きすあんどくらい

メダリスト/夜鷹×司

明浦路司の、風呂は長い。
とは言え基本が烏の行水な夜鷹の基準。

最近は夜鷹も親友に言われて風呂上がりのボディミルクを塗るように心がけているものの、塗るのも一瞬、実際は忘れることの方が多い。
対し、司は「ちゃんと乾かさないと寝癖が酷くて」なんて襟足までしっかりドライヤーは充てるし「風呂上がりって乾燥しません！？」小さいころの理凰が塗っていたような青い缶のクリームを持ち歩いていた。
――勿論、それ以外の使い道もあるけれど。
それ以外にも“男”の準備は色々と必要なのだ。其れは、夜鷹にも原因があるから彼を待つ間はエアコンの設定を上げ、爪を磨いて時間を潰した。

「すみません、お待たせしました」

いつも風呂から出てくる司は夜鷹に謝る。

「なにか、謝ることでもあるの？」

顔を上げた夜鷹に、司は頭を掻いた。

「…こう、お待たせしてしまったこと、に」

男女の仲であれば発生しない支度に司が言葉を濁すと

「べつに」

夜鷹は立ち上がる。ついとガウンの隙間から恋人の柔らかな胸筋を撫でると恋人を見上げた。

「僕は人を待つのは嫌いだけど、君を待つのは嫌じゃないよ」

――そう、まるでKiss & Cry（キスクラ）で得点を待つあの時間にも似ていて。

だって、ここは僕らのKiss & Cryだろう？
僕とキスするし、君は泣く。

きゅっと乳首を摘まむと、司は顔を真っ赤にして「な、何言ってるんですか！」夜鷹を突き飛ばして大きく首を振る。

突き飛ばされるまま、ぼすんとベッドを弾ませた夜鷹はぱちくり目を瞬かせて天井を見つめた。耳に届くのは、もう！司の呆れた声。―—どうやら、今宵の夜鷹にGOE加点は無さそうだ。

＊おしまい＊