デザートはランチの前で

お前が俺を愛したのって
一目惚れ？
気の迷い？
それとも――優越感？

特になんの脈略もない現代パロっぽいSB
（設定を考えるのが面倒だっただけ）

他人は自分の面に無頓着な癖に
他人の面には興味津々だ

良く言えば個性的
悪く言えば不細工

長く付き合った自分の面だけれども

やっぱりこの真ん中の赤鼻は魅力的な場所であり
そして劣等感の塊だった


今日も歯磨きをしながらぼんやりと薄汚れた硝子に映った自分の面に
酷いもんだなと毒を吐く

二日酔いで頭はガンガンするし
目の下には酷いクマだし
勢いに任せて恋人とシまったから全身痛いし

脚を拡げれば体を伝う忘れ形見

――あぁ、もう。


後ろの六畳間ではそんな恋人が録画したお笑い番組を見て爆笑している

身長の割に小さな頭と
良く整った顔立ちを持っていて

なんでこんな自分に構うのか分からない、
よくわからない、風のような恋人

低く通る声はいつも甘く、
ついつい、身体を許しちまう
（あぁスゲェ駄目な奴だな俺）

いつの間にか壁に貼られたハメ撮りの写真の顔ですら
普通に整った類に分類されて

ムカついたのでそのまま千切ってゴミ箱に投げ捨てた



切っ掛けはいつ？
どこで？

いつからこうなった――？



仄暗い感情が渦巻いたから、口を濯いだのと一緒に排水溝に吐き捨ててやった



「なぁ、シャンクス」



居間の引き戸に身体を預けて彼を振り向かせると、
素朴な疑問を口にする


「お前は俺の何処がいいんだ？」


笑いすぎて涙を拭いていた恋人は驚いて固まり、一瞬の間のあと真顔で呟いた


「お前（バキー）だからいいんだよ
　其処に理由なんてない」


そうしてまたTVに向き直り、新人芸人のコントに笑い始める
背中には俺の残した鋭い爪痕
まるで赤い天使の翼



――そうか、人を好きになるのに理由なんて要らなかったな。



当たり前のことを当たり前に返す恋人に妙に安心して、カップラーメンでも食おうとヤカンに火をかけた




ごくごく普通の、土曜の昼下がり




＊おしまい＊

仄暗い感情を持ったって恋人からの一言で元気になれるんだよ、ってそれだけのダラダラ。