海とパダワンと若いマスター

スターウォーズ/アナオビ

リクエストを頂いたので、久しぶりにアナオビ。
跳ねっ返りのパダワンと、其れに振り回されるマスターが好きです♡

その任務は、まだ幼いパダワンも同行する任務だった。
所謂“要人警護”の類であったが、水の豊かな惑星の貴族の休暇に付き合うだけの任務だ。“海”を見たことがないパダワンも連れてこいと同行するマスター・メイスにも促されてまだ新人マスターだったオビ＝ワンはアナキンを連れて来たのだった。

「あと少しで戻って来るから、良い子にしていなさい」

小さな公園にアナキンを置いてオビ＝ワンは彼の頭を撫でる。
要人にはメイスが一緒だったから問題は無かったものの、手持無沙汰だとパダワンと待つわけにも行かないので、パダワンだけを別行動にするのだった。

「終わったら海を見に行こう。
　ホロで見るよりすっと素敵だよ」

オビ＝ワンは言うと、背中を向ける。

「オビ＝ワン、いってらっしゃい」

相変わらず跳ねっ返りのパダワンはオビ＝ワンの事を“マスター”とは呼ばなかったが、今日のオビ＝ワンは訂正せず、ひらひらと手を振るのだった。

オビ＝ワンのフォースが遠くなって、アナキンは急に「暇だな」口を尖らせる。
オビ＝ワンと一緒に過ごせるのは嬉しいけど、任務は別って来た意味ある？　なんて幼い頭で真面目なことを考える。
子供の頃から砂漠しか知らないアナキンにとってこの惑星で見る景色は全て新鮮で飽きはしなかたものの、こうして1人で過ごすには少しだけ飽きてくる。砂漠では貴重だった草花がそこかしこから生える姿には驚いたが、その生えた花を千切る遊びにはもっと衝撃を受けた。

ちょうど、アナキンが座るベンチの下に小さな花が生えている。

――花占い、だっけ。

そよ風に揺れる花にアナキンは思う。罪悪感が心を重くしたが、今は好奇心の方が大きかった。

ぷちりと細い茎を折り、白い花を摘む。

「オビ＝ワンは、僕のこと――」

好き 嫌い 好き 嫌い …

白い花弁が足元に落としながらアナキンは呟く。
最後の1枚、

「きら…」

言いかけたところで、

「良い子にしていたかな？」

アナキンの視界が大きな影に入り、頭上からオビ＝ワンの声が注いだ。

「オビ＝ワン！」

アナキンは弾かれたように顔を上げる。
まだリビングフォースの扱いに慣れていなかった彼は、花占いに集中するあまり、オビ＝ワンのフォースに気が付かなかったらしい。

彼は足元に落ちた花弁に、パダワンが花占いをしていたことを察する。

「花占いか？」

1枚しか残されていない花にオビ＝ワンは言い、アナキンの隣に腰掛ける。

「…こんな風に、花を摘むのって…初めて、で…」

悪い事をしたと自覚はあったから顔を俯けたアナキンだったけれど、オビ＝ワンは気にしていないようだった。

「あの星は砂ばかりだったものなぁ。
　この星のように草花が生えているのは不思議だろう」

オビ＝ワンの言葉に「別に…そーゆー惑星だってあるの…知ってるし」アナキンは答える。

――勿論、任務に来る前にこの星の勉強はした。大きな図書館でホロの本を借りて、惑星の成り立ちや国家の歴史を学んだのだ。

オビ＝ワンは目を細めると、俯いたアナキンから花を取り、最後の1枚で占いを始める。

「私のパダワンは、マスターのことが…好き」

ぷちんと散らした花弁にアナキンが「好き」呟くと、オビ＝ワンは破顔してパダワンの頭を撫でた。

「マスター・メイスが少し早いけどアナキンと海を見てきなさいって。
　日が沈むのはとても感動的な景色らしいんだ」

立ち上がり、アナキンに手を差し出すと「疲れた」アナキンは両手を伸ばす。

「…全く、私のパダワンは甘えん坊だな」

オビ＝ワンは苦笑したが、此処は厳格なテンプルでもなかったので優しいマスターはパダワンを抱き上げる。

「マスター、好き」

ぺたりと身体を寄せて素直に“マスター”言ったたアナキンに、オビ＝ワンはおどけた顔を作るとまた笑った。

「ははは、占いの効果がもう出たかな？」

＊おしまい＊