Serena*Mのあたまのなかみ。
NARUTO/角飛
注意事項を確認の上、本文にお進みください
現代転生角飛(以前の現パロとは違う時間軸です)
・角都:記憶有 飛段:記憶無
・モブ(女)が割と出てくる
・角都が結婚している/幸せな話ではない
以上の内容が含まれる話ですので、HAPPYな角飛をお求めの場合はそのまま画面を閉じて下さい
注意事項を確認の上、本文にお進みください
現代転生角飛(以前の現パロとは違う時間軸です)
・角都:記憶有 飛段:記憶無
・モブ(女)が割と出てくる
・角都が結婚している/幸せな話ではない
以上の内容が含まれる話ですので、HAPPYな角飛をお求めの場合はそのまま画面を閉じて下さい
“角都”(かくず)
その言葉には不思議な力があった。
前世の記憶——などと言う夢物語は信じていない。けれど、子供の頃から飛段はこの言葉を心に宿すとひとつ強くなれたような、けれど心臓が潰されるようなそんな切なさを覚えるのだ。
2つになった時、飛段が初めて書いた文字も“角都”だったと言う。勿論、両親は小さな息子にそんな難しい漢字を教えたことはない。寧ろ幼児が漢字を書けたことに驚いたくらいだ。
『天才だ!』
両親は手を叩いて喜んだが、其れは間違いだった気付くのに3日も掛からなかった。
“角都”と書ける以外に飛段はごく普通の幼児だったし、変なマークを描く以外には走る方が好きな子供だったからだ。
そうして、飛段はごく普通の家庭で、普通の子供として大きくなった。
今世では妙な宗教に倒錯することもなく、それなりに真っすぐな人に育った。勉学の方の成績はあまり良い方ではなく両親もすぐに働き始めると思ったし、上の学校まで飛段を通わせる財源は無かったのだが、何を思ったのか
「貧乏から抜け出すのに金の勉強をする!!」
飛段は宣言すると、驚くほど長い時間机に向かってイチから学び直し、地方の大学の経済学部に合格したのだ。
無論、大学に合格しても学費を払い続ける力は飛段の家庭にはない。
「だったら奨学金で通ってやるぜぇ!」
彼は学生生活中も好成績を収め、学費と生活費を賄える奨学金の特待生となる。其れまで試験で後ろから数えた方が早かった高校生活が嘘のような生活態度で家族は驚いたが、
「だって金さえありゃぁいいんだろ?」
あくまで“家族の為”の姿勢を崩さない。
そして大学4年になって、皆が就職活動に勤しむ中、飛段も“就職氷河期”なんて言葉と戦いつつも堅実さが1番とばかりに銀行の職員として社会人としての一歩を踏み出すのだった。
*
新しい世界に生を受けた時、探したのはかつての相棒の姿だった。
相棒の名は飛段。
湯隠れの里の抜け忍で、ジャシン教と言う妙な宗教を崇拝する莫迦な男だ。
この世界がかつての世界と同じ――であれば問題は無かったのかもしれないが、新しい世界は角都の知らない世界で“忍術”など存在しない世界だった。
勿論、腹の中でチャクラは練れないし印を組んでも何も術は発動しなかった。
新しい生になっても角都は金が好きなのに変わりは無かったし、頭の回転だって良かったから、学校の成績は上々、商業高校からそのまま証券会社に就職して個人成績は右肩上がり。元来の度胸強さと先読みの力で顧客からの信頼も厚かったものの、本人は“金を生む実践が積みたかっただけ”と5年も立たずに独立、それからは個人の投資家として名を馳せていた。
まだ幼かった頃は「近所に住む幼馴染か?」家の近くの公園までよく歩き、中学に上がってからは「隣の地区の後輩だろうか」後輩を探るのに便利だと生徒会に入り、それでも“飛段”は見付けられず。
確かに彼は不死だと言っていたし、人を殺めてばかりの前生だ、こうして人間に転生出来たのも何かの手違いだったのかもしれない。16になる頃にはかつての相棒を探すのは諦め、幸せになってくれと願うばかりだった。
――其れでも結局のところ、こうして1人で動けるような職に就いたのは何処かで相棒(飛段)を求めていたのかもしれない。
金に厳しい彼にしては珍しく探偵を頼ったこともあるが、名前も住所も分からない、顔の特徴も分からない男の捜索は断られるのが関の山だった。
そうして“自分は幸せになるつもりはない”どこか世を斜めに見据えて、それでも好きな金だけは増やし続ける彼に投資仲間からお声が掛かる。
『妙な宗教一家のお嬢さんなんだが、良かったら面倒見てくれないか』
其れは投資家の間でも時々名が挙がっていた大きな宗教を信仰する一家の1人娘で、詳細は省くものの仲間が面倒を見ることになったらしい。
『少しお前とは年が離れてはいるが、実家を除けば困った性格の人ではない。
人助けだと思って会ってみてはくれないか』
別にその投資家に義理も何も無かったが、“妙な宗教”其れが心に引っ掛かり「お前の顔を立ててやろう」と恩着せがましく角都はその女性と顔を合わせる。
連れられたその女はやせっぽっちの不健康そうな顔色ではあったが、大きな目玉は何処かで見た紫色で思わず角都は息を呑む。相手側の女性も1回り以上離れた角都との年の差を気にした様子もなく、気が付けば彼女を妻として籍を入れていた。これが角都が40になる少し前の話で、子が生まれたのはそれから5年も経った頃。
家庭を持ったとて、特に彼の生活は変わらず、ただ年の離れた妻と小さな娘が彼の“1番”になったくらいだった。
少し“人間らしい”と言われるようになった角都だったが、運命とは不思議なもの。若く体力のある妻だったのに産後の肥立ちが悪く、娘が2つになる前に呆気なくこの世を去ってしまった。
角都が其れを悲しんだのかは分からない。けれど彼は後妻の話を全て断り、残された1人娘を手塩にかけて育て上げた。
そうして娘が大きくなったある時、とうとう角都にも“父”としての試練の時が来る。
「お父さん、会って欲しい人がいるの――」
*
銀行員として働き始めた2年目の夏、やっと1人で業務を任せられると飛段は窓口に立つことが多かった。
「老後の貯えが不安? なら、この商品はどうでしょう」
「お子さんの学資保険って準備しなきゃいけないですよね。良い積立がありますよ」
書類仕事はあまり得意ではなかったが、彼の滑らかで巧みな喋りに新しい契約を交わす顧客も多く、其れが飛段の不思議な魅力だった。
そうしてお金に纏わる仕事をしているのに、いつも給料日前になると「金がねぇ~」両手を振り回すのが彼の常で、それがまた愛嬌の1つになっているようだった。
今日は事務所内での仕事の日だったものの、窓口の担当職員が夏風邪を拗らせて休んでしまったので代理として飛段は窓口に立って仕事を回す。苦手な書類仕事は同僚に頼んだから飛段にしても渡りに船の話だった。
――後に彼は、この休んだ職員に大いに感謝することとなる。
「番号札24番でお待ちのお客様~! 9番窓口までどうぞ」
待合室に向かって手を上げる飛段に、ソファに座っていた女性が腰を上げる。
面倒な客じゃなさそうだ、飛段は心に余裕を持つとその女性に営業スマイルを向けた。
「いらっしゃいませ。本日はどんなご用件でしょうか」
「…あ、あの… 親元を離れて暮らすので、新しい銀行口座が必要で……」
「口座の開設ですね、畏まりました」
飛段が穏やかな口調で話すと、緊張していた女性の強張った顔が少し柔らかくなる。明るい緑色の瞳が妙に気になった。
「お客様は以前、当行をご利用になったことはございますか?」
「あ、初めてです! えっと、書類…その……」
「慌てなくて大丈夫ですよ。口座開設に必要な書類は今お持ちしますので、少しお待ちください」
そうして用意した書類に彼女が記入した名前を見て、飛段の言葉が一瞬、詰まる。
「角都(かくず)…?」
「ぁ、角都(すみ みやこ)です。ごめんなさい、フリガナの欄に書いてなかったですね!」
「…角、さま」
「漢字2文字なんてちょっと分かりづらい名前でしょう?
名前自体は嫌いじゃないんですけど…ちょっと、バランスってものを考えて欲しいですよね~」
軽快な飛段の営業トークにすっかり気の許した彼女は目を細める。優しい物言いに、彼女は幸せな家庭で育ったんだな、飛段は妄想した。
戻された書類を確認しながら、自分とあまり年の変わらない新規顧客に飛段は初めて会社の規定を破る。
「あ、あのもし良かったら…またお話して貰えませんか……?」
そう、個人の携帯電話の番号を書いた付箋を手渡したのだ。
――其れが、運命の輪が回り始めた瞬間だった。
*
「お父さん、ちょっと気難しい人だけど怖い人じゃないから…こう……頑張って、ね?」
見上げた彼女に深呼吸した飛段は「おう」頷く。
銀行の職員と客として初めて会った日から3年、順当に2人は愛を育み彼女の父へ結婚の許可を貰いに来たのだ。
小さい頃に母親を亡くした彼女を、父は男手1つで育ててくれたのだと言う。
だから父には祝福して貰いたいし、教会のバージンロードも一緒に歩いて欲しい。それが彼女のささやかな願いだった。
「…よし、がんばろ!」
飛段の頷きに頷き返した彼女が一軒家のインターホンを鳴らして「ただいま」告げたのが長い1日の始まりだった。
*
男1人で暮らすのには広すぎる一軒家、その家が今日は賑わっていた。
ガレージには2台の車が止まっており、開け放った窓からは赤ちゃんの泣き声が聞こえている。
「え!? ミルク!? おむつ!? どれ!? どこ!?」
「ど、何処に置いた…!? ま、待て待て待て待て…!!」
「……2人とも慌て過ぎだ。さっきミルクをやったんだろう? だったらおむつの方から確認していけ」
新米の父と母に、経験済みの父の声が重なる。
飛段と角都の娘は無事に角都の結婚の許可を得、無事に籍を入れることが出来た。名のある家では無かったが、飛段の強い希望で彼の姓も角都と同じとなり、こうして次世代へ繋がる命も生まれ、里帰りしたのが午前中。
『まさか、こんな風に出会うとはな』
『ってか娘に自分の名前つけるとかそこそこおかしくねぇ!?』
飛段が角都に紹介されてから、2人は時々こうして飲みに出掛けた。
肉親が娘である自分を差し置いて将来の伴侶となる人と2人きりで出掛けるのに彼女は文句を言ったが、それはあくまで表面上の話。それよりも気難しい父が紹介した人物を気に入って、親密な関係を築こうと頑張っている姿に嬉しいのが本音だった。飛段には「気難しい人よ」そう紹介したが、初めて顔を合わせた時に驚いた顔を作った以外は、普段の父と変わりは無かったし、寧ろ安心したようにも見える。それは自分が家庭を築くことへの安堵か、それとも肩の荷が下りたことへの脱力か。彼女には分からなかったが、兎も角、父と夫の仲が良いことは素直に幸せだと思った。
引き合わせてくれた娘を差し置き、酒の席で角都は身の上を話す。
過去の記憶を持った角都は其れがごく普通のことだったが、どうやら飛段は“同じ”では無かったらしい。けれど、『ハジメマシテ』挨拶をしたその瞬間、全てを思い出したと返した。
かつて、自分が“忍者”であったこと。
不死の肉体を持っていたこと。――角都に愛されていたこと。
「キレ~な奥さんだな」
義理の母になったであろう人の写真に飛段は呟く。
「…お前の瞳(め)と似ていると思ったんだ」
ウイスキーを傾けて角都は答える。
ある時は
「まさか、お前が経済学部に進んで銀行に就職するとはな。
記憶は無かったんだろう?」
「あーー、でも“角都”って言葉は覚えてたぜぇ。なんでも、初めて書いた文字がソレなんだって」
なんて盛り上がった。
上機嫌に肩を組んで帰る父と夫に、彼女は「早くお風呂に入っちゃって」眠たげな眼を擦る。
言われるがままざぶんと一緒に風呂に入っても、「仲良しね」彼女は微笑うだけだった。
――何度、飛段を抱きしめたいと思ったか。
けれど彼は愛娘の愛する人間で、自身の性欲の処理道具ではない。
――何度、角都に飛びつきたかったか。
けれど彼は愛する女性の父親で、間違いを犯す相手ではない。
本心を隠すのが上手くなったのは、互いに今生になってから。
熾り火のようになった想いを宿しながら、家族になったのだった。
「あれ、お父さん!
お願いしてたバスタオルって何枚ある?」
まだ生まれて間もない赤子をあやしていた娘が顔を上げて、ベビーベッドを組み上げる父に尋ねる。傍らで飛段はドライバーを渡しながら、完成したばかりのメリーを回していた。
「来客用のが、2、3枚…」
「えぇ~それじゃぁ足りないって言ってたでしょ、もう!」
「あっ、なら俺、メリー組み立てたし買ってくるよ。あの、前に行ったひよこ本舗?でいいんだろ??」
「うん、好きな柄でいいから」
「…いや、買うなら素材の良いヤツをだな」
「お父さんうるさい」
娘は父に強いし、あんなに厳格だと思っていた角都が娘に弱いのも面白い。
赤ん坊の世話は角都の方が上手いと思うが、今はこの親子、一緒にしておくのはよくなさそうだ。
飛段は2人の顔を交互に見ると、「ついでに晩飯も買ってくるよ」なんて義父(角都)も誘い出す。
色々買ってくるから、なんて男2人で出掛ける背中に「もうっ!」生まれたての愛し子を抱いて、
「プリン買ってきてくれなきゃ家に入れないんだからね~!」
彼女はまだ新しい空色のバンを見送ったのだった。
*
「…お前が祖父ちゃんかぁ」
土曜日の午後、のんびりと流れる幹線道路を運転しながら飛段は呟く。
「お前こそ父だろう?」
助手席の角都が微笑うと「だな」飛段も続けて笑った。
あの頃とは違って角都も“普通の人”だ。皮膚の色は少し濃いかもしれないが、縫い傷なんて無いし、背中に心臓を宿してもいない。ただ鋭い眼光と翡翠の様な瞳の色は同じだった。
前世で思い描いていた未来とは違っていたが、同じ姓になれたことは素直に嬉しい。たかが名前1つ、前生の2人ならそう鼻で嗤ったかもしれないが、今の2人には其れが大切であると理解していた。
「晩メシ何食おうかな~」
「…またスペアリブとか言うなよ」
「も~言わねーーよ。去年食べ放題で食いまくって地獄を見たからなァ」
「……年か」
「あッ、笑ったな!?」
なんて小突き合っていたところに、クラクションの音が響く。
「なんだぁ?」
「!?」
前方から発せられる音に反応するように飛段も思わずブレーキを踏むと、中央分離帯を越えて迫るタンクローリーが前の軽自動車を吹き飛ばす。そして――
*
「ん~、パパとお父さん、遅いねぇ…」
父親に似た紫の瞳でメリーを見上げる幼子を見つめながら、娘は壁の時計を見遣る。
父と夫が出掛けてから2つは進んだ短針に「何処まで行ったの」彼女は口を尖らせた。メールを何度か飛ばしたものの、メッセージが読まれた形跡もなく、電話を鳴らしてもコール音が鳴るだけ。
「んも~」
消音にしたTVは特に面白くもなく、ネット番組にでも切り替えようかとリモコンに手を伸ばす。
刹那、上部で点滅した『ニュース速報』続く文字に「あー…だからさっき救急車が煩かったのか」サイレン音に子供を起こされた彼女は頬を膨らませた。
国道13号線にてタンクローリーが暴走 車10台以上を巻き込んでの事故
*了*
PR
What's NEW
PASSについては『はじめに』をご覧ください。
2025.07.09
えすこーと UP
2025.06.27
しかえし UP
2025.06.26
ろてんぶろ UP
2025.06.23
しーつ UP
2025.06.20
ねっちゅうしょう UP
2025.06.17
あくじき UP
2025.06.15
しゃしん UP
2025.06.14
ヒーロー情景者がヒーローの卵を手伝う話
大人になったヒーロー情景者が現役ヒーローを手伝う話 UP
2025.06.12
ていれ② UP
2025.06.10
せきにん UP
2025.06.09
よっぱらい UP
2025.05.28
まんぞく UP
2025.05.27
きすあんどくらい UP
2025.05.26
もーにんぐるーてぃん UP
2025.05.23
みせたくない UP
2025.05.21
あい UP
2025.05.15
サイズ UP
2025.05.13
すいぞくかん UP
2025.05.12
intentional gentleman UP
2025.05.09
てんしのあかし
considerate gentleman UP
2025.05.06
新米ヒーローと仕事の話
そんな男は止めておけ! UP
2025.04.27
なつのあそび UP
2025.04.19
はちみつ UP
2025.04.18
ようつう UP
2025.04.16
しつけ UP
2025.04.10
へいねつ
鮫イタSSまとめ UP
2025.04.08
ヒーロー2人と買い物の話
かいもの UP
2025.04.05
こんいんかんけい UP
2025.04.04
角飛SSまとめ⑦ UP
2025.04.03
ゆうれい UP
2025.04.02
汝 我らに安寧を与えん UP
2025.03.31
どりょく UP
2025.03.29
とれーにんぐ UP
2025.03.28
しらこ UP
2025.03.26
ティム・ドレイクの幸せで不幸せな1日
あいのけもの 陸 UP
2025.03.25
さんぱつ UP
2025.03.23
けんこうきぐ UP
2025.03.21
へんか UP
2025.03.20
はな UP
2025.03.18
こえ UP
2025.03.17
こくはく UP
2025.03.15
ぎもん UP
2025.03.14
あめ UP
2025.03.12
よだつか/オメガバ UP
2025.03.10
あこがれ UP
2025.03.08
おていれ UP
2025.03.07
くちづけ UP
2025.03.06
どきどき UP
2025.03.04
たいかん② UP
2025.03.03
たいかん UP
2025.03.01
かおり UP
2025.02.28
なまえ UP
2025.02.27
さいふ UP
2025.02.26
しらない UP
2025.02.24
くちうつし UP
2025.02.21
うそ UP
2025.02.20
たばこ UP
2025.02.19
よだつか R18習作 UP
2025.02.17
きのこ UP
2025.02.15
汝 指のわざなる天を見よ UP
2025.02.04
角飛 24の日まとめ UP
since…2013.02.02