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Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ジェイディク

『「秘密基地みたい!」ってロフト付のアパートを借りたディックちゃんがロフトを寝室として使うんだけど、しょっちゅうジェイソンが顔を出すし、「昇るのが面倒だ」って理由で1階でしか過ごさない(ロフトで寝ない)から結局リビングにでっかいベッド買ったって話が欲しい』
…と呟いたのを具現化しました。

ところで海外にロフト付の物件ってあるんですかね…?
俺アースなので気にしたら負けっ!!

いつでも幻覚はガンギマリです!!!!!!!!!




ディックが新しいセーフハウスを用意した。
ゴッサムからは少し距離のある、山沿いの町。斜面に広がる町からは遠くゴッサムの湾が見えて、山の中腹に建てられた風力発電が真新しい産業の、どこにでもあるような、少し懐かしい雰囲気のある町だった。
――ついでに言うと、このアパートの斜向かいのアパートもジェイソンのセーフハウスの一つだ。恋人同士なのだから、共同で使うセーフハウスにしても悪く無さそうだったが、そこは二人とも口にはしなかった。

「ねぇ、どう?
 このロフト」

引っ越し業者の替わりに弟でもある恋人を呼び出してディックは高い天井近くから顔を覗かせる。

「はいはい、良いと思うよ」

くるりと丸く梱包されたマットレスを担いでジェイソンは返す。
華奢な梯子に足を掛けながらマットレスを差し出すと、ディックはそれを掴んで引き上げた。

「なんかさ、秘密基地みたいじゃない?」

運んだマットレスを開封しながらディックは続ける。
顔だけをロフトへ覗かせたジェイソンに「手伝ってよ?」そう促す。

「この狭い場所に男二人が居てみろ。暑苦しいわ」

ジェイソンは首を竦めるとそのまま下へ降りる。
それから「上掛け持ってくるぞ」ぶっきらぼうな声が聞こえた。

「ん~…でも。
多分、ここでジェイとエッチすると思うんだけどなぁ」

ディックは唇を尖らせると、買ったばかりの真っ青なシーツを広げたのだった。

Day.1

――結局のところ、新しいセーフハウスのロフトはジェイソンも気に入ったようで、

「ねぇ、この窓からゴッサムのタワーが見えるよ」

なんて呼び寄せたらそのまま流れるように身体を重ねてしまった。
狭い空間でいつも以上に密着して運んだ情事は満足な結果で、

「ね、いいでしょ」

絡めた足を擦り合わせたディックに

「策士め」

ジェイソンがニヤリと笑って、欲に任せてもう一度掻き抱いたのだった。

Day.5

ここは“セーフハウス”なので毎日必ず帰って来る場所じゃない。
分かっていても、新しい秘密基地はディックのお気に入りで、どんなに疲れていてもこの場所に戻りたいと思うのだった。

窓からはジェイソンの住む部屋が見える。
カーテンから覗くと、相変わらずその場所は真っ暗で

「今日も帰ってないかぁ」

ディックはつまらなさそうに呟いた。

Day.11

ブルードヘイブンで悪漢を捕まえて帰った夜中過ぎ、初めてディックはロフトへの梯子を恨めしそうに見つめた。
出来るなら、このままソファに突っ伏して眠りたい。けれど身体は汗だくだったしお腹も空いていた。

「……取り合えず、シャワー浴びよ」

ずっしりと重い肉体を起こしてディックは独りごちる。
――窓の外のジェイソンの部屋は、相変わらず真っ暗だった。

Day.12

昨晩、久しぶりに恋人の声を聴いたディックは少しだけ機嫌が良かった。
この町で遅くまで開いているダイナーをジェイソンから教えて貰ったのだ。今日は久しぶりの休みの日だし、部屋の掃除をして、それからそのダイナーに何かテイクアウトしに行こう。
大きく伸びをして起き上がったディックだったが、勢いよく起きた拍子に思い切り天井に頭をぶつけて、暫く丸まったまま動かなかった。

Day.16

一つの部屋の掃除をしたら、他のセーフハウスの様子も気になって、暫くディックはこの拠点地を離れて幾つかのハウスの掃除と点検をして過ごしていた。

「お、とうとうこっちのハウスに来たか」

ゴッサムの街のセーフハウスに顔を出したジェイソンがベッドメーキングをするディックをからかう。
――このセーフハウスが一番長く使っていたし、便利なガジェットやディックの私物も一番置いてある場所だった。

「偶然ですぅ~」

ディックは返してつんと顔を背ける。

「久しぶりに一緒に飯でも、って思ったけど邪魔したみたいだな?」

ジャケットを羽織り直したジェイソンにディックは慌てて言葉を重ねる。

「えーーー待って待って!
 それはヤダぁ」

乱暴にシーツをたくし込んだディックに、笑ってジェイソンは訂正した。

「冗談だよ、ディッキー。
 さっさと片付けて食いに行こうぜ」

愛車のキーを取り出して見せると、ディックは大急ぎでベッドを整えて、そして久しぶりのデートを楽しんだのだった。

Day.19

その日、初めてディックはロフトの階段を踏み外した。

「う~…ん」

くらくら回る天井にディックは独り、唇を尖らせる。
シーツを取り換えるだけなのに、面倒だよなぁ。

――それは、初めて彼がこの【秘密基地】に抱いた感情だった。

Day.23

残り物の野菜を煮込んだスープを作っている間、ふっと外を覗くとジェイソンのセーフハウスの明かりが灯っていて、なんだか嬉しくなって『一緒にご飯食べない?』そうショートメッセージを打った。
ディックのメッセージを見たのか、珍しく直ぐにジェイソンからの電話が鳴る。

「スープとクラッカーはあるけど、他に欲しい物があったら買ってきて」

『この距離で言うか普通』

「…癖みたいな?」

『残念だけど今お前の部屋の前だ。
 さっさとドアを開けてくれ』

同時にドアベルが鳴って、「ちょっと待ってて」ハンズフリーのままディックは扉を開ける。

「近くっていいね」

「…別に、いつもと変わらないだろ」

――その変わらない毎日が良いんじゃない。

挨拶の代わりに、短いキスを一つして。
のんびりと恋人との逢瀬を楽しんだのだった。

Day.27

――まだこのロフトに住み始めて間もない頃、ディックも“やった”気がする。

「!!!!!!!!!!!!!」

思い切り天井に頭を打ち付けたジェイソンが、マットレスの上で頭を抱えている。

「…それね、僕もやった」

労わるように恋人の頭を撫でてディックは告げる。

「……梯子から落ちるのも」

恋人の言葉に、ジェイソンは涙目で振り向いた。

「なぁ、ディッキー。
 この危険物件はさっさと引き払おうぜ」

「…ジェイ、まだ1回だけじゃない。
 そのうち慣れるよ」

「……慣れたかねぇよ」

鼻水を啜った恋人に、ディックは苦笑して「考えとく」そう言った。

Day.???

「どう、新しいベッドの心地は」

部屋の広さには合わない、大きすぎるサイズのベットに転がったジェイソンにディックは尋ねる。

「俺が金出したんだ、最高に決まってるだろ」

あっちに寝転がったり、こっちに寝返ったりしてジェイソンは家主に返す。
高い天井は開放感があって、吊られたライトの趣味も良い。この部屋だけ見たら、安アパートの一室だなんて誰も思わないだろう。

「こんな事するんだったら、もっと広いセーフハウスを協同で使った方が良くない?」

運んだベッドの梱包資材を片付けながらディックが言うと、ジェイソンが俯せになってディックを見つめる。

「俺もお前も、毎日この町のハウスを使うワケじゃないだろ。
 それに、お前がこの町に越してきてからあっちのハウスで寝た記憶もないし。合理的にしたって言ってくれ」

「…まぁ、そうだけど」

ディックは言葉を詰まらせる。

――この町にディックが越してきて三ヶ月。
初めこそ『秘密基地みたい!』なんて喜んだロフトだったが、掃除は面倒だし寝ぼけて頭はぶつけるし、階段は踏み外すしで(家の中でリラックスしているからだろうか、運動神経の良さは全く発揮されなかった)思ったほど楽しい代物ではなかった。
それは時々夜を過ごすジェイソンも一緒だったらしい。
とうとう「新しいベッドを置くぞ!!!!!!!!」と、こうしてクイーンサイズのベッドを運び込まれてしまったのだ。

「でもさ、僕の生活が出来ないじゃん?」

ベッドを運ぶにあたり、置いたソファと簡素なテーブルは処分してしまったし、ロフトは物置になってしまったから食事を摂る場所もない。
在るのは、大きすぎるベッドにシャワールーム、それに小さなキッチンだけ。身支度を整えて出掛けることは出来るけど、ゆっくりと寛いだ時間を過ごすには難しい部屋だった。

「…それは、お前」

ジェイソンは言うと、ジーンズのポケットを探る。

「こっちで飯は食えば良いだろ」

シンプルなシリンダー錠を取り出して続ける。

「…?
 なにそれ」

「俺のハウスの鍵」

「それって」

――まるで同棲するみたいじゃない?

顔を綻ばせた恋人を察したのかジェイソンは顔を背ける。

「そーゆー意味じゃねぇ」

俺も勝手に使うから、鍵作っておけよ。
ぶつくさと続けると「うん♡」上機嫌のディックが上から飛び乗ってきた。

大人二人が寝転んでも、まだ余るベッドの広さに

「あーぁ、育ちの良さがバレちまうな」

「やっぱりベッドは広いのが安心出来るよね」

なんて実家での暮らしを皮肉って、そしてまた笑い声を漏らす。

「なぁ、ディック」

「ん?」

「今度はちゃんと広い部屋借りようぜ。
 セーフハウスじゃなくて、二人で暮らせる部屋」

高い天井を見つめたまま呟いた恋人の言葉に、ディックの目が点になる。

「…え、それって」

驚いて恋人を振り向くと、優しい翡翠色の瞳がしっかりと彼を見つめていた。

「…一緒に使うセーフハウスがあったって悪くないだろ、駒鳥ちゃん?」

*おしまい*

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