Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ジェイディク
珍しく優しいジェイソン。恋人らしいジェイディク(と、言い張る)
「黒シャドーってめちゃくちやエロいと思ったのでお兄ちゃんには塗って貰いたいし外したのを見て「おつかれ」って瞼をジェイソンに拭って欲しいです!!!!」
って呟きが元なんですけど、どうしてこうなった…?
珍しく優しいジェイソン。恋人らしいジェイディク(と、言い張る)
「黒シャドーってめちゃくちやエロいと思ったのでお兄ちゃんには塗って貰いたいし外したのを見て「おつかれ」って瞼をジェイソンに拭って欲しいです!!!!」
って呟きが元なんですけど、どうしてこうなった…?
「ん~…今日も疲れた」
首に手のひらを置いて小さく首を鳴らした雑居ビルの屋上。
少しだけ塩気を含んだ風が頬を撫でて、ディックは小さく息を吐く。
ゴッサムのような派手なネオンはないけれど、小さな港があるから其処を拠点とした犯罪の多い、小さな町――ブルードヘイブン。
それがディックの護る街だ。
彼は今日も師と似た黒のスーツで夜の町を舞う。
真っ黒なスーツはまだ若いその身体にぴったりと張り付き、蛍光管の明りを反射して鈍く光っていた。
「……もう、今日はいいよね」
月が南中に来た頃、やっと彼は“ナイトウィング”から解放される。
慣れた手付きでグラップルガンを扱い、軽やかにその身をビルの隙間に這わせる。
重力を感じさせないその動きはかつてのフライング・グレイソンズの軽業師の姿で、けれどこのグレイソンズの興業を知るものは誰も居なかった。
ディックは居とするアパートに着くと、なんの疑いもせずに裏手の小さな窓から部屋に戻る。
流石に玄関から“ナイトウィング”の姿で帰るのは滑稽だったし、何よりも父と同じように秘密裏として活動している身だ。
さらりとしたこなしで自室へと侵入しているが、周囲の目だけは気をつけていた。
くるりと宙返りして音もなくフローリングの床に降り立ったディックは、リビングのテレビが光っているのに気付く。
そっと背中のオリシを確認してぐっと息を呑み込むと、ソファから手のひらが上がった。
「よう」
――低く短い声。
その手はそのままソファに回され、主が此方を振り向く。
「お疲れ」
ディックと同じような黒い髪にメッシュの白髪が光る。
声の主は彼の弟であるジェイソン・トッドで、今は恋人も兼ねた存在だった。
「――ジェイ」
ぴりりと緊張した空気を解いてディックは一息つく。
恋人の部屋に訪れることは数あれど、こうして恋人が自分の部屋に尋ねてくる事は滅多に無かったから、
シンクに置きっぱなしのコーヒーのマグや、半分開けたまま無造作に置いてあるシリアルの箱、それに乾燥機に入れたままの下着なんかを思い出して少しだけ恥ずかしくなった。
「言ってくれればいいのに」
――片付けたから。
心の内に彼は続ける。
ジェイソンの前には、勝手に冷蔵庫を開けたのだろう、買いおきのジュースやピザが並べられていてちょっとしたパーティーが催された後のようで、
「悪いな、勝手に」
“悪い”と続けたのは言葉だけで、本心はどうやら“悪い”などと微塵にも思っていないようだった。
「でも、どうしたの?」
ソファの横、小さなキッチンのあるダイニングでスーツのセキュリティを外す。グローブやらブーツを脱ぎ、装備を解き始めたディックをジェイソンは何も言わずに見つめていた。
「……もう、何か言ってよ?」
ケーブルチャンネルのテレビドラマを見ようともせず、ただ黙って自身を見つめる恋人にディックは不満の声をあげる。
愛用のドミノマスクをテーブルに乗せて、スーツのジッパーを下げたところでやっとジェイソンは立ち上がった。
ブーツを脱いでありのままの身長になったディックに、底のしっかりとしたエンジニアブーツを履いたジェイソンの身長はいつもより高い。思わぬ身長差にディックは普段よりも大きく首を傾けた。
「ジェイ…?」
恋人の翡翠の瞳にじっと見つめられて、きょとんと動きを止めたディックに、ジェイソンはぷっと吹き出す。
「早く顔を洗って来いよ。
なんだかマスクのないそのシャドウの顔はパンダみてぇだ」
「…えぇっ酷い!
それって僕の部屋に不法侵入した挙句に言う言葉?」
まるで子供のように頬を膨らませたディックに、ジェイソンは「悪い」とまた笑った。
「良い男が台無し、って言いたかったんだよ」
そう続けて、ディックの瞼の黒いシャドウを親指で擦る。
「…ん…」
ぎゅっと瞳を押されてディックの肩が竦む。
「…ほら」
瞳を開けると、満足そうなジェイソンの視線とぶつかった。
「良い男になった」
ちょっとだけ黒のシャドウが薄く伸びただけだったが、ジェイソンは満足したようで、
彼は相変わらず低い声で続けるとディックの身体を引き寄せる。
そのまま身体を曲げて唇を押し付けると、恋人は驚いたように瞳を瞬かせたがすぐにジェイソンの後頭部に腕を回した。
今日の恋人はちょっとおかしい。
自分の部屋に来ることだって珍しいし、こうして僕を褒めることだって滅多にない。
それから、こうやって自ら求めてくることも。
柔らかい唇の感触を惜しむように何度も啄ばんでから離すと、やっとディックはジェイソンに尋ねた。
「…ジェイ、何かあったの?」
――彼が何か不安定になる出来事でもあったのだろうか。
パトロール中に大きな事件の無線は傍受しなかったけれど、それはこの町だけの話だ。
彼の住む町やゴッサムで何かあったのかもしれない――
恋人の真面目な視線にディックは息を飲む。
けれど答えは至極単純明快で、そして2人からは余りにかけ離れた言葉だった。
「……いや、たまには“恋人”らしい事をしようと思ってな」
「…えっ…?」
ジェイソンの答えに、ディックが面食らう。
「おつかれ、ディッキーバード」
彼の反応に満足したのだろうか、年相応の少年のような微笑を湛えてジェイソンが呟く。
視界の端に映る窓の先には、遠く月光を反射する水面が見えて――あぁ、今日は満月だったっけ。ディックは気付いたのだった。
『満月は人を狂わせる』
そんな話を聞いたのはいつだっただろうか。
――狂っている?
狂っているのはこの世界そのものなのだ、だったらその狂宴に乗ってやればいい。
繰り返すのは平穏な毎日なんかじゃない、狂った日々なのだ。
「……ジェイの顔を見たら、今日の疲れなんて吹っ飛んじゃったよ?」
舌なめずりして見上げた魔性に、欲の獣が喰らいついた――
*END*
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