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Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/蝙蝠一家、駒鳥兄弟

詳しい説明はさておき、ご都合主義な二次創作ヴィランさんの力でディックが小さくなっちゃった話。
※フライング・グレイソンズだった頃のディックまで意識も背丈も後退しているよ!
 NWの記憶はないよ!!

なんでも許せる方は楽しんでね!!!!(脱兎)




CASE.1 ダミアンの場合

兄弟の“末っ子”だったダミアンでしたが、突然現れた小さな弟に彼の兄としての自覚が芽生えたのは確かでした。
いつもは兄のジェイソンと取り合うアルフレッドのクッキーも半分に割って弟と半分こしますし、なんならミルクだって注いでやります。

食器の用意をしようと不安定な椅子に乗って高い棚に手を伸ばしたディックを「危ないだろう!」そう叱ったのもダミアンでした。

いつもディックが居る場所にはダミアンが居て、2人は本当の兄弟のようで(兄弟ではあるのですが)とても微笑ましい光景でした。

ある日、ダミアンは小さな携帯電話をディックに渡します。

「ダミお兄ちゃん、これはなぁに?」

大人の時の癖と変わらない、小首を傾げる動作をしてディックは尋ねます。
長いネックストラップを彼の首に掛けて、ダミアンは説明しました。

「これはな、キッズケータイ」

目の前のソファでタブレットを弄っていたティムをじっと見つめます。
弟の視線に兄は居心地悪そうにタブレットに視線を落としました。

「いいか、ディック」

ダミアンはゆっくりと続けます。

「あーゆー変な兄貴が近付いてきたら、こうしてココを引っ張るんだ」

小さな青い携帯電話に伸びたリングストラップをダミアンが引き抜くと

\BEEP!BEEP!/

緊急を報せる警告音が響き、家族の持つスマートフォンも一斉に鳴りました。

「わぁ!」

思わぬ音量にディックが小さな手で耳を覆います。
ダミアンは素早く引き抜いたストラップを携帯電話に戻すと、今度は自分のスマートフォンをディックに見せました。

「…こうするとお前の情報も俺らに届く」

――確かに、画面にはキッズケータイ危険を報せたこと、それにウェイン邸の位置情報が記されていました。

「だからな、ティムみたいな不審人物が近付いてきたらちゃんと引っ張るんだぞ」

またしてもティムを睨みつけたダミアンに、とうとうティムも反論しました。

「ちょっとちょっと!
 さっきから聞いてたらさ、なんで僕が不審人物なのさ!
 僕はディックのお兄ちゃんだよ?」

そこまで言って優しくディックに微笑みます。

「ね~ディック?」

いつもは穏やかなティムの剣幕に驚いたのでしょう、ディックは大きな目をぱちくりとして、ぎゅっとダミアンのパーカーの裾を掴んだのでした。

「ほら、怖がってるだろ。やめろよ変態」

相変わらず辛辣な弟からの言葉に、ティムも喧嘩上等とばかりに強く返します。
ディックの顔が曇り、どうしたものかときょろきょろ辺りを見回したところでアルフレッドがお菓子を乗せたトレイを置きました。

「はいはい、喧嘩はそこまで。
 ディック坊ちゃまも困っておいででしょう。
 今日は泣かなくて偉かったですね」

褒められたディックは嬉しそうにアルフレッドの足元に抱きつき、美味しいマシュマロを一つ口に入れてもらったのでした。

「ぼくね、アルフレッドのおやつだーいすき!」

頬をぷくぷくとさせた幼いディックに、思わずアルフレッドも微笑むのでした。


CASE.2 ブルースの場合

「ねぇ、ぼくのおとうさんは?」

まだディックが“今の”姿になってすぐの頃。
大きなベッドで一人寝ていたディックの泣き声にブルースが部屋を訪れたのでした。

「…ディック、寝れないのか?」

ずっと昔、大きかったディックがまだ小さかった頃、父を想って泣いていたのを知っていたブルースは胸が痛みました。
あの時のディックはあの惨事を目の当たりにし、両親の“死”を見届けましたが今のディックはその記憶すら持たず、ただ幸せな家族の思い出だけを持っているのでした。

「君のお父さんは少し遠い国へ出かけているんだ。
 だから君は私たちの家に預けられたんだよ」

小さなディックを膝に抱いて、ブルースは優しく続けます。
唯でさえ現代の生活に面食らっているディックなのです、そんな彼に現実を突きつけることはブルースには出来ませんでしたし、その思いは家族も一緒でした。

「おとうさん……」

ディックが鼻を鳴らしたので、ブルースはゆっくりと頭を撫でます。

「起きたら、グレイソンズの特集番組を見ようか。
 もしかしたらお父さんたちの国のお話も聞けるかもしれないな」

「ほんとう?」

嬉しそうに見上げたディックに、ブルースの胸の奥がちくりとしましたが、それを隠すように微笑みます。

「あぁ、約束だ」

ディックは嬉しそうに体を揺すって、ブルースに抱きつきました。

「ブルースおじさん、ありがとう。ぼく、おじさんのこともすき」

「私も君の事が大好きだよ、ディック」

ブルースもぎゅっとディックを抱きしめたのでした。


CASE.3 ジェイソンの場合

あまり子供が好きそうに見えないジェイソンでしたが、ディックは妙にジェソンの事が気に入っているようで、彼が屋敷に居ると隣でニコニコと微笑んでいるのでした。

「ジェイお兄ちゃん、あそぼ」

「やだよ」

テレビのザッピングでリモコンをカチャカチャと弄るジェイソンにディックは話しかけます。
子供にすら冷たい返しの彼でしたが、一緒に居るダミアンですら彼の返答に異は唱えませんでした。
それには理由があったからです。

遡るのはほんの5日前ほど。

暖かなウェイン邸の大広間で静かにお絵描きをしていたディックでしたが(ダミアンは学校の宿題を自室で片付けていました)、その様子が変だといち早く気付いたのがジェイソンでした。

「…どうした、ディック。顔が赤いぞ」

「…??」

潤んだ瞳の顔を上げたディックの、狭い額に手を遣って普段より熱いその体温に驚きます。彼は弟を抱きかかえると乱暴にベッドに寝かせ、素早く執事へと報せたのでした。

「アルフレッド、ディックに熱がある。
 医者を呼んでやってくれ」

あまり物事を荒立てないジェイソンが慌てていたとアルフレッドは振り返ります。
彼がディックの部屋に行くと先に呼ばれたのか家長でもあるブルースが心配そうに彼を見つめ、そっと頭を撫でているのでした。

「あぁ、アルフレッド…さっきジェイソンが……」

「えぇ、私の所にも慌てて来られました。
 先生は呼んであります」

冷たい氷水に浸したタオルを小さな頭に乗せると気持ち良さそうにディックの顔が綻びます。

「…よく気付いたな、あの子は」

呟いたブルースに、アルフレッドは水銀の体温計を振りながら答えます。
ケイブには最新式の医療機器を備えたウェイン邸ではありましたが、幼子の風邪には対応していないようで、妙に年期の入った道具が揃っていました。

「ジェイソン坊ちゃまは誰よりも私たちのことを見てらっしゃいますよ」

「……で、そのジェイソンは…?」

顔を上げたブルースに、アルフレッドは頷きます。

「必要なものを買ってくる、と既に」

大きな窓を見遣ると、遠く彼の乗ったバイクのエンジン音が聴こえてきました。

屋敷に戻った彼が沢山抱えていたのは病気に効くような苦い薬や野菜などではなく、ディックがお気に入りのアニメの絵本や、大きなバニラのアイスクリーム、それに1人で寝るのが寂しくないようにと大きなテディベアなんかを買ってきたのでした。
不機嫌な顔からは想像できない、可愛らしい贈り物の数々に家族が優しい気持ちになったのは言うまでもありません。

――そんなぶっきらぼうな兄・ジェイソンの優しさをみんなが知っていますから、誰もジェイソンがディックを冷たくあしらっても何も思わず、ディックもジェイソンを優しいお兄ちゃんだと慕うのでした。


CASE.4 ティムの場合

「は~…
僕はこんなにディックの事が大好きなのに、どうして僕にはあんまり寄って来ないんだろ…」

ダイニングルームで夕食の後片付けを手伝うティムがアルフレッドに零します。

「やっぱり一緒にお風呂入ろう~って毎日追いかけるのがダメなのかな。
 それとも風呂上りにごしごし拭くのが痛かった?…でもこの前みたいに風邪引いたら困っちゃうしさ…」

ぶつぶつと続けるティムに、アルフレッドは片付ける手を止めます。

「…?
そんなことはないと思いますが」

「そう?
 今だってほら、みんなで鬼ごっこじゃん? 僕なんて誘われてすらいないよ…」

「それはきっと坊ちゃまがいたら鬼ごっこもすぐ終わってしまうからでしょう。
 坊ちゃまは“頭脳派”ですから」

首を擡げたティムに、カラカラとアルフレッドは笑います。

「ディック坊ちゃまが一緒に動画を見る相手は誰ですか?
 描きあがった塗り絵を一番に持ってくるのは?
 『嫌!』と駆け回りながら毎日素直にお風呂に入ってくれるのは?
 …それに、ほら。
 隣でご飯を食べてくれる人は?」

銀のフォークを集めていたティムがはっと顔を上げました。
――小さなアニメのキャラクターが描かれたフォークの隣にあるのは、自分の使った銀のフォークでした。

「…全部、僕…?」

「そうです」

流れるような動作で食器をワゴンに乗せて片付けるアルフレッドに、邪魔をしないようにティムは集めたフォークをワゴンに忍ばせます。

「ディック坊ちゃまは幼いながらに、ちゃんと分かっているのですよ。
 …ほら、きっとそろそろティム坊ちゃまに助けを求めに参りますよ」

鬼ごっことしていた兄弟の遊びは、いつの間にかクッション投げに変わっていたようでした。体躯で負けるディックには辛い遊びです。
程なくして、とてとてと幼い足取りの兄がティムの元へ駆け寄ってきました。

「ティムお兄ちゃん!
 みんなぼくのことわらうの」

ぱっちりした瞳に涙を貯めるディックをティムは抱き上げます。

「大丈夫だよ、ディック。
 力だけが全てじゃないってアイツらに教えてやろうな?」

「うん」

力強く頷いたティムの首にぎゅっとディックは抱き付きます。彼の優しい、甘い香りを吸い込んでティムは駆け出しました。

白熱したクッション戦争に、ウェイン邸の大切なアンティークの花瓶が割れたのはまた別のお話です。


CASE.5 アルフレッドの場合

ウェイン邸の皆が出払った午前中、洗濯物を干すアルフレッドをディックはお手伝いをしていました。

アルフレッドが大きなシーツを干せば隣で小さなタオルを。
主人の靴下を干せばぬいぐるみのケープを。

「ぼくねぇ、じょうずでしょう?」

自慢げに背中を逸らすディックを、アルフレッドは目を細めて褒めました。

「はい、ディック坊ちゃまほどお洗濯を上手に干す方は存じ上げませんね」

「ほんとう?」

執事の言葉にディックは破顔します。

「いつもおてつだいしてたからね!」

嬉しそうな声に、アルフレッドもにっこりと口角を上げます。

「ではもっと上手に干せるようになって、お家の皆さんをびっくりさせましょうね」

続いた言葉に、ディックは頷きます。

「あ、あとね!」

彼はアルフレッドを見上げました。

「おいしいパンケーキのつくりかたもおしえてほしいの」

「パンケーキの?」

ダミアンの学校用のシャツをぴしっと干したアルフレッドが首を傾げます。

「アルフレッドのパンケーキはとってもおいしいから、ぼく、サーカスのみんなにもつくってあげたいんだ」

キラキラと瞳を輝かせたディックに、アルフレッドは優しく頷いて洗濯かごを抱えました。

「では、今日のお昼はパンケーキにしましょうか。
 もちろん、坊ちゃまも手伝ってくれますよね?」

茶目っ気たっぷりにウインクしたアルフレッドに、ディックは何度も頷きます。

「アルフレッド、だいすき!!」

2人と洗濯物の合間を、爽やかな風が抜けて行きました。


――まだ彼の人生に影を落とす前の記憶。

このまま穏やかに生きて欲しいを願うのは悪いことでしょうか。

執事の悩みが、青空に溶けてゆくのでした。


*おしまい*

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