Serena*Mのあたまのなかみ。
バットマン/ジェイディク
いつものジェイディクだけど今回はティムとディックが会話してるだけ。
ジェイソンが「この世のチョコは俺の好きな味か、嫌いな味かの2種類しかない」って話すのがふと浮かんだので其処から妄想した一編。
ご存知の通り、俺アースのティムはダイナミックデュオガチ勢なのでブルディク派ですw
いつものジェイディクだけど今回はティムとディックが会話してるだけ。
ジェイソンが「この世のチョコは俺の好きな味か、嫌いな味かの2種類しかない」って話すのがふと浮かんだので其処から妄想した一編。
ご存知の通り、俺アースのティムはダイナミックデュオガチ勢なのでブルディク派ですw
「あぁ~~~~~もうっ!」
いつもは軽やかに廊下を鳴らす靴音を必要以上にバタバタとさせてディックはティムの使う地下室の扉を開けた。
「どうしたの?」
珍しいディックの剣幕にティムは驚いた顔を作ったものの、ブルードヘイブンからこの家までずっと各地の防犯カメラで彼の姿をチェックしていたから、彼が珍しく気を立たせているのは既に予見していた。
「聞いてよティム!」
年齢の割には幼く見える大きな瞳を潤ませてディックは口を尖らせる。
「……はいはい」
年若い弟は長兄を宥めるように頷くとモニターの後に置いたソファへと彼を促す。
必要最低限のガジェット類だけを作動させて幾つかの機械の電源を落とすとティムは「ココアでいい?」言って、ソファで大人しく膝を抱えるディックを振り向く。
彼が分かるように、大きく首を縦に振ったディックにティムは親指を立てると、大きなマグにたっぷりとココアを作る。ティムの部屋に常備されたココアはカフェモカを作る為に用意していたが、ディックやダミアンが訪ねて来た時はこうしてココアを作ってもてなすのだった。
「今日はどうしたのさ」
ソファの前の小さなガラステーブルにまだ湯気の立つココアのカップを置いてティムはキャスターの付いた小さな椅子を引き寄せる。
モニターの並ぶデスクから飲みかけのコーヒーを持ってくると、しょぼくれた顔の兄の前に腰掛けた。
「……そんな悲しそうな顔しないでよ。
格好良いディックの顔が台無しだ」
腕を伸ばして眉間に落ちた一房の前髪をそっと撫で付ける。
「そんな風に言ってくれるのは君だけだよ」
捨てられた子犬のような顔をしてディックは弟を見つめる。
整った顔に至近距離で見つめられて、思わずティムは顔を逸らした。
「…で?」
彼は兄の話を促す。
――いつの頃からかティムも知らなかったが、気付いた時には上の兄2人は“特別な関係”を持っていた。
世間一般で言う“恋人”ってヤツだ。
先代のロビンであるディックと、今でもこの街を守るバットマンの関係を世界の誰よりも大切にしていたティムだったから、その事実に気付いた時は意識を失いそうになったし、今でもディックの恋人として彼の隣に立つ次兄に良い感情は抱いていない。
けれど彼との関係を話すディックの表情は綺麗だったし、今までの男よりかはずっと信用の置ける人物でもあったから苦虫を噛み潰した顔をしてティムは兄たちを見守っているのだった。
「もうすぐ、バレンタインでしょ」
ディックはぽつりぽつりと話し始める。
ここ数年、バレンタインの時期になると世界の有名ショコラティエが新作のチョコレートを発表するのが常で、こうした彼らの力作を集めたチョコレートの祭典が各地で行われていた。
ゴッサムの街の顔役でもあるブルースはそう云った祭典に関わっていたし、この時期になると彼も沢山のチョコレートを抱えて帰るようになる。
それは宣伝の為だったり、友好の証だったり、愛の印だったり、理由は様々だった。
「だからさ、ジェイソンが好きなチョコレートを用意したいと思って」
大きなカップを両手で包み込みながらディックは呟く。
ジェイソンは凶悪そうな顔をしながら、甘いものが好きだった。
3段重ねのアイスクリームはぺろりと平らげるし、たっぷりのメレンゲを載せたアルフレッド特製のタルトだって1ホール余裕でその胃へ押し込める。
ティムはあまりそう云った甘い物は得意ではなかったから、よく「顔に似合わず甘党なんだな」なんて揶揄ったものだ。
「アイツの事だ、きっと『どれも美味い』とか言ったんだろ」
ぶっきらぼうな兄の事は良く分かっていたから、ティムも溜め息を吐く。
恋人に対して優しい台詞1つも言えないのかよ、思って彼も口を尖らせた。
「ううん」
ティムの返しに、ディックは首を振る。
「『この世には“俺の好きな美味いチョコレート”と“俺の嫌いなチョコレート”の2つだけだ』なんて言うの!」
ジェイソンの声音を真似して低く唸ったディックに、可愛いなぁ、ティムは目を細める。
「だったらさ、“俺の好きな美味いチョコレート”は何?って聞くじゃん?
そしたら、何て言ったと思う!?」
ぐっと顔を寄せてディックはティムを見つめる。
やっぱり整った顔に緊張して、ティムはそっと視線を外した。
「……さぁ?」
「『食べてみないと分かんねぇ』だって!!!!!」
今度はソファに身を投げ出したディックをティムは見遣る。
――結局、惚気じゃん。
ティムは冷めたコーヒーを啜って腰を上げる。
「ほんとさ、我侭で困っちゃう!
好きな物用意したいって心を分かってないよね?!」
頬を膨らませて抗議する兄を、ティムは「うんうん」受け流しながら頷いた。
「……きっとさ、ディックならジェイソンの味の好みも分かってるから言う必要ない、って思ってるのかもよ」
次兄の髪の毛を毟りたい衝動に駆られながらも、ティムは張り付いた笑顔を作る。
「ほら、ずっと“家族”でもあったワケだしさ。
嫌いなものは分かってるでしょ?」
――『好きに食べていい』差し出されたブルースからのお土産のチョコレートに、ジェイソンが手を付けない種類のものがあった。
1つは、ホワイトチョコレートのもの、もう1つはミントやシナモンの香料がメインのフレバーのもの…
どちらもティムの好物だったから、彼にしたらジェイソンが嫌ってくれてちょうど良かったのではあるが、こうして思い返すとやっぱりあの髪の毛を引き千切りたく思うのだった。
「……うん」
こっくりとディックは頷いて、ゆっくりとソファに座り直す。それから湯気の無くなったココアを一気に飲み干した。
「ありがとう、聞いてくれて」
空になったカップを差し出して、長兄は天使のような笑顔をティムに向ける。
「やっぱりティムに相談して良かった」
「どういたしまして」
差し出されたカップを受け取ってティムは薄く笑う。
「ティムにもチョコレート、用意するからね」
ウインクしたディックに、ティムの頬が赤く染まる。
「…別に、気にしなくていいよ」
「だっていつも僕の話を聞いてくれるし、大切な弟だから」
屈託なく笑う兄に、彼は目を細める。
「……うん、ありがとう。楽しみにしてるよ」
自分と兄のカップを持ちながらガジェット類を作動させたティムに、「またね」ディックは部屋を後にする。
廊下の足音が遠さかると、食器を片付けにパントリーに行ったティムの呪詛が響いた。
――ところ変わって。
ダミアンの部屋で最新式のVRのゲームで遊んでいたジェイソンが
「…っくしょん!!!!!」
派手にくしゃみをする。
「汚ねーな、トッド」
ダミアンの不機嫌な声がゲーム音に混じった。
*おしまい*
PR
What's NEW
PASSについては『はじめに』をご覧ください。
2025.07.09
えすこーと UP
2025.06.27
しかえし UP
2025.06.26
ろてんぶろ UP
2025.06.23
しーつ UP
2025.06.20
ねっちゅうしょう UP
2025.06.17
あくじき UP
2025.06.15
しゃしん UP
2025.06.14
ヒーロー情景者がヒーローの卵を手伝う話
大人になったヒーロー情景者が現役ヒーローを手伝う話 UP
2025.06.12
ていれ② UP
2025.06.10
せきにん UP
2025.06.09
よっぱらい UP
2025.05.28
まんぞく UP
2025.05.27
きすあんどくらい UP
2025.05.26
もーにんぐるーてぃん UP
2025.05.23
みせたくない UP
2025.05.21
あい UP
2025.05.15
サイズ UP
2025.05.13
すいぞくかん UP
2025.05.12
intentional gentleman UP
2025.05.09
てんしのあかし
considerate gentleman UP
2025.05.06
新米ヒーローと仕事の話
そんな男は止めておけ! UP
2025.04.27
なつのあそび UP
2025.04.19
はちみつ UP
2025.04.18
ようつう UP
2025.04.16
しつけ UP
2025.04.10
へいねつ
鮫イタSSまとめ UP
2025.04.08
ヒーロー2人と買い物の話
かいもの UP
2025.04.05
こんいんかんけい UP
2025.04.04
角飛SSまとめ⑦ UP
2025.04.03
ゆうれい UP
2025.04.02
汝 我らに安寧を与えん UP
2025.03.31
どりょく UP
2025.03.29
とれーにんぐ UP
2025.03.28
しらこ UP
2025.03.26
ティム・ドレイクの幸せで不幸せな1日
あいのけもの 陸 UP
2025.03.25
さんぱつ UP
2025.03.23
けんこうきぐ UP
2025.03.21
へんか UP
2025.03.20
はな UP
2025.03.18
こえ UP
2025.03.17
こくはく UP
2025.03.15
ぎもん UP
2025.03.14
あめ UP
2025.03.12
よだつか/オメガバ UP
2025.03.10
あこがれ UP
2025.03.08
おていれ UP
2025.03.07
くちづけ UP
2025.03.06
どきどき UP
2025.03.04
たいかん② UP
2025.03.03
たいかん UP
2025.03.01
かおり UP
2025.02.28
なまえ UP
2025.02.27
さいふ UP
2025.02.26
しらない UP
2025.02.24
くちうつし UP
2025.02.21
うそ UP
2025.02.20
たばこ UP
2025.02.19
よだつか R18習作 UP
2025.02.17
きのこ UP
2025.02.15
汝 指のわざなる天を見よ UP
2025.02.04
角飛 24の日まとめ UP
since…2013.02.02