Serena*Mのあたまのなかみ。
ハイキュー/黒大
以前、友達と通話しながら大地さんのアパートの間取りは~…とかニ■リで買うもの!とかひたすら語ってた中で出てきた妄想の産物。
布団セットとかあの値段って凄いなニ■リ… 大地さんが買ってくれた枕は1980円です。愛はあるけどお金は控えめに(だって挟めれば良いだけのものなので)。
あとバスタオルが1人暮らしなのに多いのは2人の生活に必要だからです。色違いで5~6枚あります。スゴイネ!!!!
以前、友達と通話しながら大地さんのアパートの間取りは~…とかニ■リで買うもの!とかひたすら語ってた中で出てきた妄想の産物。
布団セットとかあの値段って凄いなニ■リ… 大地さんが買ってくれた枕は1980円です。愛はあるけどお金は控えめに(だって挟めれば良いだけのものなので)。
あとバスタオルが1人暮らしなのに多いのは2人の生活に必要だからです。色違いで5~6枚あります。スゴイネ!!!!
澤村大地の家には来客用の布団が1組だけ置いてある。
気ままな男子大学生の独り暮らしだ、酔っぱらった友人が転がり込んだとしても「その辺に寝とけ!」言って客人を転がしたって何ら問題はない。
手狭な1DKのクローゼットに押し込められた布団は邪魔でもあったけれど、処分出来ない理由が1つだけあった。
――其れは、大地の所有物ではなかったからだ。
*
3月の末、進学を機に上京してきた澤村大地はほぼ毎週末に泊まり込む恋人の存在を持て余していた。
4月の始めこそ新生活に慣れるのに精いっぱいと電話越しに話すだけだったが、バイトも決まって授業のコマ数にも慣れたGW前からは「バイトが早く上がった」だの「間違えてこっちの電車に乗っちゃった♡」だの妙な理由をつけて鉄郎は大地の家へ上がり込んだ。
始めこそベッドで寝ろと促したり、狭い其処でぎゅうぎゅうに抱き合って寝たりしたものの、筋肉質な成人男性2人を支えるにはシングルベッドはあまりにも頼りなく、結局は「床で寝ろ」そう言って夏掛けの掛け布団を投げつけたのが梅雨の季節。
そんなある日、大地の家に大きな荷物が届く。
日用品や組み立てる家具なんかでよく世話になったホームセンターの屋号が印字された段ボールを「実家からか?」思いながら開けると、中身はふんわりとした寝具のセットが詰まっていた。
慌てて差出人の名前を見て、大地は恋人の電話番号を履歴から呼び出す。
――時刻は夜の8時前。
バイト中なら出られないだろうが、着信を残しておけば鉄郎は折り返し連絡してくるだろう。
7つ、8つ。
呼び出し音を数えながら大地はじっと恋人の声を待つ。
『もしもし? 大地さん? どったの??』
10コール目になる前に途切れた呼び出し音に、鉄郎の声が耳に届く。
声の先は静かだったから、どうやらバイト中ではなさそうだった。
「鉄郎、今、ちょっといいか?」
『うん? いいよ。明日のレポート仕上げてたところだし。
ちょっとコーヒー淹れ直すから少しだけ待ってて貰える?』
「…いや、大した用事じゃないからそのままでいい」
『そ? どったの?』
のんびりとした鉄郎の声に大地は深呼吸するとゆっくりと用件を切り出す。
「…鉄郎、なんだアレは」
玄関に鎮座する段ボール箱を見つめて大地は呟く。
その言葉に、鉄郎は電話の意味を察したようだった。
『あっ届いたー!?
大地さんトコのベッド占領するのも悪いし、セールしてたから買っちゃったぁ♡』
「…はぁ? んで勝手にンなモン送り付けんだよ」
『だって毎週床で寝るの身体痛いし疲れも取れないじゃん?』
「別に俺は自分のベッドで寝るから困らんのだが??」
『ほら、ベッドの横の所にちょこっと置いててもらえばいいからさ~。ベランダに出るの面倒になるけど…まぁ、掛布団なら冬の間使って貰ってもいいし』
すらすらと大地の部屋の間取りから置き場所を指定した鉄郎に、大地は溜め息を吐く。
「なんで置くって前提なんだよ」
『置いてくれるでしょ、大地さん。他らなぬオレの頼みだもん』
「だが断る」
『そんなぁ~』
情けない恋人の声を尻目に、大地は携帯電話を肩に挟むと段ボールの寝具を取り出し始める。
真っ白な枕に掛け布団、敷布団とセットになった1番シンプルな組み合わせの其れに、揃いのシーツやカバーも入っていてその可愛らしい色味に思わず大地は吹き出した。
「…っ、なんだよ、このシーツ!」
ピンク地に小花模様が散った女性らしい模様は明らかに大地の部屋では異質の存在になる。彼の部屋だって別に“男性”らしいものではなかったが、グレーや青が多い部屋に(カーテンがグレーなのだ。自然と其れに合わせた色味になる)ピンクは余りにも可憐だった。
『あ~それ?
なんかそれだけ割引になってたからそれにしたの。どうせ使うのオレだし』
「いや部屋に置けってお前言ったじゃん。浮くだろ明らかに」
『オレ以外部屋に誰か入れないでね♡って牽制?』
「…うっざ」
彼の言葉に『ひどい!初めてのバイト代で買ったのに』鉄郎が返して、大地も
「初めてのバイト代はお家の人に何か買うとか…有意義に使ってくれ」
そう携帯電話を持ち直す。
『ん、大丈夫。家にも色々買ったから』
ちょっと掛けちゃったお茶碗でしょ、真っ白な大皿も欲しかったし、菜箸のセットも安くてね…
続けた恋人の言葉に大地も少しだけ安心すると
「でも送り返すからな」
なんて伝票を眺めながら強気に返した。
『えぇ~せめて1回くらいは寝かせてよー。
来週末行くからさ、それまで、ね? お願ぁい!』
187cmの長身を屈めて強請る姿を想像して大地は少しだけ怒りを収めると、「1回だけな」そう約束する。それから、
「でもお前、枕1個で足りんの? 2個必要でしょうが」
独特の寝方をする恋人に尋ねた。
『大地の貸して』
「やーだよ。
……俺も来週バイト代入るし、買ってやるから一緒に買いに行くべ」
鉄郎のおねだりを断りつつも、つい彼に甘い顔をしてしまう。
そんな大地に『やった~~!』鉄郎は素直に喜び、そして通話を切った。
大きな段ボールと雑に出された寝具、それにカバー類を見下ろして大地は小さく溜め息を吐く。
寝具を部屋に運んで、カバーをつけて。段ボールは近所のスーパーまで買い物がてら捨てに行くかぁ、なんて壁に掛けたカレンダーを見ながらぼんやり考えた。
*
駅ビルの一角に構えるホームセンターで鉄郎の2つ目の枕と、鉄郎が欲しい!と言って買ったビーズクッションを買って、大地と鉄郎の2人は大地のアパートに行く道を歩く。
――大きな荷物を1つずつ片手にぶら下げて、空いた手のひらは自然と絡まった。
1回だけ使わせて!
そう約束して布団の使い心地を試すのに泊まった筈なのだが、その日に限って布団の出番はなく、日を改めて鉄郎が泊まりに行ったのだとか。
でも其れは、また別の話。
*
『――でね、来月のコンサートに母さんも行くから。悪いけど大地、泊めてね』
郷里の母から言われてしまっては、大地も「うん」と頷く事しか出来なかった。
夏休みに入ってすぐ、なかなかチケットが取れないと有名なアイドルのコンサートに大地の妹が当選したのだと言う。友達同士で出掛ける予定だったのだが、生憎先方の友達の都合が急に悪くなったらしく、急遽、大地の母と一緒に(妹の影響で母もファンなのだ)上京することになった。コンサートホール近くのホテルを取っても良かったのだが、折角だから息子の家に行きたいと母が言ったのだ。夏休みなのもあって宿泊料金は軒並み強気の価格設定だし、東京案内をするのは大地の役目だ。それならわざわざ別の場所から合流する必要も無い。
壁のカレンダーを見つめながら、家族が来る日は鉄郎に会えないって連絡しなきゃなぁ。ぱちんと携帯電話を閉じて大地は1人肩を回した。
*
「おじゃましまーす」
「わーお兄ちゃんの部屋だぁ!」
「あ、荷物は適当に置いてていいよ」
コンサートを満喫した母と妹を最寄りの駅まで迎えに行き、アパートに招き入れて大地は玄関の鍵を掛ける。
部屋の中をきょろきょろと見回す2人に「座布団ないけど適当に座ってて」なんて言って作り置きの麦茶のボトルとコップをテーブルに置いた。
「オレ、さっきシャワー浴びちゃったけど風呂入るならいれるよ」
大地が言うと「入る~」コンサートでも跳ね回ってたと言うのに未だ興奮の冷めやらない妹が手を上げる。
「あ、これね大地、お土産。っても慣れた味でしょうけど」
泊まりの荷物が入ったボストンバックを開けて母から差し出された手土産は、地元でも有名な黄色いクリームをスポンジで包んだ銘菓だった。
「お、たまに食べたくなるんだよなぁコレ」
大地は言って笑顔で受け取る。
そのまま立ち上がって風呂の支度に言った息子を見送って、母はコップに麦茶を注ぐと「良かったわねぇ」なんて娘とまた、コンサートの話題で盛り上がった。
*
男1人暮らしだと言うのに自分と娘の分と用意されたバスタオルのリネン類に、客用だと思われる布団はピンクの小花模様のカバー。風呂場には女性の使いそうな洗顔料などは見当たらなかったものの、息子には好い仲の相手が居るのだろう。水回りもきちんと掃除されたキッチンで歯を磨きながら母は考える。
中学、高校とバレー一筋で高校3年の終わりまでバレー漬だった息子がこうして大学生活を謳歌しているのを見ると嬉しいような寂しいような複雑な感情が胸に渦巻く。
「母さん、俺床で寝れるから2人でベッドと布団と使ってよ。
エアコン入れるから寝冷えしないようにだけ気をつけてな」
居室から顔を覗かせた大地に「あひぃがと!」彼女は答えて口を濯ぐ。
翌日の朝食に出された小松菜の煮びたしは「作り置きしてんだよ」大地は言ったけれど澤村家の味と違っていたから、息子に彼女が居るのは確信に変わり「今度来るときはお土産2つ用意しなきゃね」なんて思うのだった。
*
妹から『無事に仙台に着きました』連絡が入って大地の頬が少しだけ緩む。
彼の目の前でパフェを突いてた鉄郎が「どったの?」首を傾げた。
「ん、母さんたちが仙台着いたって。
東京はどこも人が多いし蒸し暑くて疲れたって言ってるよ。こっちは住んでるっつーの」
スカイツリーに隣接された施設で妹と母の買い物に付き合わされた大地を労おうと、東京駅まで送りに来た大地と鉄郎は合流し、そのまま少し早い夕食を、と冷房の良く効いたファミレスに入った。
500gのハンバーグと山盛りのサラダを食べ終え、大地はティラミス味の、鉄郎はイチゴ味のパフェを堪能していたところで、話は冒頭に戻る。
「ははは、そりゃ東北から比べたらこっちは暑いだろうねぇ」
ついこの前、梅雨空に対して「蒸っっし暑い!!!!!!」怒っていた大地を思い出して鉄郎は笑う。
「でも、鉄郎に教えて貰ったあんみつ屋さんは母さんも気に入ってくれたし美味かったよ。
ありがとな」
恋人からの言葉に「良かった」鉄郎も安堵する。
「あ、それから布団もホントありがとな。
流石に子供の頃は一緒に寝てたって言っても中学生とは一緒に寝れないからさ…」
頭を掻いて続けた大地に鉄郎も調子に乗る。
「あって良かったでしょ、客用布団」
「んだな。
あ、でもさぁ…母さんがあのカバーと、この前鉄郎が作った小松菜のヤツで“彼女がいる”って勘違いしちゃったみたいでさ…
さっき帰りがけに『お父さんにはまだ内緒にしておくからね』って言われちゃったよ…」
肩を落とした大地に、鉄郎は吹き出した。
「お義母さん!!」
「…貴方のお母さんじゃないでしょうが…」
ひとしきり笑い転げ、重い腹を抱えて店を出ると夜になるのは遅い季節とは言え、もうすっかり夜の帳が降りた空だった。
駅の改札口を抜け、自宅へ帰る在来線のホームに向かおうとした鉄郎の洋服の裾を大地が掴む。
「?」
「…ウチ、来ねぇの」
遠慮がちに俯いた頭の、両端の耳が赤く染まっていて何を“期待”するのかを鉄郎は察する。けれど、敢えて気付かない振りをして、逆に大地を気遣う言葉を吐いた。
「だって大地、今日1日お出掛けで疲れたでしょ。部屋の掃除とかもしてないだろうし」
「…別に、それ、は」
――今更、気にすることでも。
散らかってる部屋に、いくら断っても上がり込んだ奴が何を言う。
俯いたままの大地に、鉄郎は猫なで声を出す。
「なぁに、オレ、行ってもいいの?」
「…ん」
力任せに引っ張られた服の裾に「千切れる~」鉄郎は言って、
「……実はちゃんと、替えのパンツ持ってきてたの。偉くない?」
そう耳打ちしたら無言で背中を叩かれた。
*
――澤村大地の部屋にある、1組の来客用の布団。
持ち主は彼の恋人である黒尾鉄郎のものだったけれど、今夜も彼がこの布団を使うことはないのだろう。
*おしまい*
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