶だったのか。

ただ確実なのは、次の生でもスティーブと恋に落ちるだろうと言う本能――

少しだけ伸びた無精髭を、優しい春の風が撫でていった。


*FIN*

サムのお昼ご飯何だったのかな~
チャーハンかな~~~(休みのお昼のイメージ)

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