君が呼ぶ木漏れ日の中

ハイキュー/岩及

多分付き合ってる岩及。

トムジェリな関係が好きです。

あと花を引き千切る岩ちゃん（小学生）が男前w

「及川せんぱ～い、さよーならー」

「先輩、試合頑張ってください！」

声を掛けられて昇降口でぼんやり壁に凭れたままの及川が後輩らに手を振る。

少し恥ずかしそうに駆けて行く彼女たちの後ろに美化委員が世話するプランターを見つけて、及川はゆっくりと移動した。

プランターの前でしゃがみ込むと、しっかりと手入れされた花を見つめる。

ペチュニアとマリーゴールドと札の差された寄せ植えは夏らしいカラフルな色どりで、ゼラニウムと名前の書かれた花は鮮やかなピンク色だ。子供の頃、公園でこんな花を見かけて花占いしたっけなぁ。膝を抱えながら及川は思い出す。

＊

『とおる、虫取りしねーの』

虫取り網を持った岩泉が、木陰で足を伸ばした及川を誘いに来る。

『ちょっと暑くて休憩してた。

　はじめちゃん、みんなと行ってていいよ。待ってるし』

『お前も行かなきゃつまんねーよ』

花壇に生えていた小さな花（雑草なので地域の老人会が植えた大きな花じゃない。前に知らないで取ったクラスメイトが大目玉を喰らっていた）をくるくると回しながら及川は俯く。

――すき。きらい。すき。きらい。

ぷちぷちと小ぶりの花びらを千切ると、早く虫取りを再開したい友人たちが岩泉の名を呼んだ。

『いわいずみーーー！行こうぜ～～～～！！』

ブランコの先で手を振る友人に、岩泉も声を張り上げる。

『ちょっと水飲んで来るから待ってろーーー！』

『おー！早く来いよぉ！！』

そうして、及川の方を振り向いて尋ねる。

『…？　何してんだ、とおる』

『何って。花占い』

『花占い？』

『うん。岩ちゃんが俺の事を好きか嫌いか』

『ふつう』

『岩ちゃんに訊いてるんじゃないの。お花が答えてくれるんだよ』

『……で。その花はなんつった』

最後の1枚を千切った及川が溜め息を吐く。

『……きらい』

はらりと落ちた花弁に『ふうん』岩泉は言うと、及川の手に残っためしべとおしべの部分を引き千切った。

『好き！』

えっ、驚いて見上げた及川に、千切った芯の部分を投げ捨てながら岩泉は及川の手を引っ張る。

『これでいーだろ！

　ほら！セミ取り行くぞ！！』

お前が居ると高い所のセミいっぱい取れんだよ。

続けた岩泉に『うん！』嬉しくなって及川は頷く。

――その日、思う存分にセミを取り、大量のセミの抜け殻を持ち帰って母親の腰を抜かせた話は今でも揶揄われる思い出話だった。

＊

「――なに花壇の前でニヤニヤしてんだ？」

ぽこんと頭を叩かれて及川が見上げると、あの時と同じ幼馴染が自分を見つめている。

部活、遅れんぞ。言われて「うん」頷いた。

「花占い、出来るかなぁって」

立ち上がった及川に、体育館の鍵を渡しながら岩泉が首を傾げる。

「花占い？　花びら千切るヤツか？」

「そうそう。岩ちゃんが俺のこと好きか嫌いか、お花に教えて貰うの♡」

相変わらずの調子の及川に、岩泉は怪訝な顔を向ける。

「ふつう」

「…知ってましたぁ」

唇を尖らせた及川に、岩泉は手を伸ばしてわしわしと頭を撫でる。

「！？」

「……安心しろ。花になんて頼らなくても、お前の事は好きだから」

白い歯を見せた恋人は、出会った時と変わらない笑顔で。

あの頃よりも素直に「すき♡♡♡♡♡」言って飛びついた及川に

「うぜぇ及川！くっつくな！！」

そう、岩泉が雷を落としたのは言うまでもない。

＊おしまい＊