Serena*Mのあたまのなかみ。
クラークってロイスの結婚式で号泣するよね、ってそれだけの話。
ナチュラルにロイスの彼氏とか捏造してるので苦手な方は回れ右。
ナチュラルにロイスの彼氏とか捏造してるので苦手な方は回れ右。
デイリープラネット社の少しだけ古ぼけたコーヒーメーカーは相変わらず機嫌が悪いようで、ロイスがカップを片手にトントンと叩いたり電源を入れなおしたり頑張ってみたもののうんともすんとも言わず、動かないままだった。
「もうっ!」
そう言って諦めたときに現れたのが同僚であるクラーク・ケントで
「Hi、ロイス。機嫌が悪いようだけど?」
彼は冷蔵庫の中からオレンジジュースを取り出して自前のカップに注ぐ。何年か前に取引先から貰ったカップは随分とその塗装が剥がれてしまっていたが、しっかりした大きさで大柄な彼には使いやすかったので大切に使っていた一品だった。
「機嫌が悪いのはこのコーヒーメーカー。
編集長に新しいのを買ってってお願いしてるんだけど全然聞いてくれないのよ」
彼女はこれが最後と言わんばかりにもう一度電源ボタンを押す。
今まで無反応だった其れは、今回初めて電源を知らせるライトを点滅させた。
「…言う事、聞いたみたいだね」
休憩室に置かれた簡素なプラスチックの椅子にクラークが腰掛ける。
編集者の気分転換にと設けられたこのスペースには誰かの読み終わった本だったり、デイリープラネット社の雑誌だったりが乱雑に置かれ、ちょっとした甘いお菓子と飲み物を提供している場所だった。
彼はテーブルの上のチョコレート菓子の包みを開けて口に放り込む。子供の頃に食べた、懐かしいトフィーの味がした。
「そうね、やっとコーヒーが飲めそう」
抽出ボタンを押してロイスが振り返る。
「それ、ひとつ頂戴」
後ろのコーヒーメーカーからは物凄い轟音とともに濃いブラウンのコーヒーが抽出されている。
指差した彼女の指に見慣れない銀色のリングが輝いている事にクラークは気付いた。
彼は甘いトフィーを手渡しながらロイスに尋ねる。
「…ロイス、それって」
彼女は小さく包み紙を開けてトフィーを口に含むと、少しだけはにかんで笑った。
「この前のディナーでね、彼にプロポーズされたの」
ロイスは愛おしそうに薬指に嵌められた華奢なリングを撫でる。
彼女の彼…チャーリーはクラークもよく知る人物で、デイリープラネット社に出入りするフリーのカメラマンだった。
彼女とは1回り程年下ではあるが、その若さが逆に彼女の仕事の理解者でもあり、そして最良のパートナーでもある。クラークも何度かチャーリーと食事をした事があるが、人懐っこい笑顔の好青年で、素直にロイスと彼の仲を応援したものだ。
「おめでとう、ロイス!」
クラークは立ち上がり、ぎゅっと頼もしい同僚にハグをする。
まだ彼がこの社で働き始めたばかりの頃、彼女は良き先輩でありクラークのパートナーでもあった。ちょっとした意見の相違からパートナーとしての関係は解消してしまったが、距離を置いたほうが2人の関係は円滑で、クラークの恋の悩みや、ロイスの恋愛相談など性別を超えて2人は友情を育んでいたのだった。
「ありがとう、クラーク。
貴方なら一番に気付いてくれると思ったし、最初に嬉しい報告をしたかったの」
身長の高いクラークに伸び上がるようにして抱き付いたロイスに、彼は親愛のキスを頬に捧げる。
「君の幸せな門出に立ち会えるなんて嬉しいよ」
大きな弟からの祝福に、ロイスはニッコリ笑って続けた。
「ありがとう。
式には貴方と、そのパートナーと是非出席してね」
「いいのかい?」
驚いて目を瞬かせたクラークに、ロイスは余裕の表情を浮かべる。
「当たり前よ。
私も彼もウェインさんにはとってもお世話になってるもの。それに、彼も是非来て欲しいって。
…まぁ…いつも出席してるような豪華なセレモニーではないと思うけど…」
「そんなことないよ!
僕もブルースも喜んで出席させて貰うよ!!」
「ふふふ、ありがとうクラーク。
…ただ、そろそろその手を離してくれないかしら。息が止まりそう…」
「!!!!
あぁっ、ごめんね、ごめんねロイス!」
急いで手を離したクラークに、ロイスは楽しそうに笑った。
「さて、午後の仕事も頑張りますか」
*
「…ってね、君の予定も聞かずにOKしちゃったんだけど」
バスルームのお湯を抜きながらクラークが振り返ると、ブルースは鏡の前で良い香りのボディフレグランスをバスローブに忍ばせているところだった。
「二つ返事でOKだとも。
私もロイスとチャーリーの事は応援していたからね」
彼はふわりと仄かにグレープフルーツの香りのするバスローブを羽織る。
前髪に滴った水滴をそっと指で撫で付けると、いつもよりも随分と若く見える“ブルース・ウェイン”の姿だった。
「きっと君も祝福してくれると思った!」
日中、ロイスにハグしたようにクラークはブルースをぎゅっと抱きしめる。
そのまま軽く口付けるとブルースの付けたフレグランスがクラークの鼻腔を擽った。
「…クラーク、もう、これ以上は…」
クラークがバスローブの上から力強く臀部を揉みしだいてきたので、顔を背けたブルースに彼は首を傾げる。
「ベッドじゃなきゃ、ダメ?」
――ほんの10分程前まで、このバスルームで情事に耽っていたと言うのにクラークは“まだ”足りないらしい。
「もう充分だろう…」
「だって久しぶりに会えたんだもの。もっともっと君を感じたいよ…」
クラークは俯いたブルースにもう一度接吻を捧げると、そのまま洗面台へ彼を押し付けた。
「…そんな風に綺麗に装うからさ、いいかな?って思っちゃうじゃない」
彼は真っ白なバスローブを肌蹴させると、そのまま胸の飾りに喰らい付いた。
水蒸気の多いバスルームに、艶やかなブルースの声が響く。
曇った洗面所の鏡に、2人の影が重なり合うのがぼんやりと映し出されていた。
*
ロイスとチャーリーの式はメトロポリスの1つ星を獲得した個人の経営するレストランで、彼女と彼を祝う暖かな人たちに囲まれた優しいセレモニーとなった。
新郎であるチャーリーの見立てだと言うロイスのウェディングドレスはシンプルなデザインであるが故に彼女の凛とした美しさを良く引き立てていて、彼女を良く知るフラワーショップの店主が作ったブーケもとても良く映えていた。
式の最中、ずっと泣き通しだったクラークは式の終盤、彼女が両親に感謝の言葉を述べるときにはいよいよ感情が決壊してもうひたすら「ロイス、綺麗だよ」「良かったねロイス」「幸せになるんだよ」しか言わない人物となっていた。
テーブルを回ってきた新郎と新婦に、鼻を真っ赤にしながらクラークは「おめでとう」の言葉を伝える。
隣でブルースが新郎へ祝辞の言葉を述べ、そして新婦とは親愛の抱擁を交わしていた。
「うっうっ、おめでとうロイスとっても綺麗だよ…ロイス本当に綺麗だ…うん、おめでとう…」
クラークは何度も言い。ぎゅっとロイスの手を握る。
ブルースは繊細な彼女の手が折れてしまわないかと内心冷や汗をかいたが、そこは付き合いの長いロイスの方が上手だった。
「ありがとうクラーク。
今度は貴方たちの挙式に私たちを招いてね」
彼女は優しくクラークの手を振りほどき、夫であるチャーリーの持ったブーケから可愛らしい薔薇を一輪そっと引き抜く。
クラークのスーツのポケットチーフに挿して、もう一輪をブーケから引き抜く。
二本目の薔薇は慣れた手つきで茎を折ると隣のブルースの耳へと掛けた。
「…私の友達、結婚してる子が多いから。
ブーケの代わりに受け取ってね」
幸せそうな、とびっきりのウインクでロイスが言うと彼女の行動にブルースは驚いたまま動けず、そしてクラークはもっと大泣きしたのだった。
*
あまりお酒に呑まれない筈のクラークが顔を紅くしながらずっとブルースの隣で「今日の式は良かった」「ロイスが綺麗だった」「彼女が幸せになってくれて僕も嬉しい」…同じことばかり繰り返している。
傍らのブルースは少しだけ困ったような、けれど頼られて嬉しいようなそんな表情でずっとクラークの肩を抱いてそっと撫でていた。
場所はメトロポリスのタワーホテルの最上階。
夜通しのセレモニーの予定だったが、生憎多忙なブルースは翌日までの時間が取れず、そしてクラークも朝一から取材の予定が入っていたから日付が変わった頃にそっとお祝いの場を抜けてきたのだった。
「…そんな幸せな親友を持ててお前は幸せだな」
ガラス張りのスイートルームからはメトロポリスの夜景が広がっている。
ソファの目の前に置かれた年代物のウイスキーの氷が、冷たい音を立ててくるりと回った。
「うん、僕はとっても幸せ者だと思うよ。だってロイスは僕の親友だもん…彼女が幸せになってくれて僕は…!!」
またクラークが鼻を垂らし始めたのでブルースはさっとティッシュを差し出す。
盛大に鼻をかんで、やっぱりクラークはまた最初からロイスの話をするのだった。
「なぁ、クラーク」
クラークの嗚咽が静かになった頃を見計らって、彼は優しく恋人を覗き込む。
ロイスに飾られた小さな薔薇は未だそのままで、時間が経ってしまったからか少しだけ萎れてしまっていた。
「…?」
珍しく大人の風を吹かせたブルースに、クラークが顔を傾げる。
「私たちの式はいつにしようか」
彼は視線を目の前の夜景に投げやって囁く。
囁き声ではあったが、超人であるクラークにはその小ささでもはっきりと耳に届いた。
「…え、それって…?」
「君の親友からの願いだろう?
幸せな繋いで行かないとな」
柔らかい微笑を浮かべたブルースに、クラークは飛びついて、また大泣きするのだった。
「ブルース、愛してる!!!!
結婚しよう!!」
*FIN*
お風呂のシーンとか書く予定なかったんだけど…?
なんかクラブルって情事の描写したくなるのよね。
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