くちづけ

メダリスト/夜鷹×司

其れは単純な興味だった。

夜鷹純は美しい。
均整のとれた体、しなやかに伸びる四肢。絹糸のような黒髪に年齢よりも幼く見せる黒目がちの瞳。
何処を取っても美しく、減点をする要素が無い。

勿論、そんな彼は寝顔だって美しい。
起きて一番に、涎の確認をする司とは大違いだ。

そんな夜鷹はどんな顔で自分と口付けをするのだろう。きっと寝顔のように美しいに違いない。
少年のような欲に駆られ、舌を差し出しながら司はそっと薄目を開ける。
気付かれぬよう、少しだけ顎を上げて視界を夜鷹に合わせると、其処には思いきり目を見開いた夜鷹の姿。

「ひっ！」

肉を喰らう獣の如く、鋭い視線に思わず司が慄くと「なに？」口付けを中断された夜鷹が片眉を上げる。

「い、いや…その…」

言葉を濁らせた司の脳裏を過ぎるのは、必死に自身を抱く時の夜鷹の視線。
暗がりにも分かる、真っ直ぐな眼差しは低体温な彼には珍しく欲が混ざっている。恍惚とした表情に司の腹の奥が切なくなるのは秘密だ。

口ごもった司に「あぁ」夜鷹は事も無げに続ける。

「…だってこんな可愛い君を誰にも見せたくないし、僕だけにしたいからね」

放たれた特大の独占欲に、今宵も長くなりそうだ――覚悟する司なのだった。

＊おしまい＊