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Serena*Mのあたまのなかみ。
ハイキュー/黒大

「大学1年生のクリスマスプレゼントに、お互いボロボロのコインケース(財布)使ってるから…って用意する黒大が見たい」
と、呟いたモノの具現化です。
最終的に大学4年時にペアリング(お高めのヤツ)を贈りあって欲しい。


「「メリークリスマス!!」」

100円均一で買った音だけの鳴るクラッカーを引いて、大地の小さなアパートでクリスマスパーティーが始まる。
集まるのは家主である大地と恋人の鉄郎の2人きりで、初めて一緒に過ごすクリスマスだった。

「良いのか、鉄郎。バイト、1番のかき入れ時だろ?」

地元の駅前にある、個人経営のイタリアンレストランでバイトをする鉄郎を大地は気遣う。

「いんや。
 上京した恋人と過ごすんですぅ♡って先月から宣言してたからな」

おどけて笑った鉄郎に、ちょっとだけ居心地の悪そうな顔を大地は浮かべた。

「大地こそ、サークルの飲み会だったんだろ?
 良かったのか?」

相変わらず、大学のサークル活動にバレーを選んだ大地に鉄郎は尋ねる。
偶然にも12月24日が土曜日で、サークルのクリスマス会だとカレンダーに書き込まれていた。

「ん、強制の飲み会じゃなかったし。
 皆には悪いけどバイト休めなかったって言っちまった」

照れた顔を作った大地に「かーーわい♡」鉄郎は口角を上げる。

体躯の良い男2人が膝を突き合わせる真四角のこたつに並べられたのは、鉄郎がバイト先から調達したピザにパスタ、それに大地が近所のお気に入りの総菜屋から買ってきた揚げ物とサラダが並ぶ。
まだアルコールは買える年齢ではなかったからワインの類は置いていなかったが、せめて雰囲気だけでもと少し上等なジンジャエールを用意していた。

「大地とクリパ出来てオレ、結構浮かれてる」

クラッカーと同じく、100円均一で買ったトナカイのカチューシャを揺らして鉄郎が言うと、サンタ帽を被った大地も「俺も」目を細める。

付けっぱなしのテレビからは、クリスマスソング特集の音楽番組が流れ、女子だけで構成されたアイドルグループが都内のイルミネーションを背景に恋の歌を歌っていた。

「あ、ここ、綺麗だったよなぁ」

パスタを取り分けながら大地が言うと、

「思ったより駅から歩いたけど良かったよね」

先週デートで訪れた思い出に鉄郎も頷く。それから、盛られたパスタに笑顔を作った。

「あ。それねぇ、大地が好きかと思って醤油味にしてみたの」
「おー!お前もキッチン手伝ってんの?」
「ん、してない。恋人と食べるんだ~って話してたらオーナーが特別に作ってくれたの♡
 だからいっぱい食べてね♡」

続けて放たれた恋人からのウインクに大地が照れた顔を浮かべる。

「…きっと、可愛い女の子で想像されてるんだろうなぁ」
「それがさ、上京してきて黒尾さんに騙されてる可哀相なお嬢さんって言われててサ。心外よ」

腑に落ちないように眉を寄せた鉄郎に大地は破顔する。

「まぁまぁ、そう不貞腐れずに」

空のコップにジンジャエールを大地が注ぐと、2人はグラスをかち合わせた。

「「乾杯!」」



あれだけ山と盛られていたピザにパスタ、サラダにから揚げが消えたテーブルを、簡単に大地が片付ける。

「お前も手伝えよ~」
「コタツが放してくれないんですぅ」

台所にお皿を運ぶ大地を見送って、鉄郎はベッドの上に置かれた紙袋を見つめた。
紺色のシックな色合いのしっかりと自立する紙袋は、きっと今日の為に用意されたプレゼントだろう。鉄郎もバッグの中にプレゼントを忍ばせていたから、恋人も似たような気持ちで贈り物を用意してくれているのが素直に嬉しかった。

「ほーら、クリスマスケーキだぞ~」

サイズは小さいとはいえ、生クリームとイチゴの載ったホールケーキを運んで来た大地に鉄郎は驚く。

「えっホールなの!?」
「クリスマスって言えばこの丸いケーキだろ?」

大地は言い返しつつ、ケーキをテーブルの上に置く。それは、小いながらも砂糖菓子のツリーとサンタまでご丁寧に載ったクリスマスケーキだった。

「オレん家、ばーちゃんと父さんだけだったし、オレだけ普通のケーキ買ってたんだよね」

小さなケーキを見つめながら鉄郎がポツリと呟く。

「はぁ!? マジかぁ… 俺んとこは下に居たからなぁ…ホールで買っても1つ食えれば良い方だったし、下手すりゃ弟にイチゴとか食われてたぞ」
「サバイバル~ じゃぁ今日はオレが大地のイチゴ貰っちゃおうかな?」

ケーキの上に伸ばした手に「あっ止めろよ!」大地が怒鳴る。

「1人でちゃんとケーキ食べるの結構夢だったんだよ」

頬を膨らませた大地に「なら」鉄郎は提案する。

「どうせオレたち2人で食うんだし、切り分けないでこのままホールごとつつくのはどう?
 すっごい夢のある食べ方じゃね??」
「おぉ!天才か鉄郎!!」

恋人の提案にぱっと大地の顔に笑顔が広がる。

「残したって冷蔵庫に仕舞えるし、明日の朝だって食べれるでしょ。
 オレもこーゆークリスマスケーキって初めて食べるから新鮮」

続けた鉄郎に「うんうん」大地は素直に頷く。

「んじゃ、早速…」

フォークを持ち上げた大地に「あ、その前に」鉄郎が制する。

「?」
「その前にさ、プレゼント交換しない?
 ずーーーっとそこにあってさ、めちゃくちゃ気になるんだよね」

ベッドの上の紙袋を指差した鉄郎に「あぁ」大地が頷く。
そして「クローゼットに隠そうと思ってたの、すっかり忘れてたわ」なんて苦笑して頭を掻いた。

「勿論、オレも用意したよ。
 大地が気に入ってくれると良いんだけど」

鉄郎が言って、バッグの中からラッピングされた箱を取り出す。
黒い箱に赤のリボンか掛けられた上品そうな出で立ちに「おぉ!」大地は目を見開き、

「まぁ、バレバレだけど。
これは俺から」

そう、銀色のシール貼られた紙袋を両手で差し出した。

SIDE.大地

「お前、それいつから使ってるの」

コンビニで肉まんを買う鉄郎の取り出した、ボロボロのコインケースを見て大地が呟く。

「んー? 小学生…くらい?」
「年期入ってるな」
「自販機とか、ちょっと買い物するのに小銭だけ入ってて便利だしね」

薄汚れたコインケースに描かれたキャラクターは既にのっぺらぼう気味で、辛うじて黒っぽいペンギンのようなモノが描かれいるのが分かった。

「ふぅん」

店員から渡された肉まんを受け取って2人はコンビニを出る。

「おごり?」
「おごり」

念の為確認してから、まだ湯気の立つ肉まんに大地はかぶりついた。
外で会う時は黒くて艶やかな長財布を持ち歩いていたから、本当にあのコインケースは近所の買い物用なのだろう。あの薄い長財布に、硬貨をぎっしり入れるのは洗練さに欠ける。
来月にはクリスマスになるのを思い出して、「これだ!」大地は気が付いた。

「…大地?」

急に立ち止まってガッツポーズをした恋人に「肉まん1つでそんなに喜んで貰えて嬉しいねぇ~」鉄郎は目を細めたのだった。



――澤村大地は悩んでいた。

それは、先日決めた恋人へのクリスマスプレゼントのことだ。
小学生の頃から使っているという、小銭入れに替わるコインケースをプレゼントしようと決めた。そこまでは良い。
けれど、どんなデザインにするか――それが問題だった。

大地はバレー一筋な所もあったし、学校と部活の往復で高校時代はあまり私服にこだわりはなかった。あまりだらしない格好じゃなければ問題ないだろうと考えていた部分もある。弟たちもまだ小学生で小さかったから、母親が弟たちの洋服を買うついでに大地の服を買ってくることもあった。
――なので、お洒落なセンスを言うものに無縁だったのだ。

最初は菅原、それから旭。
2人に相談したり、旭から雑誌の写真なんかを送って貰ったりして大地は恋人へのプレゼントを選定する。

相手は“シティボーイ”こと黒尾鉄郎だ。
いつも流行を取り入れた、センスの良い格好をしていたからそんな恋人に“ダサい”物は贈れなかった。

『やっぱ実物を一度見た方がいいよ。
 コインケースって毎日使うものだし』

毎晩、お店のウェブストアと睨めっこしている大地に旭がアドバイスする。

『気に入らねぇ、って言われたら自分で使っても良いようにな。わはは』
『ちょ、スガ!そんな縁起でもない…』

電話越しでも想像出来る2人のやりとりに大地は目を細めると「ありがとう」囁いた。

「一応、さっきのコインケースで考えてる」

2人に送ったコインケースの写真を眺めながら大地は続ける。

『黒だし、格好良いと思うよ』
『ちょっと赤も入ってるし音駒カラー意識したべ?』

ニヤニヤとした菅原の声に

「うっさい」

大地は笑うと「ありがとな~」そう、通話を切った。

ノートPCに表示されたウェブストアから、店舗検索をして実店舗の確認をする。1番近いのは大学の最寄り駅から電車で1本の、若者が集まる街のビルだった。東京に越してから、こうした華やかな街に行く時はずっと恋人と一緒だったのに大地は気付く。

「…初めてのおつかいかよ」

そう嘲笑って、口元を押さえた。

SIDE.鉄郎

大地の部屋で、彼がお茶を沸かすのをのんびりと待ちつつ、鉄郎は室内を物色する。
学生の性分は勉強とばかりに置かれたコンパクトデスク、配線と格闘した薄型のテレビの前にはパスケースが無造作に置かれていた。
大学の進学祝いででも貰ったのだろうか。スポーティな格好の多い大地にしては珍しい、オレンジ色に近いブラウンの革のケースで、アイボリーのステッチが洒落ていた。

「なした?」

ぼんやりとテレビ台を見つめる鉄郎に、大地は淹れたばかりのほうじ茶を置く。
大ぶりで色違いのカップは引越し祝いにと、鉄郎が押し付けたものだった。

「ん、そのパスケース、お洒落だなって思って」

猫舌な鉄郎は熱いほうじ茶に息を吹きかけて冷ます。

「あー、それ?
 こっち来るときにスガたちがくれたんだよ」

ほうじ茶を一口飲んで大地は説明する。

「へぇ~スガ君、趣味いいね」
「多分、選んだのは清水。スガと旭は金だけ出したって言ってた」
「あはは、あの美人のマネちゃん? 烏野カラーっぽくていいじゃん。素敵だよ」
「有難う、清水に会ったら伝えとく」

再びカップに口付けた大地に、冷めたかな?鉄郎もほうじ茶を啜ったが「あっつ!」平然と飲む恋人に信じられないと言った顔を作ったのだった。



――うーん、クリスマスかぁ。

季節は12月。
本格的にクリスマスカラーに彩られた街並みをブラブラと鉄郎は流して歩く。
サークルの飲み会の時間まであと30分。
鈍行でのんびり繁華街に来るつもりが、間違えて快速電車に乗ってしまったから予定より随分早く待ち合わせ場所に着いてしまった。その辺のカフェで時間を潰しても良かったが、猫舌な自分が熱いコーヒーを冷めるまで待って飲んだら時間に余裕が無くなる。
今年に入ってから、出掛ける時は必ず恋人を伴っていたから、こうして繁華街を独り歩くのは新鮮な気分だった。

赤信号で足を止められた交差点、他の道を歩くかと1本横道に入ったところで見たたことのあるパスケースがショーウィンドーに並んでいる。
その隣には色違いではあったが、同じシリーズの財布も並んでいて思わず鉄郎はそのままその店のドアを潜った。

「いらっしゃいませ」

洋服を整えた店員が顔を上げる。
どうやらそこは海外雑貨や衣料品を取り扱うインポートショップで、鉄郎たちの世代にも人気のあるブランドだった。

鉄郎は長身の身体を曲げて、店員に尋ねる。

「あの、そこのウインドーにあった二つ折りの財布。
 あれのブラウンがあれば欲しいんだけど…」

言われた店員は「有難うございます。在庫を確認致しますね!」鉄郎を置いてウインドーの財布を持って戻る。

「こちらのウォレットのブラウンでよろしいでしょうか?」
「そうそう。ちょっとオレンジっぽい色味の」
「ちょっと珍しくて素敵な色ですよね。人気のお色なんですよ」

なんて商売上手な店員はバックヤードに姿を消す。
鉄郎が店内をブラブラ眺めていると、店員がまた近寄ってきた。

「お待たせいたしました。
 最後の在庫がありました~!」

まだ“買う”とは一言も言っていないのに、店員の声は明るい。
時節柄、こう言った問い合わせは直ぐに売れてしまうものなのだろう。

「ありがとう。
 クリスマスプレゼント用のラッピングって出来る?」

差し出された財布を確認しながら鉄郎は店員に確認する。
「もちろんです」店員は笑顔を作ると、鉄郎をレジに案内した。

会計を済ませて店を出、腕時計を確認すると時計の針は15分進んでいる。

――待ち合わせには少し早いけど、まぁ、いいか。

長い脚を差し出して、鉄郎は待ち合わせ場所に向かうのだった。



大地が開けた箱には、パスケースと同じ色をした手触りの良い革の財布がぴしりと収まっていた。
鉄郎が開けた紙袋からは、不織布に包まれた黒のコインケースが置かれている。

「わぁ…!」
「…おお…」

互いに感嘆の声を上げると、渡されたプレゼントを取り出した。

「これ、パスケースとお揃いか?」
「…そ。大地が持ったらもっと似合うなって思って」

恋人からの言葉に大地がはにかむ。
それを見て鉄郎も目を細めると、コインケースをじっくりと眺めた。

「あんまりにもボロボロだったから、さ。
…その、お前の趣味に合うと良いんだけど…」

真っ黒な見た目にファスナーの部分が赤の差し色になっていて、何処となく母校のユニフォームを思い出す。

「すっげぇいい。格好良い!」

嬉しそうに顔を上げた鉄郎に、大地も安心して目尻を下げた。

「これ、使う度に鉄郎を思い出すな」
「オレも。大切に使うよ」

そう、額と額をぶつけて笑うと、そのまま鉄郎は大地を引き寄せる。
大地も諒解したように顔を上げると、柔らかな唇に鉄郎は吸い付いた。

「…あ、ケーキ……」

ニットの下を這う恋人の指先に大地は薄目を開けると

「朝ご飯に食べたって平気でしょ。
 オレはこれから大地を食べるから」

鉄郎がそのまま大地を組み敷く。

「ん…」

首元に顔を寄せられて甘噛みされると、もう大地は鉄郎のされるがままだった。

クリスマス・イヴの聖夜――2人がどんな初めての夜を過ごしたかは、それは2人だけの秘密だ。

けれど、生温くなった苺と生クリームは現実世界では歓迎されないと、実践した鉄郎と大地は“食べ物で遊ばない”と強く心に誓ったのだった。

*おしまい*

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