Serena*Mのあたまのなかみ。
NARUTO/角飛
2023.06~07にTwitter(専用アカ)にて書き散らしたSSまとめ。
※各種パロ(転生・リーマン)、謎時空 他 色々あります
= = = = =
飛段の可愛いところ
昼飯時を外した午後、空席の目立つ蕎麦屋の暖簾を角都と飛段の2人は潜る。空いた椅子を引いて腰を下ろすと、
「いらっしゃい!」
出された冷たい蕎麦茶が火照った身体を冷やした。壁に書かれたメニューを見て角都は主人を見上げる。
「山菜そば一つ。それと――」
傍らの飛段に視線を投げると、彼も短く続けた。
「…親子丼」
「あいよっ!
山菜そばと親子丼ね!!」
威勢よく返した主人の背中を見送って、角都は眼前の飛段を見つめる。無言の視線に飛段は顔を逸らせた。
「…な、何だよォ」
「いや……なに」
角都は返す。
普段であれば親子丼大盛りに天ぷらそば、それに稲荷なんかも注文する飛段がたった1つしか注文しないのだ。この暑さで頭でもヤラれたかと心配はする。
「今日は少ないなと思ってな」
ここ暫く野宿続きで、やっと人里に入ったのだ。彼が好物の“肉”に喜ばないのが不思議だ。
「……だって…」
飛段が口を開いた刹那、「お待ちどうさま!」主人が蕎麦と丼をテーブルに置く。
置かれた食事に「「いただきます」」両手を合わせると箸を割った飛段が小声で続けた。
「…さっき、換金所に行っただろ…? 今日はこの町に泊まると思って…
あんま食うと…その…、面倒……だし…」
威勢の良い彼が妙に歯切れ悪く話すのは、晩の睦み事を示唆しているからか。――今夜に期待していると?
しおらしい相棒を角都は一瞥すると、人の悪い笑みを浮かべる。
「……健気だな、お前は」
――普段は文句しか言わない相棒が、こんな時ばかり大人しく抱かれる支度を始めると思うと愛おしい。
目を細めて突然の告白をする角都に
「ぉ゛ッ!!」
飛段の動きが止まる。零れ落ちそうなほど見開かれた両の瞳に角都は「表情がうるさい」相変わらず辛辣な言葉を投げつけると、背筋の凍るような妖艶な笑みと共に耳元で囁いた。
「今夜は覚悟しておけよ」
= = = = =
CUT
耳を劈くように鳴く蝉が五月蝿い夏の盛りのこと。
「エビバデ~ダンシン~~♪ お風呂ラバ~~♪♪」
風呂上がりの飛段がご機嫌に鼻歌を歌いながら襖を開けると、見知らぬ男がちゃぶ台の前で新聞を読んでいた。
「うぉっ!?」
飛段は素っ頓狂な声を上げると急いで部屋の名前を確認する。
『葉牡丹』
書かれた文字は相棒と取った部屋に間違いはなく「ぅえ、ぇ、えっ」目を白黒させる飛段に、男は視線を上げた。
「煩い、飛段」
発せられる声は耳慣れた相棒の声だ。向けられる視線だって慣れたもの。
――けれど、その姿には違和感があった。
「か、か、角都…か、髪……」
鯉のように口を開いた相棒に、角都は盛大に溜息を吐く。
「…お前は本当に莫迦だな」
言って立ち上がると、飛段を立ちはだかるようにして開けたままの襖をぴしゃりと閉じる。
「…どうした」
長身の相棒に頭上から覗き込まれて、思わず飛段は顔を背けた。
「か、髪ィ…」
ちらりと視線だけを上げ呟いた飛段に、角都は彼の濡れた髪の毛を摘まんで眉を寄せる。
「またちゃんと乾かさないで来たのか」
そう、相変わらずの小言を吐くと、またどっかりとちゃぶ台の前に腰を下ろした。
――宿の一間、寛ぐ角都は頭巾を外す。
いつもは肩まで伸ばした黒髪が今は短くなっていて、飛段は驚いたのだ。
「角都、髪ィ…」
新聞を広げる相棒の目の前に座り込んでもう一度尋ねた飛段に、角都は短く答える。
「…切った」
彼の行動は明瞭だ。
――暑いから切った、邪魔だから切った。
時々、こうして髪を切る事はあったが、いつも角都の髪は肩くらいに揃えられてたし、“切った”と言っても長さを整える程度だった。こんな風に飛段よりも短く切る事なんて初めてだったのだ。
普段は隠れた項が覗いて、飛段は見てはいけないものを見たような気がして思わず俯く。
前髪も少し梳いたのか、髪の毛の隙間に額が見えた。なんだか、普段の角都よりも幾分か精悍に見えて居心地が悪い。
「似合わないか」
目を合わせない相棒に角都は短く告げると、読みかけの新聞に視線を落とす。
「ち、ちげーし!!」
台を叩いて顔を上げた飛段が慌てて否定すると、「なら、いい」角都は返した。
「…顔が赤いぞ。のぼせたか」
視線だけを寄越して角都が言うと、胡坐をかいた指先を合わせながら飛段は呟く。
「…のぼせてねぇし」
――別に髪の毛1つで。
髪型1つでこんなに緊張するなんて。
ガラリと雰囲気を変えた恋人の姿に、まるで“初めて”の相手みたいだ、なんて色事を勝手に夢想する。
もじもじと落ち着きなく身体を揺らす飛段に「餓鬼が」角都は察すると、今宵はどう可愛がってやろうかと算段するのだった。
飛段の可愛いところ
昼飯時を外した午後、空席の目立つ蕎麦屋の暖簾を角都と飛段の2人は潜る。空いた椅子を引いて腰を下ろすと、
「いらっしゃい!」
出された冷たい蕎麦茶が火照った身体を冷やした。壁に書かれたメニューを見て角都は主人を見上げる。
「山菜そば一つ。それと――」
傍らの飛段に視線を投げると、彼も短く続けた。
「…親子丼」
「あいよっ!
山菜そばと親子丼ね!!」
威勢よく返した主人の背中を見送って、角都は眼前の飛段を見つめる。無言の視線に飛段は顔を逸らせた。
「…な、何だよォ」
「いや……なに」
角都は返す。
普段であれば親子丼大盛りに天ぷらそば、それに稲荷なんかも注文する飛段がたった1つしか注文しないのだ。この暑さで頭でもヤラれたかと心配はする。
「今日は少ないなと思ってな」
ここ暫く野宿続きで、やっと人里に入ったのだ。彼が好物の“肉”に喜ばないのが不思議だ。
「……だって…」
飛段が口を開いた刹那、「お待ちどうさま!」主人が蕎麦と丼をテーブルに置く。
置かれた食事に「「いただきます」」両手を合わせると箸を割った飛段が小声で続けた。
「…さっき、換金所に行っただろ…? 今日はこの町に泊まると思って…
あんま食うと…その…、面倒……だし…」
威勢の良い彼が妙に歯切れ悪く話すのは、晩の睦み事を示唆しているからか。――今夜に期待していると?
しおらしい相棒を角都は一瞥すると、人の悪い笑みを浮かべる。
「……健気だな、お前は」
――普段は文句しか言わない相棒が、こんな時ばかり大人しく抱かれる支度を始めると思うと愛おしい。
目を細めて突然の告白をする角都に
「ぉ゛ッ!!」
飛段の動きが止まる。零れ落ちそうなほど見開かれた両の瞳に角都は「表情がうるさい」相変わらず辛辣な言葉を投げつけると、背筋の凍るような妖艶な笑みと共に耳元で囁いた。
「今夜は覚悟しておけよ」
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CUT
耳を劈くように鳴く蝉が五月蝿い夏の盛りのこと。
「エビバデ~ダンシン~~♪ お風呂ラバ~~♪♪」
風呂上がりの飛段がご機嫌に鼻歌を歌いながら襖を開けると、見知らぬ男がちゃぶ台の前で新聞を読んでいた。
「うぉっ!?」
飛段は素っ頓狂な声を上げると急いで部屋の名前を確認する。
『葉牡丹』
書かれた文字は相棒と取った部屋に間違いはなく「ぅえ、ぇ、えっ」目を白黒させる飛段に、男は視線を上げた。
「煩い、飛段」
発せられる声は耳慣れた相棒の声だ。向けられる視線だって慣れたもの。
――けれど、その姿には違和感があった。
「か、か、角都…か、髪……」
鯉のように口を開いた相棒に、角都は盛大に溜息を吐く。
「…お前は本当に莫迦だな」
言って立ち上がると、飛段を立ちはだかるようにして開けたままの襖をぴしゃりと閉じる。
「…どうした」
長身の相棒に頭上から覗き込まれて、思わず飛段は顔を背けた。
「か、髪ィ…」
ちらりと視線だけを上げ呟いた飛段に、角都は彼の濡れた髪の毛を摘まんで眉を寄せる。
「またちゃんと乾かさないで来たのか」
そう、相変わらずの小言を吐くと、またどっかりとちゃぶ台の前に腰を下ろした。
――宿の一間、寛ぐ角都は頭巾を外す。
いつもは肩まで伸ばした黒髪が今は短くなっていて、飛段は驚いたのだ。
「角都、髪ィ…」
新聞を広げる相棒の目の前に座り込んでもう一度尋ねた飛段に、角都は短く答える。
「…切った」
彼の行動は明瞭だ。
――暑いから切った、邪魔だから切った。
時々、こうして髪を切る事はあったが、いつも角都の髪は肩くらいに揃えられてたし、“切った”と言っても長さを整える程度だった。こんな風に飛段よりも短く切る事なんて初めてだったのだ。
普段は隠れた項が覗いて、飛段は見てはいけないものを見たような気がして思わず俯く。
前髪も少し梳いたのか、髪の毛の隙間に額が見えた。なんだか、普段の角都よりも幾分か精悍に見えて居心地が悪い。
「似合わないか」
目を合わせない相棒に角都は短く告げると、読みかけの新聞に視線を落とす。
「ち、ちげーし!!」
台を叩いて顔を上げた飛段が慌てて否定すると、「なら、いい」角都は返した。
「…顔が赤いぞ。のぼせたか」
視線だけを寄越して角都が言うと、胡坐をかいた指先を合わせながら飛段は呟く。
「…のぼせてねぇし」
――別に髪の毛1つで。
髪型1つでこんなに緊張するなんて。
ガラリと雰囲気を変えた恋人の姿に、まるで“初めて”の相手みたいだ、なんて色事を勝手に夢想する。
もじもじと落ち着きなく身体を揺らす飛段に「餓鬼が」角都は察すると、今宵はどう可愛がってやろうかと算段するのだった。
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