Serena*Mのあたまのなかみ。
呪術廻戦/さしす
生産脳家は夏五なので、イメージとしては夏五+硝。
3人でわちゃわちゃしてるのが好き。
生産脳家は夏五なので、イメージとしては夏五+硝。
3人でわちゃわちゃしてるのが好き。
「な~硝子。
ちょっと相談乗って欲しいんだけど」
暑い盛りが過ぎても、未だ残暑の厳しい9月の半ば。
酷く耳障りな蝉の声を背景に紫煙を燻らす硝子に、悟は売店で買ったソーダアイスを差し出した。
「…畏まって。珍しいな」
硝子は吸いかけの煙草を携帯灰皿に押し付けるとクラスメイトから氷菓を受け取る。1つのアイスに2本の棒が刺さった其れを硝子はゆっくりと割ると「ほら」1つを差し出し主の悟に向けた。
「ありがと」
悟は大人しくアイスを受け取ると硝子の隣に立つ。
開け放った窓から熱い風が2人の頬を撫で、じりじりとした熱線が眩しかった。
「どうした」
硝子がグラウンドを見つめながら尋ねると、悟もサッシに身体を預けて呟く。
「…傑に、指輪を買おうと思って」
――唯の友人に“指輪”とは随分と愛が重い。
初めての友達に対する逸脱した情か、硝子は心の内に嗤った。
「好きなの買えばいいだろ?」
垂れた水滴をぺろりと舐め上げて硝子が言うと、悟は腰のポケットからきつく折り畳んだカタログを取り出す。
「…どんなの選んで良いか分からなくて」
銀座に店を連ねる宝石店のカタログに、くらりと眩暈がしたのは残暑の熱気が原因ではないのは確かだ。
付箋とボールペンで汚されたカタログに、悟の本気を硝子は垣間見る。
「…なに、ペアリング?」
ぱらりとページを捲った硝子に、「ふつうの」悟は首を振った。
「あ、これカワイイ」
「レディースじゃん、それ」
「成功報酬をそれとなく伝えてみただけだが?」
「…で、本心は?」
「売る」
食べ終えた氷菓の棒を揺らした硝子に「ひっでぇ」悟は笑う。
「しょ~こちゃんに俺の愛は伝わらない系?」
「愛が重いのは遠慮したい系」
硝子も返すと、真面目な声を作って続ける。
「…指輪だろ? こんな高価なのじゃなくって、もっと年齢相応なブランドにしろよ」
そう言うと、席に戻ってノートを広げた。
ファッションビルに入るアクセサリーショップ、硝子の思う“年齢相応”のブランド名を幾つか書いて、雑に千切って悟に渡した。
「夏油が任務で居ないのはいつだっけ」
「…緊急の呼び出しもあると思うけど…確か来週の金曜からも任務って言ってたな」
「じゃぁ、その日が決行日だ」
親指を立てた硝子に「ありがと」珍しく素直に悟が目尻を下げる。
今日は午後には帰ってくると朝礼で夜蛾が言っていたから、「バレないように隠せよ」硝子は付け加えた。
*
「硝子、ちょっといい?」
切れた煙草を買いに出かけようとサンダルをつっかけた硝子を、傑が呼び止める。
「1箱」
即座に差し出した条件に「コンビニからの荷物持ちならするから」傑もスニーカーの踵を潰す。
長いと思っていた夕陽もすっかり落ちるのが早くなった夏の終わり、「明日から任務だろ?」煙草に火を点けて硝子は尋ねる。
「こんなとこで油売ってていいのか?」
「う~ん…ちょっと硝子に相談したくて」
硝子に釣られるように、傑も愛用の煙草に火を灯す。
「どうした?」
単刀直入に言え、街灯もまばらな道を歩きながら硝子が切り出すと傑は口を開く。
「……悟に、さ。指輪をあげたいなぁって思って」
――指輪を贈りたい。
そんな話なら、つい先日も聞いた話だ。
ふう、思い切り煙を吐き出してから硝子は言葉を選ぶ。
「気の早いクリスマスか?」
以心伝心、言いかけて別の言葉で同級生を揶揄った。
「や、違くて。普通に着けてて欲しいリングだよ」
クラスメイトの言葉に慌てて傑は否定する。
――秘めた想いを話すとき、人は饒舌になる。語り始めた傑を、硝子は止めなかった。
「……今までさ、彼女に指輪なんて“買って”って言われなきゃ買わなかったんだけど。
悟には…私の選んだものを身に着けてて欲しいんだよね」
あ、勿論任務中とかは外してて良いんだけど。
続けた傑に無自覚な独占欲か、硝子は考える。
そこで、彼女は閃いた。
どうせ2人の金だ、硝子にはなんの痛手もない。普段から迷惑を被っているのだ、たまには仕返しするのも悪くないだろう。
バカ高い指輪を“流行だよ”言って勧めてやろうか、それとも“このデザインが好きって言ってた”嘘を吹き込もうか。
紅一点に絶大な信頼を置く2人だ、硝子の言うことは「そうか」疑うことなく信じるのは容易に想像がつく。
「何処で買うんだ?」
紫煙を吐きながら硝子は告げる。
「ん~…任務帰りに何処かに寄って買うか…通販にするか」
「相手は五条家のお坊ちゃんだぞ。下手な物を贈れるか」
「…だよねぇ」
「それとなく、アイツの好きそうなもの探ってやるよ」
「ペアリングのお店は詳しいんだけど…こう、正規のアクセサリーショップってどうも気後れしてしまってね…」
長身の肩を落とした傑に、硝子は助け船を出してやった。
「…安心しろ、買うのは付き合ってやる」
「恩に着るよ」
コンビニの入り口に置かれた灰皿に煙草を押し付けた硝子に、傑も同じように吸殻を捨てる。
それから酒の瓶を何本か持たされた傑は硝子と2人、高専に戻るのだった。
*
学校帰りの繁華街。
悟の“美”に圧倒され、遠巻きにしか眺めてこない店員にこれ幸いと、硝子と悟の2人は店内を右往左往する。やっと幾つかの候補を決めて、ショーケースから取り出して貰った指輪を前に、まだ悩む悟へ、硝子はそっと耳打ちした。
「…夏油なら、こっちシンプルなリングが良いんじゃないか?
アイツの服は黒が多いし、このシルバーなら良く合う気がする」
それから、また別の日。
相変わらず遠巻きに傑と硝子を眺める店員を尻目に、ショーケースの指輪の1つを硝子は指差す。
「五条は色が白いから、このシルバーが似合うと思うよ。
ほら、目立たない感じが“普段使い”っぽくて良いだろ?」
そう、上手い事丸め込んで買わせた互いの指輪。
ただ不思議に思ったのは、2人が互いの薬指のサイズを知っていることだった。
「どの指だ?」
指輪を買う時、尋ねた硝子に答えは同じ。
『薬指』
さらりと号数を諳んじる2人に、クズどもめ、硝子は顔を顰めるとこれ以上同級生の関係に首を突っ込むのは止めようと思うのだった。
*
あれだけ暑いと思っていた気温が、急に涼しくなった秋の始まり。
別々の任務に出ていた傑と悟だったが、偶然に寮の入り口で顔を合わせた。
「…おっ、傑じゃん。おきゃーり」
「悟も任務? お疲れ様」
外履きを下駄箱に仕舞って、他愛の無い会話をしながら自室までの廊下を歩く。
互いの部屋の前に立って、やっと悟は本題を伝えた。
「ちょっとさ、傑。渡したいモンあるんだけど」
引き留めた悟に、何だろう?傑は首を傾げたが、すぐにいつもの微笑みを浮かべる。
「実は、私も悟に渡したいものがあるんだ。
この前のお土産、ずっと任務続きで会えなかったから渡せなかっただろう?」
――事実、夏の終わりから妙に呪霊が多く出現して、悟も傑もあっちこっちに呼び出されてばかりだった。学生の本業は勉強だろ?そう抗議するものの、雑なプリントを渡されて任務地に赴くばかりの日々だ。2人が一緒に任務に赴くこともなく、傑が帰れば悟が駆り出され、悟が戻れば傑が呼び出される。
変な話、硝子に指輪の相談をして出かけたのが最後の休みと言っても過言では無かった。
「シャワー浴びたら傑の部屋行っていい?」
ドアノブを回した悟が目くばせすると、「構わないよ」傑も頷く。
「30分くらいかな」
「そんくらい。ちゃんと下着は片しておけよ?」
「はは、見たことあるくせに」
久し振りに冗談を交わした数十分後、「す~~~ぐるくーーーん」ノックもなしに悟が傑の部屋のドアを開ける。
普段は律義に施錠する傑だったが、今日は親友が訪れると言うので解錠していたのだ。鍵が開いていたとて、盗まれるような高価なものはこの部屋にないし、鍵なんぞ締めようものなら、暴れた悟に破壊されるのが関の山だ(と、言うか破壊された。勿論、弁償はさせたが)。
「や、悟。待ってたよ」
最近買ったという電気式のケトルを片手に傑は入り口を振り返る。
「ココアでいい?」
訊いた彼に「つめて~やつ」悟は唇を尖らせた。
もう、我儘ばっかり。傑も文句を言うが、小さな保冷庫を指差して「カルピスならあるよ」悟に告げる。
悟が保冷庫を開けると、下の自動販売機で売られている乳酸菌飲料が入っていて、激務の彼が悟の為にたった今買ってきたのは明らかだった。
――カシュッ☆
プルタブを引いて遠慮なく喉を潤した悟が
「お土産ってこれ?」
ローテーブルに置かれた紙袋を覗く。
”温泉饅頭”と書かれた包装紙が見えて、彼の好きそうな甘い物を土産に選んだらしかった。
「草津だったからね。ベタだとは思ったけど、好きでしょ?」
「好き」
がさがさと包み紙を破った悟の前にコーヒーカップを持った傑が座る。
「で、悟は私に何を?」
「…っと、その」
言葉を濁した悟に「?」傑は首を傾げたが、自分の話を続けた。
「それからね、これ。
……悟に似合うと思って」
小さな箱を差し出されて、悟の動きが止まる。
「…ぇ!? あ、俺、それ……!?」
同じ箱に、悟は見覚えがあった。
——落としたか!?
慌ててパーカーのポケットを探ったが指先には硬い感触があって、その箱は悟のものと違うようだ。
「さとる?」
パーカーに手を突っ込んだまま表情をくるくると変える悟に、ブラックコーヒーを啜りながら傑は尋ねる。
「…っ、ぁ、俺も、その…傑に渡そうと思っ……て」
しどろもどろに同じ箱を差し出すと、今度驚いたのは傑の方だった。
「……!?
…は、ぇ、悟……???」
互いに差し出された小箱と相手の顔を見つめていると、2人の携帯電話が同時に鳴った。
『新着メールあり From:硝子』
小さな液晶に出た名前に、悟も傑も慌てて携帯電話を開く。
『ペアリングにしてやったぞ』
開いた画面には、たった一言。
「「!!!!!!!!!」」
――硝子の悪戯に傑と悟は顔を見合わせて、そして破顔した。
「全っっ然気付かなかったよ」
何が”夏油なら、このシンプルなリングが良いんじゃないか?”だよ。
悟は腹を抱えて笑い、
「人を騙すのが上手いなぁ、硝子は」
”五条は色が白いから、このシルバーが似合うと思うよ”だっけ? 仕向けたのは硝子じゃないか。
笑い過ぎた傑は目尻の涙をぬぐった。
そうして2人は同じデザインの指輪を互いの薬指に嵌めると、右手を蛍光灯に翳す。
「うん、でも悟に良く似合うと思うな、その指輪」
「傑にも似合ってると思う。硝子の見立てってすげ~な」
“年齢相応”とは言ったが内側に宝石のあしらわれたデザインの指輪は高価なものだ。
傑のには悟の髪の色と同じ、透明な宝石が。
悟のには傑を思わせる漆黒の宝石は埋め込まれており、其れを選ばせたのも硝子の采配によるものだ。
「今度は一緒に選ぼうか」
細い銀の指輪を眺めながら、新しい約束を取り付けるのだった(デートの予定を立てる)。
――後日。
任務で1日留守にしている硝子の机に、山と積まれた高級酒の数々に夜蛾が頭を抱えたとか。
――せめて、寮の部屋でやりとりしてくれ!
*おしまい*
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