返事はいらない

NARUTO/カカイル

運動（暗喩）の前にエアコンの温度を下げるのってなんかえっちだなぁと思ったので…

冷房の類はあまり好きではない。
アカデミーの受付、イルカの座る席はいつも冷たい風が直撃する場所でオブラートに包んだ物言いでくのいち達から「イルカの席はこっち♡」なんて誘導される。
今日だって残業込みの丸10時間、しっかりと冷風に当てられたイルカが「う～」締め付けられる頭を抱えながら帰宅する。

――家に帰ったら、熱い風呂を沸かして部屋の窓は全開にしよう。

少し前、「お土産です」そう任務帰りの恋人が渡してくれた風鈴の音が心地良いんだ。

がちゃりとドアノブを回すと

「あっ、せんせ～！　おかーえりっ」

明け方から任務に赴いていた筈の恋人が出迎える。

「あれ、カカシさん。今日は戻らないんじゃ…」

サンダルを脱ぎながらイルカが「ただいま帰りました」続けると、カカシはイルカの支給服を脱がせるのを手伝った。

「予定より早く終わりましてね。先生の事驚かせようと思って。
あ、お風呂沸かしてあるから入ってください。
　あともう少しでご飯も炊けますから」
「あれ、カカシさんは？」
「オレは戻った後、家でシャワー浴びてきました」
「…ですか」

肩に下げた鞄をいつもの位置に戻すと、「じゃぁ」イルカは浴室の電気を点ける。

チラリと覗いた居室の情景。
部屋の窓は締め切られ、オンボロのクーラーの吹き出し口が開いている。

――恋人は冷房が苦手ではないのだろうか。

イルカの好みの43度に設定されたお湯に浸かりながらイルカは考える。

「良いお湯でした」

まだ濡れた髪のまま居室に戻るとちゃぶ台に箸を並べながら「ご飯にしーましょ」目尻を下げた恋人に「はい」イルカも風が当たらない場所に腰を下ろした。

＊

カカシが近所の総菜屋から買ってきた総菜を並べた夕餉を終えて、イルカが買い置きしていたざらめの付いたせんべいをほうじ茶と一緒に齧って。

ふと会話が途切れた先、物欲しそうなカカシの視線にイルカは瞳を伏せる。

Pi☆

イルカを抱き寄せたカカシがエアコンの温度を下げると“抱かれる”んだな、視覚からその先の行為を想像するから、イルカは少し苦手だった。
カカシの部屋のエアコンがベッドの真上で、苦手な冷風が直撃する所為もあったのかもしれない。

カカシはイルカを組み敷くと固く結んだ髪紐をゆっくりと解く。
急に強くなった風は恋人の背中に遮られて、頭痛がしなくていいな、なんて舌を差し出しながらイルカは思うのだった。

＊おしまい＊