もーにんぐるーてぃん

メダリスト/夜鷹×司

華奢な見た目に反して、その実、夜鷹は髭が濃い。
現役時代の頃「楽になるよ」誘われて医療脱毛に手を出したが、余りの痛さに1度で断念。ジャンプの失敗で打ち身を作るのは怖くないのに、人から施される痛みは唯恐怖でしかなかった。

そんな彼が朝1番に行うのは伸びた髭の処理である。
シェービングクリームを泡立て、設えられた剃刀ですぅと顎に刃を充てて肌から伸びた髭を剃る。一度、手入れが面倒だからいっそのこと髭面になろうか、鴗鳥に相談したら妻と2人掛かりで止められてしまったので諦めた。
自分より若い司もさぞ処理が大変だろう、そう思ったものの、彼はあまり髭が濃い方ではないらしく剃刀を使うのは週に2、3回だと目を瞬かせた。

「…めんど」

夜鷹は濡らしたタオルで顔を拭くと、鏡に近づいて剃り残しを確認する。
つるりと引っ掛かりの無い頬を確認すると、夜鷹は無防備に眠る司のベッドを軋ませた。

「……朝だよ」
「ん゛～…」

耳元で囁くと、司は寝返る。いつも溌溂とした表情の司の、機嫌の悪そうな顰め面と無精髭の生えた姿を見られるのは、夜鷹だけの特権だった。

「おきて」

もう一度囁くと、やっと司は目を開ける。
眼前で構える美丈夫に、彼はふにゃりと表情を緩めた。

「おはようございます」

＊おしまい＊